ミャンマー軍事クーデターから3年 各地で「沈黙のストライキ」

ミャンマーで軍がクーデターを起こして1日で3年となりました。こうした中、民主派勢力の呼びかけで最大都市のヤンゴンなど各地で軍への抗議を示す「沈黙のストライキ」が行われ、人通りが途絶えました。

ミャンマーでは3年前の2月1日、軍が前の年に行われた総選挙に不正があったと主張してクーデターを起こし、民主化運動の指導者のアウン・サン・スー・チー氏を拘束して、権力を握り続けています。

ミャンマーの人権団体によりますとこの3年間に軍による攻撃や弾圧などで死亡した市民は4400人以上に上り、いまも2万人近くが拘束されているとみられています。

1日は街頭などには出ない「沈黙のストライキ」が各地で呼びかけられ、最大都市ヤンゴンの中心部では午前10時すぎから人通りや車の行き来が途絶え、市民たちの軍に対する根強い反発が示されていました。

軍はクーデター後、民政移管に向けた選挙を実施すると主張し続けていますが、1月31日、クーデターに伴って発令された非常事態宣言をさらに6か月間延長すると発表し、選挙が行われる見通しは立っていません。

民主派勢力や少数民族の武装勢力は、1月31日、連邦制と民主主義にのっとった体制の樹立を目指すとする共同声明を採択するとともに、軍に対する武力攻勢を強める姿勢を示しています。

軍を支持する仏教団体の行進 軍による動員か

一方、ミャンマーの最大都市ヤンゴンでは、1日、軍を支持する仏教団体のメンバーなどおよそ2000人がミャンマーの国旗などを掲げて閑散とした街なかを行進する姿が見られました。

ミャンマーでは、軍の許可なしにデモを行うことは禁止されていることから、参加者は民主派勢力が呼びかけた「沈黙のストライキ」に対抗するために、軍によって動員されたものとみられます。

国連事務総長 民政復帰に向け国際社会の協力を呼びかける

ミャンマーで軍がクーデターを起こしてから3年となったのに合わせて国連のグテーレス事務総長が声明を出し、ミャンマーではこの3年で緊急の人道支援を必要とする人が100万人から1860万人に急増したと指摘し「ミャンマーの危機は悪化し続けている」と強い懸念を示しました。

その上でグテーレス事務総長は「あらゆる形の暴力を非難し、民間人の保護と敵対行為の停止を求める。民間人を標的にした軍の暴力と政治的弾圧を終わらせなければならない」と強調し、ミャンマーの民政復帰に向け国際社会の協力を呼びかけました。

上川外務大臣 人道支援を積極的に行っていく考え示す

上川外務大臣は談話を発表し「ミャンマーの情勢が年々悪化していることを深刻に懸念している。ミャンマー軍が平和的な問題解決に向けて取り組むことなく非常事態宣言を繰り返し延長していることや、空爆などの暴力によって多くの市民が日々死傷している状況を強く非難する」としています。

その上で
▽空爆などの暴力を直ちに停止するとともに
▽アウン・サン・スー・チー氏を含むNLD=国民民主連盟幹部を解放することなどを強く求めています。

また、およそ230万人の市民が避難生活を強いられる人道危機に陥っているとして、日本として国際機関やNGOなどと連携し、人道支援を積極的に行っていく考えを示しています。

NUG人道問題担当相 深刻な人道状況を国会議員らに訴える

民主派勢力が発足させたNUG=国民統一政府のウィン・ミャット・エイ人道問題担当相が来日し、1日、参議院議員会館での集会に出席しました。

ウィン・ミャット・エイ氏は「軍は無差別の空爆を繰り返し、多くの国民が殺害されている」としたほか「国民の3分の1が飢え、食料を必要としている」と述べ現地の深刻な人道状況を国会議員らに訴えました。

その上で国際社会からの支援は軍を通じて行われているため国民に適切に届けられていないとして、軍ではなくNUGを通じた支援のメカニズムが必要だと日本の協力を求めました。

また民主派勢力は少数民族の武装勢力との協力によって軍事的な成果をあげているとした上で、1月31日、軍の打倒や連邦制と民主主義に基づく体制の樹立に向けた共同声明を発表しました。

ウィン・ミャット・エイ氏は「クーデターから3年目に入ってターニングポイントを迎えている。国民の勝利への道が開けている」と述べて民主化に向けた道筋に自信をのぞかせました。

日本でも民主化を求めて軍に抗議

東京のミャンマー大使館の前では日本で暮らすミャンマーの人たちなどが民主化を求めて軍に抗議の声をあげました。

東京・品川にあるミャンマー大使館前には、日本で暮らすミャンマーの人たちや支援者などおよそ300人が集まりました。

集まった人たちは「軍は市民の殺害をやめろ」などと書かれた横断幕やプラカードを掲げながら「アウン・サン・スー・チーさんを解放しろ」とか「市民を自由にしろ」などと英語やミャンマー語でシュプレヒコールを上げていました。

最大都市のヤンゴン出身の31歳の女性は「両親や弟が暮らすヤンゴンでもときどきボンという爆発音が聞こえると言っていてとても心配です。ミャンマーの人たちを助けてほしいです」と話していました。

またヤンゴン近郊の出身の30歳の男性は友人や知り合いが軍の暴力を受けたり、拘束されたりしているということで、「日本で平和に暮らしながらミャンマーの悲惨な状況を聞くのはとても悲しいです。クーデターから3年たってもっとひどくなっています。国際社会は軍とのつながりを絶ってほしいです」と話していました。

また日本で10年ほど暮らす別の男性は「日本もミャンマー人がビザをとりやすくするなどできることはあると思う」と話し、軍の弾圧から逃れようと日本を目指すミャンマー人の滞在や就労への支援を求めました。

ミャンマー人留学生 母国の経済悪化を懸念

茨城県内で学ぶミャンマー人留学生からは社会や経済の状況が悪化していると母国を心配する声が相次ぎました。

ミャンマーでは3年前の2月1日、軍がクーデターを起こし、その後、民政移管に向けた選挙を約束しているものの、治安の悪化などを理由に非常事態宣言を延長し、実施の見通しがたっていません。こうした状況について日立市の日本語学校に通うミャンマー人留学生がNHKの取材に応じました。

23歳の女性は、ミャンマー国内の大学に通っていましたが、軍の飛行機が街を攻撃する写真をSNSに投稿するなどクーデターに反対していたため逮捕されることを恐れて日本で勉強することを決断し、去年4月、来日しました。

女性は「子どもたちが安心して勉強できるような状況に早くなってほしいです」と心配していました。

また、20歳の男性は、ミャンマーでは商店が相次いで閉店し、仕事を失う人が相次いでいるとして、「物価も上がって生活にも苦労していると思います」と母国の経済悪化を懸念していました。