医師が危機感示す「福祉避難所」の現状 人手不足 受け入れ困難

災害のあと、支援や配慮が必要なお年寄りや障害者が避難する「福祉避難所」。石川県輪島市の一部の地域では新たな避難者の受け入れが難しい状態が続いていることがわかりました。
人手の不足が主な原因で、支援にあたる医師は「災害関連死につながりかねない」と危機感を示しています。

福祉避難所 新たな避難者の受け入れ難しい状態

福祉避難所は、通常の避難所では健康管理が難しいお年寄りや障害者など配慮が必要な人を受け入れる施設です。

輪島市によりますと市内の福祉避難所のうち門前町で開設されている3か所では、新たな避難者の受け入れが難しい状態が続いているということです。

地震で被害を受けた施設

門前町では地震の前の計画で7か所の福祉避難所を開設する予定でしたが、建物の被害などで3か所の開設にとどまったことに加え、市の職員に加え、支援にあたる医療や介護の人手が不足していることが主な原因だとしています。

この状況に対し輪島市は、市内にある既存の福祉施設を活用して、福祉避難所を臨時で開設することなども検討するとしています。

沖本真史医師

門前町で往診を行うNGO「ジャパンハート」沖本真史医師
「配慮が必要な人は適切な福祉避難所に行けないと持病が悪化するなどして災害関連死につながりかねない。支援の選択の幅が広がるよう速やかに福祉避難所を開設してほしい」

“今はやらなきゃいけない” その思いで…

輪島市門前町のグループホームでは施設の利用者33人に加え、福祉避難所として22人が避難生活を送っています。

現時点でこれ以上の受け入れは難しいということです。

理由の一つに医療や介護の人手が足りないことがあります。

今は職員およそ30人と支援に来ているNPOの関係者数人で、元の施設の利用者に加え、避難者のケアも行っています。

24時間体制で運営しているため、ほとんどの職員が地震の直後は一日も休みをとれないような状態が続きました。

やや落ち着いた今も人手は十分ではなく、施設内で、先週から新型コロナウイルスの感染者が相次いでいますが、感染が判明した職員も症状がない場合は、利用者などと会わない場所で働かざるをえない状態だということです。

岡山人美さん

「もんぜん楓の家」施設長 岡山人美さん
「職員たちは『今はやらなきゃいけない』という思いを強くして、それぞれも被災して大変な中、運営にあたってきました。一般の人であっても避難所で避難生活を送るのは大変なことなので、支援が必要な方はさらに苦労を感じていると思います。避難生活の長期化は免れないと思うので職員たちと力を合わせて過ごしていきたいです」

福祉避難所に入れず避難生活続ける男性は…

輪島市門前町では、半身まひの障害がありながら希望する福祉避難所に入れず、指定避難所で生活を送ってきた人もいます。

増田光雄さん(77)は脳梗塞の後遺症で左半身まひの障害がありますが、地震のあとから自宅近くの指定避難所で避難生活を送っています。

増田光雄さん(77)と看護師

医療支援を行っているNGOによりますと、増田さんは避難所で新型コロナウイルスに感染して高熱が続き、病院に搬送する寸前まで症状が悪化したこともあったということです。

NGOの勧めで福祉避難所を希望しましたが門前町では入ることができず、地震から1か月たった2月1日、門前町を離れ輪島市内の福祉避難所に入れることになりました。

増田光雄さん
「自分のような障害者にとって、多くの人が避難している団体生活はとても難しいものだった。住み慣れた門前町を離れ、輪島の福祉避難所に移動するのは不安なことは多いが、それでも生きていかないといけない」