地震からあすで1か月 輪島に県内初の仮設住宅 2月3日入居へ

能登半島地震の発生から2月1日で1か月となる中、石川県内で、初めての仮設住宅が31日輪島市で完成し、2月3日から入居が始まることになりました。

今回の地震で石川県では、全壊や半壊、一部損壊を合わせておよそ4万5000棟の住宅で被害が確認されていて、県は仮設住宅の建設を進めています。

輪島市では、31日、県内で初めてとなる仮設住宅18戸が市の中心部にあるキリコ会館多目的広場で完成しました。

午前中、業者が設備などを確認し、午後、県から市に引き渡されました。

完成した仮設住宅は、2DKタイプが14戸、4LDKタイプが4戸の合わせて18戸です。

市によりますと、入居は2月3日からで、これまでに申し込みがあった4000件余りの中から、18世帯58人の入居が決まったということです。

一方、このエリアは津波の浸水域にあり市は「すぐに建設できる市の土地の中から選んだ結果でやむをえないと考えている。万が一の際は速やかに高台に避難してほしい」としています。

輪島市内では、今回の18戸を含めて合わせて7か所で548戸の仮設住宅の建設が進められていて、県は、住まいを失った人たちに速やかに安心できる環境を提供したいとしています。

仮設住宅とは別の制度「みなし仮設」とは

新たに建設される仮設住宅とは別に民間の賃貸住宅などに入居するいわゆる「みなし仮設」という制度もあり、石川県内の自治体が受け付け、賃料は行政が負担します。

「みなし仮設」の入居対象は、住宅が全壊や半壊するなどして住むことができなくなった被災者で、申請の手続きには「り災証明書」が必要ですが、入居後の提出でも可能です。

また、ライフラインが途絶え、長期間、自宅に住むことができない被災者も対象で、その場合はり災証明書の提出は必要ないということです。

1か月の賃料は、未就学児を除いた
▽5人以上の世帯が11万円以下
▽3人から4人の世帯が8万円以下
▽2人以下の世帯が6万円以下で、
行政が最長で2年間、賃料を負担します。

入居する「みなし仮設」は現在は石川県内の住宅ですが、県によりますと2月5日からは富山県、福井県、新潟県でも利用できるようになるということです。

石川県内の仮設住宅の着工状況は

石川県によりますと、県内の仮設住宅は、31日完成した輪島市の18戸を含めて3つの市と4つの町で合わせて1200戸余りの建設が始まっています。

内訳は
▽輪島市で548戸
▽珠洲市で303戸
▽七尾市で180戸
▽能登町で98戸
▽穴水町で76戸
▽内灘町で23戸
▽志賀町で20戸です。

このうち、珠洲市では、来月6日に正院小学校グラウンドの40戸が完成する予定です。

県は市や町と連携しながらことし3月末までに、少なくとも3000戸の仮設住宅の着工を目指していて、今後、要望に応じて必要な戸数や具体的な建設場所を検討することにしています。

仮設住宅への入居決まった人は

石川県輪島市河井町の蕨野永治さん(75)は完成した仮設住宅に入居できるという連絡を受けましたが、複雑な思いを抱えていると言います。

蕨野さんは、地震が起きたあと近くの避難所に着の身着のまま逃げて無事でしたが、木造2階建ての自宅は地震によって倒壊したうえ、火事で焼けてしまい、元の姿をとどめていません。

避難生活を続けるなか、住まいを確保しようと仮設住宅への入居を申し込んだところ、数日前に、市から「入居できるようになった」と連絡があったということです。

蕨野さんは「住むところがなく、地元に残りたいので申し込みました。入居することで避難所でのプライバシーの問題がなくなりうれしい反面、『私よりつらい思いをしている人がたくさんいるのに入居してよいのか』とも思います。うれしいような、申し訳ないような感じで、仮設住宅がたくさんできて早くみんなが平等に入れるようになってほしいです」と話していました。

入居できるか不安を感じる被災者も

石川県輪島市では、仮設住宅が完成した一方、被災した人の中には申し込んでも入居できるのか不安を感じている人もいます。

輪島市河井町でたばこ店を営んでいる桐田慎一さん(61)です。

店舗も兼ねた自宅で、1人で暮らしていましたが、地震によって敷地に亀裂ができたうえに建物も一部が損傷し、県の調査で住み続けるのは危険だと判定されました。

このため桐田さんは、市の健康福祉施設に避難していますが、周囲の話し声が気になったり、逆に、ほかの人に迷惑をかけないよう気を遣ったりして疲れがたまっているということです。

ゆったりできる環境を取り戻したいと仮設住宅への入居を申し込みましたが、ほかにも多くの人が希望しているため、自分が入居できるか不安を感じています。

桐田さんは、輪島市やその近くの仮設住宅に入居できない場合は、東京に移って、被災した人向けに無償で提供されている都営住宅に入居し、新しい仕事を探すことも考えているということです。

桐田さんは「本当は仮設住宅で気ままに手足を伸ばしてゆっくりしたいです。ただ、単身でわりと元気なので、入居できなくてもしかたないかもしれません」と話していました。