去年の農林水産物と食品の輸出額 1兆4547億円で過去最高に

去年1年間の農林水産物と食品の輸出額は、世界的な外食需要の回復などを背景に、1兆4547億円と前の年を2%余り上回って過去最高となりました。ただ、最大の輸出先の中国向けは、日本産水産物の輸入停止措置が続いていることなどから、14%余り減少しました。

農林水産省の発表によりますと、去年1年間の農林水産物と食品の輸出額は、前の年を2.9%上回って1兆4547億円となり、過去最高を更新しました。

世界的にコロナ禍で落ち込んでいた外食需要が回復したことに加え、外国為替市場で円安が進んだことも追い風になりました。

国や地域別で見ると
▽香港向けで13%
▽アメリカ向けは6%
▽韓国向けは14%
いずれも前の年より増加しました。

ただ、最大の輸出先である中国向けは、去年8月に、東京電力福島第一原発にたまる処理水の放出を受けて、中国政府が日本産水産物の輸入を停止するなどした影響で前の年より406億円、率にして14%減って、全体の伸びを抑える形となりました。

また、品目別では、中国向けの割合が大きかったホタテが、前の年から222億円、率にして24%の減少となりました。

農林水産物や食品の輸出をめぐって、政府は2025年までに輸出額を2兆円に増やす目標を掲げていますが、中国による水産物の輸入停止措置が解除される見通しが立たない中、輸出先をどう多角化していくかが課題となっています。

坂本農相「輸出先の開拓に一定の成果」

坂本農林水産大臣は、30日の閣議のあとの会見で「輸出実績については、中国による水産物の輸入停止措置の影響が少なからずあったことは否定できない。ただ、中国以外の輸出先の開拓に一定の成果が見られ、今後に期待している。新規の販売開拓の支援やビジネスマッチングなどを実施し、輸出の拡大をはかりたい」と述べました。

輸出企業が日中の貿易活性化目指す団体設立も

中国向けの農林水産物や食品の輸出が減少する中、輸出を手がける企業の間では日中両国の貿易の活性化を目指す団体を設立する動きも出ています。

新たに設立されたのは、日本の農林水産物や食品を中国に輸出している企業などおよそ20社で作る「日中農林水産物貿易発展協会」で、30日は東京 文京区で設立を祝う式典が開かれました。

式典には日中両国の政府関係者も招かれ、農林水産省の小川良介農林水産審議官は、「日中の行政レベルの交流はコロナ禍前に回復したとは言えない状況だが、民間の取り組みとして活躍を期待している」とあいさつしました。

また、東京にある中国大使館の宋耀明 公使は、「協会が日中間の食文化の交流を含め経済分野で活躍することを祈念している」と述べました。

日本から中国に向けては、ホタテなどの水産物に加え、去年11月からは、中国の富裕層に人気が高い「にしきごい」も輸出できない状況となっています。

新しい団体は、日中の政府関係者を招いた勉強会や交流会を開催し、両国の相互理解を進めることで、貿易の活性化につなげたいとしています。

団体の理事長となった、「にしきごい」の輸出を手がける中国出身の範軍さんは、「互いの立場があり、対話が難しい時もあると思うが民間レベルから友好関係を維持したいと声をあげていくことで、日中両国の関係改善につなげたい」と話していました。