避難生活の要介護の86歳女性 災害関連死の疑い 石川 能登町

石川県能登町で被災し、避難生活を続けていた86歳の女性が先週、災害関連死の疑いで亡くなりました。家族は死因について、医師から「エコノミークラス症候群」と伝えられたということで、取材に対し、「ほぼ寝たきり状態で運動ができず、対策は難しかった」と、介護が必要な避難者やその家族が直面する厳しい現状などを語りました。

能登町宇出津の小浦清香さん(86)は89歳の夫と子どもの合わせて5人で、海岸近くの自宅で暮らしていました。

小浦さんは要介護4のほぼ寝たきりの状態だったため、1月1日の地震の直後は近所の人の力を借りて、車いすごと持ち上げるなどして高台に避難しました。

その後、家族全員で能登町役場での避難を続けてきました。

小浦さんは家族やほかの避難者と役場内の1室で過ごしていましたが、段ボールベッドが支給されるまでのおよそ1週間、車いすのリクライニングを倒して寝ることを余儀なくされ、たびたび体の痛みを訴えていたということです。

食欲はありましたが、糖尿病を患っていたため、家族が配られた菓子パンの甘い部分を取り除いて食べてもらうなど、命をつなぐ方法を模索しながら日々生活してきました。

しかし、1月19日、小浦さんは昼ごはんを食べ終えたあと、体調の異変を訴え、トイレに連れて行こうと、次女の紀子さん(59)が段ボールベッドから体を抱き上げた際、突然、意識を失ったということです。

救急車で搬送された病院で治療が続けられましたが、意識は戻らず、亡くなりました。

家族は、医師から死因について肺塞栓症、いわゆる「エコノミークラス症候群」と伝えられたということです。

次女の紀子さんは「みかんを食べさせたときに『うまい』と言ったのが最期のことばでした。ほぼ寝たきりの状態で、運動ができないため、対策は難しいです。足をさすってあげたらよかったのではないかと後悔しています」とつらい胸の内を語りました。

小浦さんは料理が好きで、親類の集まりや地元の祭りで赤飯や餅を作っては大勢にふるまっていたということで、長女の孝子さん(61)は「常に台所に立って料理しているような母でした。使っていた蒸し器を受け継いで、母の味に近づけるように頑張りたいです」と涙ながらに話していました。

長男の紀男さん(63)は「知識がない中で、できるかぎりのことはしましたが、寿命が来るまでは生きてほしかったです。地震がなければ、もう少し生きられたと思います」と母への思いを語りました。