被災地での性加害「ためらわずに相談を」支援団体が呼びかけ

被災地での女性に対する性加害は過去の災害でも繰り返されてきました。

石川県の支援団体は「ひとりで抱え込まず、ためらわずに相談してほしい」と呼びかけています。

また、避難所では生理用品などの物資の保管場所をどうするかなど、女性目線でのサポートも課題になっています。

石川県輪島市では、避難させてもらっていた車の中で10代の女性に対して、複数回にわたって、体をさわるなどのわいせつな行為をしたとして、今月20日、19歳の男が不同意わいせつの疑いで逮捕されました。

警察によりますと、男は女性が家族とともに避難していた車に乗せてもらい、ともに車内で避難生活を送っていたということです。

性暴力の被害者の支援を行う「パープルサポートいしかわ」によりますと、過去の災害でも、避難所や避難先で着替えやトイレをのぞかれたり、わいせつな行為やキスをされたりするなどの被害が起きたということです。

このため、今回の震災で性被害や性暴力を防ぐため、避難所内で注意喚起のポスターを目立つところに貼ることや、着替えや授乳などを行う場所を間仕切りで見えないようにする配慮が重要だと、避難所などの責任者に伝えているということです。

「パープルサポートいしかわ」は「性別や年齢に関係なく、避難所での性被害は起きやすいということを知ってほしいし、みんなで声を掛け合うことを意識してほしい。もし被害にあった場合は、今は大変な状況だからと声をあげにくく感じるかもしれないが、ひとりで抱え込まず、ためらわずに相談してほしい」としています。

避難所や避難先で性被害にあった場合には電話やメールで相談に応じる窓口を設けています。

▽性暴力被害ワンストップ支援センターの電話相談「#8891」（通話料無料）
▽各都道府県警察の性犯罪被害相談電話につながる全国共通番号「#8103」
▽「パープルサポートいしかわ」へのメール相談

七尾市万行で女性の健康についての専門外来も行っている「ねがみみらいクリニック」の根上昌子院長は、発災後まもなくから、七尾市内の避難所を訪問して女性や子どもたちを中心に生活環境の確認や、健康や生活の不安などの聞き取りをしています。

根上院長は、過去の災害では、避難生活の中で女性が性被害にあったケースもあることから、

▽夜のひとり歩きは危険 トイレや電気のない場所には決して1人で行かず、複数で行動すること
▽授乳・女性の着替え・下着を干す場所は、女性どうしで相談して確保すること

などが被害に遭わないためには重要だと伝え、防犯ブザーも配布しています。

根上院長は「性被害の情報も出ていますし、クリニック内では女性と子どもだけの空間で情報交換をしたり、安心して過ごしたりして、少しでも不安があったらささいなことでも相談してほしい」と話していました。

クリニックでは、女性と子ども限定の休憩スペースを設けて、健康や生活に関する相談も受け付けているということです。

一方、根上院長によりますと、避難している人からは、よく眠れないとか、お風呂に入れないことから衛生環境が悪く、外陰部のかゆみなどといった悩みが多く聞かれるということです。

そのため、避難所訪問の際には、東日本大震災で避難所の支援にあたった助産師らが作ったチラシを配布し、参考にしてもらっています。

チラシには、
お風呂に入れない状況でプライベートゾーンを清潔に保つためには、
▽トイレのあとは前から後ろにふくこと
▽アルコールを含まないウェットティッシュや、赤ちゃんのおしりふきをで拭くこと
▽これらがない場合には、ティッシュや脱脂綿をぬらして活用すること
▽下着を交換できない場合は、おりものシートを活用すること
などのアドバイスが書かれています。

また、避難所では生理用品などの物資があっても、男性の目が気になって必要なものを取りに行きにくい状況もあり、保管場所を分けて置くことも重要だと指摘しています。

「ねがみみらいクリニック」では第1、第4木曜日と毎週日曜日の休診日、女性や子どもに限定して2階のスペースを開放しています。県外から届いた生理用品やおむつ、サプリメントなどを無料で配布していて、訪れた人たちが必要な物資を持ち帰っていました。

25日は近くに住む女性などおよそ10人が訪れ、お茶を飲んでくつろぎながら断水が続く中での生活の悩みを話すなど思い思いに過ごしていました。

断水した自宅で生活を続けている60代の女性は「先生とお話しするだけで安心します。洗濯や入浴で遠くに行っていて生活費がひっ迫するので、こうした支援があると足しになります」と話していました。