【詳細】“約2か月間の戦闘休止を協議か”米報道(28日)

イスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘が続くなか、カタールなどの仲介で人質の解放や戦闘の休止に向けた交渉も進められています。およそ2か月間、戦闘を休止する合意の草案が近く協議されるという報道がある一方で、交渉には時間がかかるとの見方もあり、事態の打開につながるかは不透明な情勢です。

※イスラエルやパレスチナに関する日本時間1月28日の動きを、随時更新してお伝えします。

“これまでに2万6422人が死亡”ガザ地区の保健当局

イスラエル軍は、ハマスの重要な拠点があるとするガザ地区南部のハンユニスなどへの攻撃を続けています。イスラエルのネタニヤフ首相は27日の記者会見で「今週、イスラエル軍はハンユニスの包囲を完了した。数百人のテロリストを殺害し、地上と地下にある拠点を破壊した」と述べ、成果を強調しました。

一方、アメリカのウォール・ストリート・ジャーナルはアメリカとイスラエルの当局者の話として、ハマスがガザ地区に張り巡らしている地下トンネルのうち、最大で80%ほどが破壊されずに残っているとの見方を伝えています。

ガザ地区の保健当局は28日、イスラエルの攻撃でこれまでに2万6422人が死亡したとしていて、避難生活を続ける住民の間には飢えと病気が広がっていると訴えています。

米有力紙“約2か月間の戦闘休止盛り込んだ合意草案を協議へ”

カタールやエジプトの仲介で、人質の解放と戦闘の休止に向けた交渉が続けられています。アメリカの有力紙、ニューヨーク・タイムズは27日、アメリカ政府当局者の話として、イスラム組織ハマスに今も拘束されている100人以上の人質の解放などと引き換えに、イスラエルとハマスの間でおよそ2か月間、戦闘を休止することを盛り込んだ合意の草案が28日にもフランス・パリで協議されると伝えました。

それによりますと、戦闘の休止は2段階で行われ
▽はじめに30日ほどの戦闘休止と引き換えにハマス側が女性や高齢者、それにケガを負った人質を解放し
▽次の30日ほどで、男性の人質やイスラエル軍の兵士の解放を目指すとしています。

一方、イスラエル側が収監しているパレスチナ人を何人釈放するかをめぐっては、さらなる交渉が必要だとしています。

合意の草案について28日にもパリで協議が行われるとしていて、アメリカCIA=中央情報局のバーンズ長官や、イスラエルの当局者、それに仲介するカタールやエジプトの当局者も協議に参加するとしています。

ニューヨーク・タイムズは、アメリカ政府当局者の話として「合意は手の届くところにある」という見方を紹介し、2週間以内にも交渉がまとまる可能性があると伝えています。

ただ、ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は26日の記者会見で「近いうちに何らかの進展があるとは期待すべきではない」と述べ、イスラエルとハマスの間で合意に達するには時間がかかるという認識を示しています。

ノルウェー「UNRWAを通じて支援を継続する」

UNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関への資金の拠出を一時的に停止すると複数の国が相次いで表明するなか、ノルウェーは支援を継続する方針を示しました。

パレスチナのヨルダン川西岸に事務所を置くノルウェー代表部は、27日、SNSに声明を投稿し「ガザの状況は壊滅的で、UNRWAは最も重要な人道支援組織だ。ノルウェーはUNRWAを通じてパレスチナの人々への支援を継続する。パレスチナへの国際社会からの支援はこれまでにないほど必要とされている」としています。

一方、UNRWAの職員がハマスによるイスラエルへの攻撃に関与した疑いがあることについては「深く憂慮するべきもので、事実であればまったく容認できない」と強調し、UNRWAによる調査の結果を待つとしています。

そのうえで「われわれは、個人が行った可能性があることと、UNRWAが何のためにあるかを区別する必要がある。何万もの職員が、支援物資の配給や人命救助などで重要な役割を担っている」と述べ、ガザ地区などで人道支援にあたるUNRWAへの援助の必要性を訴えました。

国連事務総長「来月必要な支援を十分に行えない」

国連のグテーレス事務総長は28日、UNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関の職員がイスラム組織ハマスによるイスラエルへの攻撃に関与した疑いが出ていることについて声明を発表しました。

この中でグテーレス事務総長は「関与した12人のうち9人は直ちに特定され、UNRWAの事務局長によって解雇された。残りの3人のうち1人は死亡が確認され、2人についてはまもなく判明するだろう」として、関与した職員は刑事訴追を含めて責任を問われることになると強調しました。

一方、UNRWAへの資金の拠出を一時的に停止すると複数の国が相次いで表明していることについて「ガザで生活する200万人の住民はUNRWAからの援助に依存している。現在の資金では、来月、必要な支援を十分に行うことができない」と強い危機感を示し、支援活動の継続に向けて理解を求めました。

米メディア “攻撃に国連機関の車両や施設が使われた可能性”

ガザ地区で支援にあたるUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関は、ガザ地区を実効支配するイスラム組織ハマスが去年10月にイスラエルに攻撃を行った際に、UNRWAの複数の職員が関与した疑いがあるとするイスラエル側からの情報提供を受けて、調査を始めています。

アメリカのニュースサイトアクシオスは26日、イスラエル政府高官の話として「イスラエル側は、UNRWAの職員が攻撃に積極的に参加し、その車両や施設が使用されたとする情報を提供した」と伝えています。

そのうえで「これらの情報はハマスの戦闘員への尋問から得られたものだ」とする話を報じています。

この疑いを受けて、最も多くの資金を拠出するアメリカを始め、カナダやイギリスなどこれまでに6か国が、必要な措置が講じられるまで追加の資金の拠出を一時的に停止すると表明するなど影響が広がっています。

南部ハンユニスを中心に攻撃を続けるイスラエル軍に対して、ガザ地区の保健当局は27日、過去24時間で174人が死亡しこれまでの死者数は2万6257人にのぼったとしています。

UNRWAは、ガザ地区での支援物資の配布や避難所の運営に重要な役割を果たしているだけに、今回の事態がガザ地区の人道状況に与える影響が懸念されます。

UNRWA事務局長 「非常に無責任だ」

UNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関のフィリップ・ラザリーニ事務局長は27日に出した声明で、これまでに9か国が資金の拠出を一時的に停止したと明らかにしました。

その上でラザリーニ事務局長は「少数の職員に対する疑いで資金の拠出が一時停止されるとは衝撃的だ。UNRWAと地域全体に対する制裁であり、非常に無責任だ」として継続的な活動を脅かすものだと批判しました。

そして「ガザ地区では200万人以上の人が生きるためにUNRWAに依存している。決定を考え直すよう強く求める」として資金の拠出を停止するとした各国に対して見直すよう訴えました。

ネタニヤフ首相 ハマス重要拠点での成果を強調

イスラエルのネタニヤフ首相は27日の記者会見で「今週、イスラエル軍はハンユニスの包囲を完了した。数百人のテロリストを殺害し、地上と地下にある拠点を破壊した」と述べ、ハマスの重要拠点があるとするガザ地区南部のハンユニスで成果をあげていると強調しました。

一方、イスラエルでは、人質の解放が進まない現状に政府への批判の声が強まっていて、27日もテルアビブで大規模な抗議デモが行われました。

これについてネタニヤフ首相は「抗議デモは役に立たない。ハマスが要求を強めることになる」と述べ、解放を急いでハマス側に妥協するのではなく、あくまでも軍事作戦によって圧力をかけ、事態打開を目指すという政府の方針に理解を求めたとみられます。

UNRWAとは

UNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関は、イスラエルの建国に端を発した第1次中東戦争によってふるさとを追われたパレスチナ難民を支援するため、1949年に設立された国連機関です。当初パレスチナ難民は75万人でしたが、去年1月1日時点では、ヨルダンやレバノンなど近隣国を含めておよそ590万人が登録されています。

ガザ地区でも食料を配給したり、学校を運営したりしてパレスチナ難民の生活を支えています。

UNRWAでは、一連の衝突後に150人以上の職員やスタッフが死亡するなど活動に影響が出ましたが、学校などを利用して各地で避難所を運営しています。

UNRWAは活動資金のほとんどを欧米諸国などからの支援で賄っています。UNRWAなどによりますと、おととし1年間の予算は11億7464万ドル、日本円で1740億円あまりで、アメリカの支援が最も多く、3億4393万ドルと全体の30%近く、次いでドイツがおよそ17%にあたる2億205万ドル、日本は6番目に多い3015万ドルを拠出しています。