本や雑誌の出版情報 独立系書店にも配信開始 出版社などの団体

書店の減少が続く一方、中小規模で本のラインナップに特色がある、いわゆる「独立系書店」の出店が相次いでいます。出版社などで作る団体は、これまで主に大手の書店などに行っていた本や雑誌の出版情報の配信を、30日から新たに「独立系書店」に対しても始めました。

全国の新刊を扱う書店がこの10年でおよそ3割減った一方、中小規模で店主が選び抜いた本を並べる「独立系書店」と呼ばれる書店の出店が増えています。

こうした状況を受けて、出版社や書店、出版取り次ぎなどで作る「日本出版インフラセンター」は、主に大手の書店向けに本の販売予定や内容などを配信していたサイトを、希望する「独立系書店」も利用できるよう、30日、リニューアルしました。

独立系書店の多くは、これまでそれぞれの出版社のホームページなどから情報を得ていましたが、サイトに登録すると、およそ2800社から出版される年間6万点ほどの新刊や、これまでに出版されたおよそ380万点の本などの情報を、一元的に入手できるようになるということです。

出版社などと価格の維持に関する契約を結ぶことが、登録の条件だとしています。

今回のリニューアルにより、多様な本に触れる機会が増えることが期待されます。

団体 “独立系書店の状況把握 売り上げ増加につなげたい”

「日本出版インフラセンター」によりますと、新刊を取り扱う書店は、全国で、2012年度には1万6371店ありましたが、2022年度には1万1495店と、およそ3割減りました。

一方で、「独立系書店」は、業界に詳しいライターの和氣正幸さんによりますと、全国で少なくとも、2021年は78店、2022年は55店、去年、2023年は105店が開業したということです。

日本出版インフラセンターは、従来の書店の減少が続く中、増加傾向にある独立系書店と、登録制のサイトを通してつながることで、正確に分かっていなかった独立系書店の状況を把握するとともに、新刊などの情報を広く伝えて、本の売り上げ増加につなげていきたいとしています。

「日本出版インフラセンター 書店マスタ管理委員会」の古澤亘委員長は「書店が減少する中、多様な形態がある独立系書店は、専門性のある品ぞろえやカフェの併設などで、本と触れ合う機会となる大事な存在で、今後ますます存在感が増してくると思う」と話しています。

その上で、「業界としてしっかり支援していくので、サイトに載っている本や販売促進の情報を使って、魅力的な書店づくりに役立てていただき、読者に本を届けてほしい」と話していました。

独立系書店「サイトも活用し魅力的な書店に」

神奈川県小田原市の「独立系書店」からは、「これまで時間がかかっていた情報収集が楽になる」と、サイトのリニューアルに期待する声が聞かれました。

このうち、2022年10月に小田原市で開業した「南十字」は、カルチャーや哲学などの書籍のほか、「ZINE」と呼ばれる個人が作った本など、およそ1500点を取り扱っています。

この書店は、大手取り次ぎと取り引きしておらず、それぞれの出版社のサイトやSNSなどを通じて出版情報を収集しています。

共同運営者の成川勇也さんは、「これまで情報収集に時間がかかっていたので、一元化されると楽になるし、フィルタリングがうまくできれば便利だと思う。本を選ぶにも情報が多いほうがいいので、サイトを見ることを日課にしてみたい。こうしたサイトも活用して個性のある魅力的な書店にしていきたい」と話していました。