小児・「AYA世代」 がん患者 10年後の生存率 初公表

全国のがん拠点病院などでがんと診断された人のデータをもとに国立がん研究センターが小児や10代後半から30代の「AYA世代」と呼ばれる患者の10年後の生存率を初めて集計し、公表しました。

国立がん研究センターは、2011年に全国のがん拠点病院などでがんと診断された36万人余りのデータを分析し、このうち、0歳から14歳の小児の患者や、15歳から39歳の「AYA世代」の患者について治療開始から10年後の生存率を初めて集計しました。

国際的に使われている方法で10年後の生存率を計算すると、
小児がんでは
▼リンパ腫で91.5%、
▼白血病で86.6%、
▼脳腫瘍で71.7%などとなり、
AYA世代のがんでは
▼子宮頸がんと子宮がんが87.7%、
▼乳がんが84.0%、
▼脳腫瘍と脊髄腫瘍が78.2%などとなっていました。

また、5年後と10年後で生存率を比較したところ、小児がんは、生存率の低下はあまりみられませんでしたが、AYA世代のがんは、例えば乳がんで10年後の生存率が6ポイント以上下がるなどがんの種類によって異なっていたということです。

一方、大人も含めたすべての年代の10年後の生存率は、全体で53.5%で、去年発表された前回の結果とほぼ同じとなっています。

国立がん研究センターの石井太祐医師は「これまで小児がんやAYA世代のがんは生存率に関するデータが限られていた。小児がんは治療後の見通しが良いことが裏付けられたが、AYA世代ではがんの種類によって必要な支援もさまざまだ。今回のデータを支援策を考える上で基礎資料にして欲しい」と話していました。

小児がん AYA世代のがん 種類ごとの生存率

小児がんやAYA世代のがんの種類ごとの5年後や10年後の生存率は、以下の通りです。

「実測」は死因に関係なく、すべての死亡を計算に含めた生存率です。

また、「ネット」は、がんの影響をより詳しく把握するために国際的に広く使われている算出方法で計算された生存率で、「ネット・サバイバル」と呼ばれています。

今回、国立がん研究センターでは5年後の生存率については実測の数値だけを公表しています。

小児がん

白血病
▽5年実測:88.4%
▽10年実測:86.2%
▽10年ネット:86.6%

リンパ腫
▽5年実測:92.4%
▽10年実測:91.4%
▽10年ネット:91.5%

脳腫瘍
▽5年実測:73.5%
▽10年実測:71.5%
▽10年ネット:71.7%

神経芽腫
▽5年実測:73.3%
▽10年実測:67.9%
▽10年ネット:68.5%

骨腫瘍
▽5年実測:73.6%
▽10年実測:71.4%
▽10年ネット:71.4%

軟部腫瘍
▽5年実測:75.4%
▽10年実測:73.5%
▽10年ネット:73.7%

胚細胞腫瘍
▽5年実測:96.5%
▽10年実測:95.3%
▽10年ネット:95.6%

その他のがん
▽5年実測:97.1%
▽10年実測:91.1%
▽10年ネット:91.2%

AYA世代のがん

白血病
▽5年実測:72.8%、
▽10年実測:70.1%、
▽10年ネット:70.6%、

リンパ腫
▽5年実測:88.0%、
▽10年実測:86.0%、
▽10年ネット:86.6%、

脳・脊髄腫瘍
▽5年実測:83.5%
▽10年実測:77.8%
▽10年ネット:78.2%

骨・軟骨腫瘍
▽5年実測:68.3%
▽10年実測:62.5%
▽10年ネット:62.9%

軟部肉腫
▽5年実測:75.5%
▽10年実測:70.5%
▽10年ネット:70.9%

胚細胞性腫瘍など
▽5年実測:93.7%
▽10年実測:93.6%
▽10年ネット:94.3%

黒色腫・皮膚がん
▽5年実測:82.9%
▽10年実測:79.5%
▽10年ネット:80.1%

甲状腺がん
▽5年実測:99.4%
▽10年実測:98.8%
▽10年ネット:99.4%

頭けい部のその他のがん
▽5年実測:83.3%
▽10年実測:78.7%
▽10年ネット:79.2%

肺・気管支のがん
▽5年実測:46.3%
▽10年実測:38.8%
▽10年ネット:39.1%

乳がん
▽5年実測:90.0%
▽10年実測:83.5%
▽10年ネット:84.0%

腎がん
▽5年実測:90.3%
▽10年実測:87.6%
▽10年ネット:88.3%

ぼうこうがん
▽5年実測:79.1%
▽10年実測:71.5%
▽10年ネット:72.0%

性腺のがん
▽5年実測:81.0%
▽10年実測:75.4%
▽10年ネット:75.9%

子宮頸がん・子宮がん
▽5年実測:88.6%
▽10年実測:87.2%
▽10年ネット:87.7%

大腸がん
▽5年実測:75.2%
▽10年実測:69.9%
▽10年ネット:70.5%

胃がん
▽5年実測:61.8%
▽10年実測:59.2%
▽10年ネット:59.7%

肝内胆管がん
▽5年実測:43.1%
▽10年実測:36.1%
▽10年ネット:36.4%

すい臓がんなど消化器系のがん
▽5年実測:50.1%
▽10年実測:43.6%
▽10年ネット:43.9%

がんの種類 進行度別のデータ

大人も含めたすべての年代での、がんの種類、進行度別のデータです。

いずれもがんが原因で亡くなった人だけを推定して算出する「ネット・サバイバル」と呼ばれる生存率の値で示しています。

全体の生存率が高い順に示します。

甲状腺乳頭ろ胞がん
▽ステージ1:97.1%
▽ステージ2:89.2%
▽ステージ3:95.0%
▽ステージ4:74.8%
▽全体:90.2%

前立腺がん
▽ステージ1:93.7%
▽ステージ2:95.4%
▽ステージ3:87.3%
▽ステージ4:37.4%
▽全体:85.4%

女性の乳がん
▽ステージ1:94.1%
▽ステージ2:86.6%
▽ステージ3:62.7%
▽ステージ4:16.9%
▽全体:82.9%

子宮体がん
▽ステージ1:91.9%
▽ステージ2:82.6%
▽ステージ3:65.2%
▽ステージ4:17.4%
▽全体:79.6%

子宮頸がん
▽ステージ1:91.6%
▽ステージ2:71.8%
▽ステージ3:52.5%
▽ステージ4:19.0%
▽全体:68.1

腎がん
▽ステージ1:82.8%
▽ステージ2:68.7%
▽ステージ3:55.7%
▽ステージ4:7.3%
▽全体:66.4%

喉頭がん
▽ステージ1:74.2%
▽ステージ2:68.7%
▽ステージ3:41.8%
▽ステージ4:32.4%
▽全体:60.2%

大腸がん
▽ステージ1:80.4%
▽ステージ2:69.8%
▽ステージ3:61.2%
▽ステージ4:11.1%
▽全体:57.9%

胃がん
▽ステージ1:77.6%
▽ステージ2:48.9%
▽ステージ3:32.0%
▽ステージ4:5.9%
▽全体:56.8%

卵巣がん
▽ステージ1:85.5%
▽ステージ2:61.8%
▽ステージ3:29.2%
▽ステージ4:14.6%
▽全体:53.6%

ぼうこうがん
▽ステージ1:65.4%
▽ステージ2:39.1%
▽ステージ3:33.6%
▽ステージ4:13.9%
▽全体:49.8%

腎う尿管がん
▽ステージ1:63.0%
▽ステージ2:49.5%
▽ステージ3:40.2%
▽ステージ4:7.4%
▽全体:34.6%

非小細胞肺がん
▽ステージ1:62.9%
▽ステージ2:28.7%
▽ステージ3:12.8%
▽ステージ4:2.3%
▽全体:31.5%

胆のうがん
▽ステージ1:63.8%
▽ステージ2:16.2%
▽ステージ3:4.2%
▽ステージ4:1.1%
▽全体:21.7%

肝細胞がん
▽ステージ1:34.0%
▽ステージ2:20.5%
▽ステージ3:7.4%
▽ステージ4:1.0%
▽全体:22.6%

肝内胆管がん
▽ステージ1:34.3%
▽ステージ2:21.6%
▽ステージ3:5.0%
▽ステージ4:0.8%
▽全体:11.0%

小細胞肺がん
▽ステージ1:32.5%
▽ステージ2:17.1%
▽ステージ3:8.5%
▽ステージ4:1.2%
▽全体:7.4%

すい臓がん
▽ステージ1:31.4%
▽ステージ2:10.3%
▽ステージ3:3.2%
▽ステージ4:0.6%
▽全体:5.8%

がんの種類ごとの10年後の生存率など詳しい結果は、国立がん研究センターが運営しているウェブサイト「がん情報サービス」で公開されます。