インフラ・支援の状況は 能登半島地震から1か月

能登半島地震の発生からきょうで1か月です。
能登半島では山間地を結ぶ道路が各地で寸断されたため、当初は支援が思うように進まず、多くの人が水道や電気などのインフラが止まったまま、冬の寒さの中での避難を余儀なくされました。
被災地ではライフラインの復旧が徐々に進み、2次避難や仮設住宅の建設など支援の動きが加速しています。現在の状況をまとめました。

ライフライン 断水が長期化

31日午後2時の石川県のまとめによりますと、停電はおよそ9割で復旧したということですが、輪島市でおよそ1400戸、珠洲市でおよそ910戸など合計およそ2500戸では今も停電が続いています。

水道はおよそ4万890戸で断水が続いていて、輪島市、珠洲市、穴水町、能登町、七尾市、志賀町ではほぼ全域となっています。

岐阜大学工学部の能島暢呂教授のまとめでは、地震発生から1か月後の水道の復旧状況は東日本大震災や阪神・淡路大震災では8割余り、熊本地震ではほぼ完了していました。

今回は特に断水が長期化し、トイレや洗濯、入浴が制限されるなど厳しい環境での避難生活が続いています。

厚生労働省によりますと、こうした背景には配水管の損傷に加え、浄水場や配水池といった水道のおおもとの施設に大きな被害が出たためだとしています。

道路の本格的な復旧 数年かかる見込み

道路の復旧状況です。

国土交通省のまとめによりますと、能登半島の主要な幹線道路では、緊急車両などの通行や救援ルートを確保するための緊急復旧が9割で終わりました。

一方で、沿岸部を走る国道249号線や県道38号線は斜面の崩壊やトンネルの崩落など大規模な被害が出ていて、内陸から沿岸部にくしの歯状にルートを設ける作業が続けられています。

今回の地震では土砂災害や地盤の変動による被害が大きく、復旧に時間がかかっているということです。

今後の本格的な復旧には数年かかるところもある見込みです。

支援物資 届き始める ニーズの変化も

今回の地震で国は被災した自治体からの要請を待たない「プッシュ型」による物資支援を行いましたが、道路が各地で寸断されたために十分に届けられない事態となりました。

内閣府によりますと、道路の復旧が進むなどしたことで現在は支援物資が届けられるようになりました。

支援物資は当初、食料や水、毛布、簡易トイレといった生活必需品を中心に金沢市にある拠点に運ばれました。

最近では現地のニーズに合わせて支援物資も変化していて、マスクや消毒液といった感染症対策となる物資のほか、子育て用のミルク、段ボールベッドなどを支援しているということです。

ボランティア 一般の受け入れ始まる

被災した人たちを支援するボランティアはこれまで団体による活動に限られていましたが、地震から1か月近くたって一般のボランティアの受け入れが一部の自治体でようやく始まりました。

内閣府によりますと、能登半島地震の被災地では、この1か月で100を超える専門のボランティア団体が発災直後から石川県内を中心に活動にあたり、支援物資の運搬や災害廃棄物の撤去、避難所の運営などを支援してきたということです。

一方、個人のボランティア活動は先月27日から七尾市、志賀町、穴水町にで始まり石川県は珠洲市と中能登町でも3日から活動を始めると発表しました。

輪島市や能登町では募集は始まっていません。

地理的条件や道路などの被災の状況が異なるため単純な比較はできませんが、震度7の揺れを観測した熊本地震では地震から10日ほどでボランティアによる片づけが徐々に進み、およそ3週間後の大型連休には各地から集まったボランティアの活動が本格化していました。

内閣府は道路の寸断や上下水道、宿泊施設などの被災を背景に「能登地方では過去の災害と比べてボランティアの受け入れが遅れているのは事実だ」としています。

ただ、受け入れに必要な災害ボランティアセンターの開設自体はすでに行われていて、地元の社会福祉協議会が避難所などの被災者にニーズの聞き取りを重ねるなど、ボランティアの受け入れに向けた準備が進められているとしています。

仮設住宅 建設進むも供給わずか

被災地では仮設住宅の建設も進んでいます。

内閣府によりますと、石川県内では地震から1週間余りたった先月12日に輪島市と珠洲市で最初に着工され、31日、輪島市で最初の仮設住宅が完成しました。

ただ、31日の時点で能登地方を中心に4万6000棟を超える住宅が被害を受け、いまも1万4000人を超える人が避難所に身を寄せていて、仮設住宅などへすぐに入居できる人は限られるとみられます。

り災証明書の発行 自治体に差

被災した人が公的な支援を受けるために必要な「り災証明書」の発行の状況について、内閣府は「被害が甚大なため、り災証明書の発行が進んでいる自治体とそうでない自治体の間で差がある」としています。

その理由として、自治体によっては被災した建物が多く被害程度の判断に時間がかかるうえ、応援職員を派遣しようにも宿泊先の確保が難しいことなどがあるということです。

今回の地震では被災した人が広域的に避難している状況を踏まえ、国は先月13日に避難先の役所や役場でも手続きができるよう、全国の都道府県に協力を求める通知を出しました。

この中では、被害認定の手続きの省力化に向けてドローンで撮影した映像や被災者自身が撮影した写真を活用できるとしていて、東京都は都庁会議室にいながら住宅の被害の状況をリモートで判断する作業を始めています。

能登半島地震から1か月間の応急対応について、専門家は半島の地域で道路が寸断されたために支援が非常に難航したとしたうえで「今後は可能な自治体から復旧・復興の対策にギアを変え個々のニーズに対応する準備を始めていくべきだ」と指摘しています。

災害時の応急対応に詳しい防災科学技術研究所の宇田川真之特別研究員は、これまでの対応について半島という地理的な特性をあげたうえで「道路の被害が大きかったことから、人員や物資を送るという点で非常に難航した部分があり、これまでの災害に比べて応援活動などの対応が難しかったと思う。一方、各地の自治体から派遣された応援職員がなかなか被災地に入れない中で、被災家屋の写真などを外の地域に送ってもらい、被害認定調査を行うというこれまでに無かった取り組みも実施された」と話していました。

また、地震発生から1か月が過ぎたあとの復旧や復興については「人命救助や避難所の環境改善などといった対応から、生活や地域の再建へとギアをチェンジしたり同時並行で対応する必要がある。住宅やなりわい、教育、福祉サービスなど必要な対応は一人一人異なるが誰がどこでどんな暮らしをしているかをフォローして、個々のニーズに応えていくための準備を進めるべきだ」と話していました。

その上で「自治体によって被害の大きさや復興に取り組むスピード感は異なるが、将来に向けたロードマップを住民に示す、つまり“見える化”して自分たちの暮らしをどう再建していけばいいのか、イメージしやすくしていくことがとても重要だ」と指摘しています。