【詳細】ガザ地区 半数以上の建物が被害か(31日)

イスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘が続くパレスチナのガザ地区では、地区内の建物の半数以上が被害を受けた可能性があると、イギリスのメディアが伝えています。一方、戦闘の休止や人質の解放に向けた交渉は、イスラエル側とハマス側の双方の主張のすり合わせが行われるとみられ、妥協点を探れるかが焦点となっています。

※イスラエルやパレスチナに関する日本時間1月31日の動きを、随時更新してお伝えします。

イスラエル軍は、31日、ガザ地区内の複数の場所で、空爆や地上部隊による攻撃を続けていて、学校の建物内につくられたハマス側の拠点などを破壊し、戦闘員を拘束したり殺害したりしたと発表しました。

ガザ地区の保健当局は、イスラエル軍の攻撃でこれまでに2万6900人が死亡したとしています。

イギリスの公共放送BBCは30日、専門家による衛星画像の分析の結果として、これまでの戦闘によって、ガザ地区内にある建物、14万4000棟から17万5000棟が破壊されたり、被害を受けたりしたとみられると伝えています。

これは地区内にある建物の5割から6割にあたるということです。

被害はガザ地区の北から南へと広がっていて、ここ数週間はイスラエル側がハマスの重要な拠点があるとして攻勢を強めている南部のハンユニスで大規模な破壊の跡がみられるとしています。

イスラエルメディア「31日にもハマス代表が協議行う」

カタールやエジプトの仲介で、戦闘の休止や人質の解放に向けた交渉が進められていて、イスラエルのメディアは31日にもハマスの代表がエジプトの首都カイロを訪れて協議を行うと伝えています。

ハマス側が完全な停戦とイスラエル軍のガザ地区からの撤退を求めているのに対し、イスラエル側はこれを認めない姿勢で、双方の主張をすり合わせ、妥協点を探れるかが焦点となっています。

人質解放交渉 ハマス「イスラエル側からの提案を精査中」

カタールなどを仲介役として行われている人質の解放と戦闘の休止に向けた交渉について、複数のメディアは段階的な人質の解放にともない戦闘を休止することにイスラエル側が大枠で同意したと伝えました。

この案についてハマスは30日に「イスラエルと仲介国による会議でまとまった提案を受け取り、内容を精査している」とする声明を出しました。

今後、ハマスの代表がエジプトを訪問するとしていて仲介国と、条件面でのすりあわせを行うものと見られます。

ただ、ハマスが停戦とイスラエル軍の撤退を求めている一方で、イスラエル側は完全な停戦は認めない姿勢で、双方の折り合いがつくかは不透明な状況です。

中東地域ではイスラエルと隣国レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラとの間でも戦闘が続いているほか、イエメンの反政府勢力フーシ派は紅海やその周辺を航行する船舶への攻撃を続けています。

さらに、中東のヨルダンにあるアメリカ軍の拠点が攻撃され兵士3人が死亡したことを受け、アメリカ政府は親イランの武装組織に対して報復措置をとる方針を示しています。

武装組織側は30日になってアメリカ軍への攻撃を停止することを明らかにしましたが、アメリカは報復に踏み切る構えを崩しておらず、中東地域の緊張が一段と高まることも予想されます。

米 国連安保理で“UNRWAの変革なければ資金拠出再開せず”強調

パレスチナのガザ地区で活動する国連機関のスタッフがイスラム組織ハマスによるイスラエルへの攻撃に関与した疑いが出たことで資金拠出の停止を表明する国が相次ぐ中、国連の安全保障理事会が開かれ、アメリカの代表は徹底的な調査と組織の変革がなければ資金拠出の再開はできないと強調しました。

ガザ地区で支援にあたるUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関のスタッフが、去年10月のハマスによるイスラエルへの攻撃に関与した疑いが出たことを受けて、UNRWAへの資金拠出の一時的な停止を表明する国が相次いでいます。

こうした中、国連安保理で30日、ガザ地区を担当するカーフ上級人道復興調整官がガザの状況について報告する非公開の会合が開かれました。

会合のあとカーフ氏は記者団に対しUNRWAの活動を念頭に「ガザで果たされている人道的役割に代わるものはない。ニーズの多さや危機の規模、複雑さを考えると、私たちは全員で対策を強化する必要がある」と述べ、人道支援の重要性を改めて訴えました。

一方、UNRWAへの最大の資金拠出国、アメリカのトーマスグリーンフィールド国連大使は、UNRWAの活動は必要不可欠だとした上で「資金提供を再開する前に、組織がどのように運営されていたのか、スタッフをどのように管理していたのかなどを調査し根本的な変革を確認する必要がある」と述べ、資金拠出の再開のためには調査と組織の変革が必要だと強調しました。

バイデン大統領“報復措置とるか決定か”への質問に「決めた」

バイデン大統領は30日、ホワイトハウスで記者団から「どのような報復措置をとるか決定したか」と問われたのに対し、「決めた」と述べ、報復措置について対応を決定したと明らかにしました。

ただ、具体的な時期や内容については言及しませんでした。そのうえでバイデン大統領はイランの責任を追及するかについて「実行した者に武器を供給しているという点において責任を取らせる」と述べ、イランに対して何らかの対応を取る考えを示しました。

一方で「中東地域で戦闘が拡大する必要はない。それは望んでいることではない」と述べ、中東地域でこれ以上戦闘が広がることは避けたいという考えを強調しました。

またホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は報復措置について記者団に対し「段階的な対応になる可能性が十分にある。単発的な措置ではなく、一定期間にわたって複数の措置を講じる可能性がある」と述べました。

イラン アメリカの動きをけん制

イランの国営通信によりますと、アメリカ政府が親イランの武装組織への報復に加え、イランに対しても何らかの対応を取る考えを示していることを受けて、イランのイラバニ国連大使は30日、報道陣に対し、「国土や国益、国民が敵の標的にされた場合、強く対応するのがイランの基本的な方針だ」と述べ、アメリカの動きをけん制しました。

カタイブ・ヒズボラ「対米作戦停止」SNSで声明

アメリカ軍の兵士3人が死亡した攻撃に関与した可能性があるとアメリカ国防総省が指摘している親イランの武装組織、「カタイブ・ヒズボラ」は30日、SNSで声明を発表し、アメリカ軍に対する軍事作戦を停止すると明らかにしました。

声明では「アメリカ軍に対する軍事作戦を停止するが、われわれはほかの方法でガザの住民を守り続ける」としています。

これに対してアメリカ国防総省のライダー報道官は、30日の記者会見で「情報は把握しているが、言葉より行動が重要だ。われわれが選ぶ時期と方法で対応する」と述べ、報復に踏み切る姿勢を改めて示しました。

米軍 “紅海でフーシ派の巡航ミサイルを撃墜”

アメリカ中央軍は声明を発表し、現地時間の30日午後11時半ごろ、日本時間の31日午前5時半ごろ、イランが支援するイエメンの反政府勢力フーシ派がみずからの支配地域から紅海に向かって巡航ミサイル1発を発射したと明らかにしました。

ミサイルは、アメリカ軍のミサイル駆逐艦「グレーブリー」によって撃ち落とされ、けが人などはいなかったとしています。フーシ派は、イスラム組織ハマスとの連帯を掲げ、紅海を航行する船舶への攻撃を繰り返しています。

イスラエル軍による攻撃が続くガザ地区で、日本の政府やNGOが建設や運営を支援してきた学校や病院などの施設の被害状況を東京大学の研究者らが衛星写真を使って分析した地図を作成し、ウェブサイトでの公開を始めました。

東京大学大学院の渡邉英徳教授とガザ地区で支援活動を行っているNGO「日本国際ボランティアセンター」は、日本政府や日本のNGOが支援してきたガザ地区の11か所の施設について、イスラエル軍の攻撃による被害状況を衛星写真を使って分析し、ウェブサイト上で公開を始めました。

このうち、南部のハンユニスにある病院は、およそ3週間前の衛星写真では駐車場や庭などに避難してきた人たちのものと見られるテントが密集している様子が確認出来たほか、30日に同じ場所を撮影した写真では、周辺のさら地が広がっていたり、近くの住宅地が破壊されたりしていて、イスラエル軍の攻撃が病院近くに迫っていることがうかがえます。

また、北部にある学校を撮影した衛星写真では校庭や校舎の周辺に空爆の跡とみられる大きな穴が確認され、穴の直径などから殺傷能力が高い兵器が何度も使用されている可能性があるということです。

日本国際ボランティアセンターの並木麻衣さんは「元の暮らしを取り戻すことが不可能に思えるほど深刻な被害を受けていることが空からの写真でも伝わり、人々の生活を支える施設がなぜ攻撃にされなければならないのか、支援を行ってきた日本政府もしっかりと説明を求めるべきではないか」と話していました。