“トランスジェンダー 大会参加の議論は40%余”五輪競技団体

ことしのパリオリンピックを前に、NHKが大会で実施される各競技の団体にトランスジェンダーの選手の国内での大会参加についてアンケートを行った結果、議論を「行っている」、または「行う予定」と答えたのは合わせて40%余りでした。

IOC=国際オリンピック委員会はトランスジェンダーなどの選手が国際大会に参加する際に自認する性によって差別しないことなどを盛り込んだ指針を策定していて、専門家は議論を行っていない団体について「選手から対応を求める要望があがるのを待つのでは遅く、トランスジェンダーについて理解するというところからスタートするだけでも事態は変わる」としています。

IOCは3年前の東京オリンピックのあと、トランスジェンダーなどの選手の国際大会への参加資格を作る上での指針を策定しました。

指針では
▽自認する性などによって差別しないこと
▽公平であること など、
基本的な考え方がまとめられ、国際競技団体に参考とするよう求めています。

国際競技団体で議論が始まる中、NHKではことし開催されるパリオリンピックを前に大会で実施される32競技のあわせて33の国内団体を対象に、去年12月までにアンケートを実施し、トランスジェンダーの選手の国内での大会参加について聞きました。

それによりますと、議論を「行っている」、または「これから行う予定」と答えたのは合わせて全体の42%となりました。議論の内容については…。

【議論の内容(複数回答)】
▽「国際競技団体やほかの国や地域の競技団体との情報交換」…64%
▽「トップレベルの選手が参加する大会の参加基準の策定」…29%
▽「一般の選手が参加する大会の参加基準の策定」…29%

一方で「行う予定はない、検討を行っていない」と答えたのは全体の55%でした。その理由は…。

【理由(複数回答)】
▽「選手などから対応を求める要望があがっていない」…78%
▽「議論の材料となる事例、データが少ない」…61%

専門家「理解するところからスタートするだけでも事態は変わる」

中京大学 來田享子 教授

スポーツとジェンダーの問題に詳しい中京大学の來田享子教授は「LGBTの人などへの理解増進法が施行されるなど、トランスジェンダーの人たちに対する権利の拡大が国内でも見え始めている。こうした中でトランスジェンダーの人たちがスポーツの中で参加への要望を声としてあげるようになったのではないか」と話しました。

一方で「『選手などから対応を求める要望があがっていない』などと回答した団体が多いことが気になる。対応を求める要望があがってからでは遅い。まず理解するというところからスタートするだけでも事態は変わってくる」と指摘しています。