日本赤十字社 血液製剤による細菌感染防止に 新たな検査導入へ

日本赤十字社は献血で集めた血液からつくる血液製剤によって細菌に感染するリスクを減らそうと、医療機関に出荷する前に細菌が混入していないか調べる検査を新たに導入することになりました。

日本赤十字社によりますと、献血で集めた血液からつくる血液製剤のうち「血小板製剤」は極めてまれに細菌の感染が起こるということで、去年までの6年間に報告された16件のうち、当時10歳未満の女の子を含む3人が亡くなっています。

こうした感染のリスクを減らそうと日本赤十字社は、血小板製剤を医療機関に出荷する前に細菌が混入していないかを調べる検査を新たに導入することになりました。

血小板製剤は常温で保存する必要があるため低い温度で管理できる赤血球などの製剤に比べて細菌が増殖しやすいとされています。

国内では有効期間を海外より短くして細菌の増殖を抑える対策が取られてきましたが、先行して検査を導入したイギリスで感染が大幅に減ったという報告があり、国内でも導入を求める声が高まったということです。

日本赤十字社は新たな検査の導入を今月国に申請し、来年7月からの開始を目指すとしています。

日本赤十字社は「血液が原料のため、細菌が混入するリスクを完全に取り除くのは難しいが、検査の導入によって輸血による感染が減ることを期待したい」とコメントしています。

医師「期待感大きいが引き続き対策を徹底」

血小板製剤は主に、白血病など血液の病気や、大きなけがで大量に出血した患者の治療に使われていて、大阪 高槻市にある大阪医科薬科大学病院では1年間に献血でおよそ1500回分にあたる量を使用しています。

取材に訪れた日は血液の病気で入院している患者に輸血が行われ、医師や看護師、それに臨床検査技師が、血小板製剤に異物の混入などがないか使用する直前まで繰り返し確認していたほか、輸血が始まってからも患者の体調に変化がないかをベッドサイドで観察していました。

大阪医科薬科大学病院輸血室の河野武弘室長は「この病院では少なくとも過去20年ほど血小板製剤による細菌感染は起きていないが、検査が導入されれば一段階、安全性が高まった製剤で治療に臨むことができるという期待感は大きい。臓器の移植手術と同じで感染のリスクをゼロにはできないので、検査が始まってからも患者の利益につながるよう引き続き現場でできる対策を徹底したい」と話していました。