【詳細】隔たり埋められるか不透明な状況続く(30日)

イスラエル軍がガザ地区南部でイスラム組織ハマスへの攻勢を強めるなか、人質の解放と戦闘の休止に向けた交渉をめぐって進展が伝えられているものの、イスラエル・ハマス双方の隔たりを埋められるか、不透明な状況が続いています。

※イスラエルやパレスチナに関する日本時間1月30日の動きを、随時更新してお伝えします。

イスラエル軍 ヨルダン川西岸の病院内で20代の若者3人射殺

イスラエル軍は、30日、ヨルダン川西岸のパレスチナ暫定自治区のジェニンで、治安部隊が病院内にいた27歳の若者ら3人を殺害したと発表しました。

イスラエル側は、3人のうち1人はハマスと関わりがあり、病院を隠れがにして近くテロを実行する計画を立てていたとしています。

また、ほかの2人もイスラエル軍兵士への発砲などの襲撃やテロに関与していたと主張しています。

病院の監視カメラの映像には、医師や看護師などの格好をしたイスラエルの治安部隊の要員とみられる人物たちが、ライフル銃を構えながら病院内の廊下を進んで行く様子が写っています。

これに対して、パレスチナ暫定自治政府の保健相は、「イスラエルの占領軍による医療機関への犯罪が再び繰り返された。国連や国際機関に対し、イスラエルによる日常的な犯罪行為を直ちに終わらせるよう求める」とする声明を出し、強く反発しています。

イスラエルは、去年10月以降、ガザ地区での戦闘を続ける一方、ヨルダン川西岸でもテロ対策とする作戦を行っていて、子どもを含むパレスチナの人たちが拘束されたり殺害されたりするケースが相次いでいます。

国連によりますと29日の時点でヨルダン川西岸などでは367人が死亡しているということで、パレスチナ側の反発がさらに強まる懸念が高まっています。

“国連機関スタッフが去年のハマスの大規模攻撃に関与” 米紙

パレスチナのガザ地区で活動するUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関のスタッフが、2023年10月のイスラム組織ハマスによるイスラエルへの大規模攻撃に関与したとされる疑いについて、アメリカのニューヨーク・タイムズは、イスラエルがアメリカ側に示したとする資料の内容を報じました。

それによりますと、関与した12人について、イスラエル側は、
▽7人がUNRWAの学校の教員、
▽2人が別の形でUNRWAの学校に勤務していた人物、
▽3人が事務員やソーシャルワーカー、倉庫の管理人だったと説明しているとしています。

さらに
▽10人がハマスのメンバーで、
▽1人がハマスと連帯関係にあるパレスチナの武装組織「イスラム聖戦」とつながりがあったとしています。

また役割については、
▽1人がイスラエル側に越境して集落への襲撃に加わったとしているほか、
▽別の1人が女性の誘拐に関わったなどとしています。

人質解放 戦闘休止の交渉 米国務長官 “生産的協議”進展期待

ハマスに拘束されている人質の解放と戦闘の休止に向けた交渉が、28日、ヨーロッパで行われました。

アメリカCIA=中央情報局のバーンズ長官や、イスラエルの情報機関、モサドのトップ、それに、仲介役を務めるエジプトやカタールの代表などが参加しました。

アメリカのブリンケン国務長官は29日の記者会見で、イスラエルとエジプト、カタールの間で提案が共有されたとしたうえで、「とても重要で生産的な協議だった」と述べました。

提案の内容についての言及は避けましたが、「強力で説得力のある提案だ」と述べ、交渉の進展に期待を示しました。

ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は記者会見で、人質の解放に向けた協議は継続中だとしたうえで、「やるべきことはたくさん残っており、合意が差し迫っている訳ではない。ただ、ここ数日の協議によれば、よい方向に進んでいると感じる」と述べました。

一方、ハマスは恒久的な停戦を求めていますが、イスラエル側はそれを受け入れない姿勢で主張には隔たりがあるとの指摘もあり、交渉がまとまるかどうかは不透明な状況です。

カタール首相兼外相 “よい進展があった”

イスラエルとイスラム組織ハマスとの間での戦闘の休止と人質の解放に向けた交渉の仲介役を務めるカタールのムハンマド首相兼外相は29日、アメリカの首都ワシントンで開かれたイベントで協議について言及しました。

この中でムハンマド首相兼外相は、関係国の代表が参加してヨーロッパで行われた協議について、「少なくとも前進への土台を築くためのよい進展があった。この提案をハマスに伝え、彼らがこのプロセスに積極的かつ建設的に関与するようになることを望んでいる。この方法こそが事態を沈静化させるための唯一の方法だからだ」と述べました。

また、ムハンマド首相兼外相は、中東のヨルダンにあるアメリカ軍の拠点が無人機で攻撃されて兵士3人が死亡したことについて、「私たちの行っている努力が損なわれ、これまでのプロセスを危うくすることがないよう願っている。いずれにせよ地域の安全保障に影響を与えることは間違いない」と懸念を示しました。

ヨルダンにある米軍拠点が無人機攻撃 報復措置を具体的検討

シリアとの国境に近いヨルダン北東部で28日、アメリカ軍の拠点が無人機による攻撃を受けて兵士3人が死亡し、アメリカ政府はイランの支援を受けた武装組織によるものだという見方を示しています。

アメリカ国防総省は29日、この攻撃によるけが人が40人以上に増えたと明らかにしました。

ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は29日、記者会見で「バイデン大統領は選択肢を精査している。イランに支えられた集団がアメリカ軍の兵士の命を奪ったという事実を認識したうえで対応する」と述べて、バイデン大統領がオースティン国防長官など国家安全保障チームと協議し、報復措置について具体的な検討を行っていると明らかにしました。

またブリンケン国務長官は記者会見で、報復措置について「厳しく対応する。報復措置は段階的かつ長期的なものになるだろう」と述べました。

一方、「われわれはイランとの戦闘は望まない」と述べ、イランとの間で過度に緊張が高まることは避けたいという考えを示しました。

米軍兵士死亡 “混乱生じ 無人機攻撃阻止できず” 米メディア

アメリカの有力紙、ウォール・ストリート・ジャーナルは29日、複数のアメリカ政府高官の話として、攻撃を阻止できなかったのは、敵の無人機の接近と同じタイミングで、アメリカ軍の無人機が帰還し、接近してきた無人機が敵か味方か判断できず、現場で混乱が生じたためだったと報じました。

また、アメリカのCNNテレビは、敵の無人機は、アメリカ軍の無人機を追尾しながら接近してきたと伝えています。

これについて、アメリカ国防総省のシン副報道官は29日、記者会見で「どのように敵の無人機が施設に打撃を与えることができたのかは調査中だ」と述べるにとどめました。

また、攻撃に関与した武装組織については「最終的な結論は出していない」としながらも、親イランの民兵組織「カタイブ・ヒズボラ」が関わっていた可能性があるとの見方を示しました。

ガザ地区保健当局 “これまでに2万6422人が死亡”

イスラエル軍は29日、ハマスの重要な拠点があるとするガザ地区南部のハンユニスや北部のガザ市などで空爆や地上部隊による攻撃を続けていると発表しました。

ガザ地区の保健当局はイスラエル軍の攻撃でこれまでに2万6422人が死亡したとしています。

ハンユニスでの戦闘を巡ってパレスチナ赤新月社は29日、SNSへの投稿で「ハンユニスにあるアマル病院の周辺への攻撃が続いている。イスラエル軍は8日間にわたり病院を標的にし包囲し続けている」としています。

また「病院からわずか数メートルの場所から遺体を運ぼうとしていた2人が攻撃を受けて死亡した」と病院付近への攻撃で犠牲者が出ていると訴えています。

イスラエル ハマス 双方の隔たり埋められるか不透明な状況続く

こうした中、人質の解放と戦闘の休止に向けてカタールなどを仲介役として進められている交渉について、アメリカのNBCニュースや一部のイスラエルメディアは29日、段階的な人質の解放にともない戦闘を休止することにイスラエル側が大枠で同意したなどと伝えています。

ただ、複数のイスラエルメディアは、「まだ合意には長い道のりがある」とする政府関係者の話も伝えています。ハマス側が完全な停戦を求めている一方で、イスラエル側はそれを受け入れない姿勢で、双方の隔たりを埋めることができるか、不透明な状況が続いています。