ALS患者嘱託殺人事件裁判 医師に懲役23年を求刑 検察

5年前、難病のALSを患う京都市の女性を本人からの依頼で殺害した罪などに問われている医師の裁判で、検察は「医療知識を悪用した極めて特異な犯行だ」などとして懲役23年を求刑しました。一方、被告の弁護士は「医師を処罰することは女性の選択や決定を否定することになる」として無罪を主張しました。

医師の大久保愉一被告(45)は5年前、別の元医師とともに、全身の筋肉が徐々に動かなくなる難病のALSを患っていた京都市の林優里さん(当時51)から依頼を受け、薬物を投与して殺害したとして嘱託殺人などの罪に問われています。

これまでの裁判で、被告は起訴された内容を認めたうえで、「林さんの願いをかなえるために行った」と述べています。

京都地方裁判所で開かれた裁判で林さんの父親の意見陳述が行われ、「娘は体は不自由でしたが確かに生きていました。なぜ思いとどまるよう説得してくれなかったのか、心底恨みます」と述べた書面が読み上げられました。

このあと、検察は「被告は症状の詳細を把握せず、短時間で殺害したうえ、報酬を前提に依頼を受け、正当な行為に当たるはずがない。医療知識を悪用した極めて特異な犯行で、今後も安楽死と称して殺人を実践し、指南するおそれがある」と主張し、懲役23年を求刑しました。

これに対して被告の弁護士は「被告を処罰することは林さんの選択や決定を否定し、自己決定権を定めた憲法に違反する」として、改めて無罪を主張しました。

大久保被告は別の元医師とともに13年前、この元医師の父親を殺害した罪にも問われていて、無罪を主張しています。

判決は来月5日に言い渡される予定です。