旧優生保護法で不妊手術強制 大阪の夫婦の2審 国に賠償命じる

旧優生保護法のもとで不妊手術を強制されたとして、大阪に住む聴覚障害のある70代の夫婦が国を訴えた裁判で、2審の大阪高等裁判所は訴えを退けた1審とは逆に国に賠償を命じました。各地の同様の裁判で、国に賠償を命じる判決は9件目です。

大阪府内に住むいずれも聴覚に障害のある70代の夫婦は、妻が50年前の1974年、長男を出産後、医師や母親から何も説明されないまま、旧優生保護法に基づいた不妊手術を受けさせられたとして、国に賠償を求める訴えを起こしました。

おととし、1審の大阪地方裁判所は、旧優生保護法について憲法に違反すると判断しましたが、妻が不妊手術を受けてから20年以上が経過し、賠償を求める権利はなくなっているとして訴えを退け夫婦側が控訴していました。

26日の2審の判決で大阪高等裁判所の阪本勝 裁判長は旧優生保護法について、1審に続いて、憲法に違反すると判断しました。

また、賠償を求める権利については、「夫婦は障害者に対する社会的な差別や偏見から、訴訟を起こすための情報などへのアクセスは困難な環境だった」と指摘しました。

そのうえで、「原告は優生手術を受けたと証明する診断書の作成を40を超える病院などで断られ、訴訟を起こすことは不能または著しく困難な状態にあった。ようやく手術の診断書を取得した4か月後に提訴しており、賠償を求める権利はなくなっていない」などとして、1審とは逆に夫婦の訴えを認め、合わせて1320万円を夫婦に支払うよう国に命じました。

各地で起こされている同様の裁判では、おととし、別の裁判で大阪高等裁判所が初めて国に賠償を命じて以降、訴えを認める判決が今回を含めて9件言い渡されています。

一方、最高裁判所は去年、上告されている5件について、15人の裁判官全員による大法廷で審理することを決め、統一判断が示される見通しになっています。

原告の女性「霧が晴れたような感じ」

原告の70代の女性が判決のあと会見を行い、手話の通訳を介して、「今まで苦しい闘いでしたが、霧が晴れたような感じで大変喜んでいます。もっと子どもを産んで育てたかったという思いは今もあります。国には悪かったと謝罪を求めたい」と話しました。

また、原告の弁護団の辻川圭乃 弁護士は「戦後最大ともいえる人権侵害に対して、司法が何が正義公平なのかと丁寧に吟味して原告の主張を認め、司法の誇りを示してくれた判決だ」と話しました。

こども家庭庁「判決内容を精査し 適切に対応」

こども家庭庁は大阪高等裁判所の判決について、「判決内容は精査中であるが、今回の判決については国の主張が認められなかったものと認識している。今後の対応については判決内容を精査し、関係省庁と協議した上で、適切に対応してまいりたい」とコメントしています。