仏 環境規制など反対の農家 パリへの高速道路封鎖 流通に懸念

フランスではEU=ヨーロッパ連合の環境規制などに反対する農家が首都パリに向かう高速道路の封鎖に踏み切り、流通の混乱への懸念が出ています。農家による抗議活動はヨーロッパ各地でも起きていて、ことし行われるEUの議会選挙でも農業政策が争点の1つとなりそうです。

フランスではインフレや燃料費の高騰などを背景に、EUが域内の農家に求める環境規制が厳しすぎると、全国の農家らが訴えていて、主要な幹線道路を農業用トラクターで封鎖する抗議活動が相次いでいます。

29日には、全国の農家の組合で作る団体らがパリに向かう近郊の高速道路、8か所で封鎖に踏み切り、このうち、パリから北に10キロほど離れた高速道路では、トラクターおよそ50台が封鎖に加わりました。

参加した農家の男性は「EUによる規制が多く、コストがかかりすぎて、域外の商品などに勝てない。これでは農業を続けることはできない」と話していました。

今回の抗議活動をめぐっては、アタル首相が26日、燃料税の増税延期などの措置を発表しましたが、事態の収束には至らず、流通の混乱への懸念が出ています。

ヨーロッパでは、ドイツやオランダなどでもEUや自国の農業政策に不満を持つ農家による抗議活動が相次いでいます。

ことし6月に行われるEUの議会選挙でも農業政策が争点の1つとなる見通しで、極右や右派の政党がこうした不満を取り込み、支持を広げる可能性も指摘されています。

農家の抗議活動相次ぐ 要因は

ヨーロッパ各国では、EU=ヨーロッパ連合による環境規制や、自国の農業政策に不満を持つ農家による抗議活動が相次いでいます。

その要因の1つが、EUが2019年に発表した、気候変動や生物多様性に配慮しながら経済成長を目指す行程表「欧州グリーンディール」です。

この中で、農業分野において、2030年までに農薬の使用を半減させることや、肥料の使用を削減すること、2030年までに全農地の25%を有機農業とすることなどを定めています。

これに加えてEUは、去年から農地の一定の割合を休耕地とし、作付けを行わないことなども定めています。

こうしたEUの規制によって、ヨーロッパの農家からは、単位面積あたりの収量が減るなどとして、不満が出ていました。

こうした不満に加え、フランスでは、燃料費の高騰が続く中で、農業用ディーゼル燃料に対する減税措置の打ち切りへの反発から、抗議の動きが全国に広がりました。

またヨーロッパでは、ロシアによる軍事侵攻で黒海から輸出できなくなったウクライナ産の安価な農産物の流入などもあり、同様の不満の声がフランス以外のヨーロッパの国の農家からも上がり、ドイツやベルギー、ポーランドなどでも農家による抗議デモが相次いでいます。