不正の根本的原因に“受託体質” 豊田自動織機 特別調査委指摘

「豊田自動織機」はフォークリフトや建設機械用のエンジンの排出ガス性能の試験でデータの不正が明らかになり、外部の有識者でつくる特別調査委員会を設置して調査を進めてきました。

特別調査委員会の報告書では、一連の不正の根本的な原因としてみずから責任を持ってリスクに対処できない「受託体質」とも言うべき企業体質があったと指摘しています。

受託体質

このなかでは、会社のエンジン事業部は長年にわたりトヨタ自動車の管理・監督のもとで自動車用エンジンの開発を行い、あくまでも受託業務として、トヨタから求められるままにエンジン開発を行ってきたと指摘しています。

こうした開発の進め方によって、エンジン事業部では「受託体質」とも言うべき気質が形成され、2003年以降に産業車両用エンジンで本格的に導入された排出ガス規制というリスクに責任をもって対処することができなかったとしています。

不合理な開発スケジュール

また、今回の調査では、対象となったほぼすべての産業車両用エンジンで、認証を取得するための不正行為が故意に行われていました。

この原因について報告書では、エンジン事業部において、量産開始日が副社長の要望によって1年前倒しされるケースなど、不合理と思われる開発スケジュールが多く策定されていたと指摘しています。

なかには、開発スケジュールに無理があることを認識し、上司の開発室の室長に進言する担当者も少なからずいましたが、室長がスケジュールを是正する行動を起こすことはなかったとしています。

さらに、室長からその上司である技術部長には報告や相談もされておらず、部長職の管理職も開発現場の実情を十分に把握しようとしていませんでした。

データの正確性の軽視

一方、今回の調査では産業車両用エンジンと自動車用エンジンで、故意の不正のなかに試験結果の書き換えなどデータの正確性を軽視する行為が含まれています。

これについて報告書では、認証の取得ではなくデータの見栄えをよくしたいとの目的にとどまるものだが、コンプライアンスの姿勢に大きな疑問を提起するものだと指摘しています。

そのうえで、このようなデータの正確性に対する意識の低さは、一部の従業員にのみ見られたわけではなく、長期間にわたりかなりの範囲に広がっていて、認証取得の不正行為に及ぶことについての心理的ハードルを下げたひとつの要因にもなったと考えられると指摘しています。