新NISA 個人マネーが外国株に向かうのはなぜ?【経済コラム】

「新NISA」が始まって1か月あまり。個人の投資マネーの行き先を調べてみると、その多くが、世界の株式を組み込んだ商品や、アメリカの株価指数に連動した商品に向かっているという。日本の主な株価指数がバブル期以来の高値水準をつける中、なぜ個人投資家は海外の金融商品を選ぶのか。(経済部記者 篠田彩)

上位を占める外国株商品

購入時に手数料のかからない「ノーロード」と呼ばれる投資信託(主に指数連動型)。

各証券会社などによると、新NISAで新たに投資する人の多くが、このノーロードの投資信託に資金を振り向けているという。

三菱UFJアセットマネジメントからのデータをもとに、このノーロード投資信託の先月の純流入金額を、先月26日時点で調べて推計したところ、上位2つは「全世界株式(オール・カントリー)」「米国株式(S&P500)」という名前がつく商品名で、この2つだけで、上位20位までの純流入金額のうち実に60%を占めていた。

1位の「全世界株式」は、アメリカを中心に世界の株式が組み込まれている商品だ(日本株も数%含まれる)。

3位以下にも海外株式連動型の商品がずらりとならび、日本株がメインの商品はというと、14位に「国内株式(TOPIX)」、17位に「国内株式(日経平均)」と、上位20位中、2つだけだった。

なぜ、日本株関連の投資信託は低い順位にとどまっているのか。

ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは、主に3つの要因を挙げている。

ベースにある成長期待の希薄さ
「日本企業はこれまで、研究開発や人への投資を控え、業績の安定と倒産を防ぐコストカットをおよそ30年間やってきた。また、相対的な競争力の弱さや人口減少などの構造的な課題を背景に、日本企業の成長性にそれほど期待していないということがベースにあるのではないか」

中高年の“日本株アレルギー”
「中高年の投資家層は、バブル崩壊やリーマン・ショックなどで、投資した資産の価値が大きく棄損した人も多い。長年の経済の低迷を見つめてきただけに、日本株への投資そのものに対するアレルギーがまだまだ残っている」

海外サービスの浸透と若年層の意識
「若年層はスマホの利用が当たり前となり、ふだんからグーグルやX(旧ツイッター)、フェイスブックなど、アメリカ企業のサービスに触れていて、『GAFAM』などの成長をより身近に感じている。今後の投資期間も長いだけに、成長性に期待できるとして、アメリカ株に流れているのではないか」

日経平均株価の推移を見てみると、バブル経済絶頂期とも言える1989年12月29日につけた3万8915円87銭(終値ベース)をピークに、バブル崩壊、金融危機などを経て下落。

リーマン・ショック翌年の2009年3月10日には、7054円98銭と、ピークの5分の1以下となった。

株価の急落を目の当たりにしてきたベテラン投資家からすれば、今の上昇局面でも、これがいつまで続くのか、見通せないと考えるというのである。

となると、株価の急落や低迷を経験していない若い世代は日本株の先行きに悲観することもないのでは?

その点、三菱UFJアセットマネジメントの吉田研一デジタル・マーケティング部長は、若年層が海外株式を選好する背景について「少額投資の環境整備や、ネットなどで入手できる情報の多様化が進む中、SNS世代の間では、パフォーマンスさえ良ければ、その商品を買いに行く傾向が広がっているのかもしれない」と分析している。

日本株への再評価は?

一方で、日本の上場企業の株式の約3割を保有する海外投資家の間では、日本株への関心が高まっている。

日経平均株価は先月、1990年2月以来の3万6000円台をつけ、東京証券取引所によると、ことしの年初から先月26日まで、4週連続で買い越しとなっている。

こうした中でも、新NISAの投資資金が向かう先として存在感を高める、海外の金融商品。

ただ、そこには、価格の変動リスクに加え、為替の変動による運用リスクがある点にも十分、注意しなければならない。

一方、日本企業の株式が個人の投資マネーを呼び込むには、改革を続け、成長への期待を高められるかどうかがカギとなるといえそうだ。

注目予定

8日にソフトバンクグループの第3四半期決算が発表されるなど、今週は先週に続いて企業の決算発表が相次ぎます。

このところ堅調な企業業績ですが、今後の見通しについてはどのように示されるでしょうか。

また、上場企業は東京証券取引所の働きかけによって、成長への投資や株主還元策など、市場の評価を高める改革を進めていますが、その取り組みの進捗状況についても、決算に合わせて示されることが多いだけに、市場の注目が集まっています。