海上自衛隊の護衛艦 海賊対処でイエメン沖 アデン湾に向け出発

中東イエメンの反政府勢力、フーシ派による船舶への攻撃が相次ぐ中、イエメン沖のアデン湾で海賊対処にあたる海上自衛隊の護衛艦が1日、現地に向けて出発しました。

イエメン沖のアデン湾で海賊対処の任務にあたるのは、広島県の海上自衛隊呉基地に所属する護衛艦「さざなみ」です。

1日は、出発前に式典が開かれ、自衛艦隊司令部の川村伸一幕僚長が「さざなみが展開する海域では、不測の事態が起きる可能性は否定できないが、的確に対処し任務にあたると信じている」と述べました。

これに対し、「さざなみ」の伴昌幸艦長が出発を報告し、家族や同僚などに見送られながらアデン湾に向けて出航しました。

「さざなみ」には、隊員と海上保安官、合わせて206人が乗り込み、3月中旬ごろ、現在派遣されている護衛艦「あけぼの」と交代して、およそ4か月の任務に就く予定です。

アデン湾と海峡を通じてつながっている紅海では、イエメンの反政府勢力、フーシ派による船舶への攻撃が相次いでいて、去年11月には、アデン湾で活動していた「あけぼの」の周辺海域にも弾道ミサイルが発射されました。

海上自衛隊は「地域情勢の推移を注視しながら情報収集に努め、部隊の安全確保に万全を期す」としています。

フーシ派による民間船舶への攻撃対処に対策も

アデン湾では、アメリカを中心とする多国籍の部隊が海賊対処にあたっていて、日本も2009年から護衛艦などを派遣しています。

海上自衛隊によりますと、今回の任務にあたって「さざなみ」は、フーシ派を念頭に、民間の船舶が攻撃される場合も想定して、必要な訓練を行うなどの対策をとっているということです。

民間船舶への攻撃に対処するために、搭載する機器も追加しているということですが、詳細については能力が推察されるとして明らかにしていません。

また、防衛省関係者によりますと、現在派遣されている「あけぼの」は、フーシ派による攻撃が相次いでいる紅海に、より近いアデン湾の西側の海域には、極力入らないようにしているということです。

防衛省関係者は「各国がアデン湾での海賊対処の任務をやめると、抑止力が効かなくなって海賊の被害が増えるおそれがあるので、現在の情勢でも任務は継続せざるをえない」と話しています。

見送りに来た家族は

海上自衛隊呉基地には、「さざなみ」の出航を見送ろうと、多くの家族たちが訪れました。

隊員の夫を、子どもと一緒に見送りに来た38歳の女性は「子どもが半年間父親と会えなくなるので、さみしそうでした。国際情勢などから不安なところもありますが、無事に帰って来られるように、私はこっちで子どもを守りながら頑張ります」と話していました。

19歳の隊員の父親は「息子は長い航海は初めてなので、ちゃんとやっていけるのか心配です。国際情勢などから心配な部分もありますが、心身共に大きく成長して帰ってきてほしいです」と話していました。