日本経済“デフレを脱却” 判断分かれる 国内100社アンケート

NHKが日本経済の現状について「デフレを脱却した」とみているかどうか、国内の主な企業100社にアンケートを行ったところ、「脱却した」が21社、「脱却していない」が36社と、判断が分かれました。

NHKは先月20日から今月15日にかけて、国内の主な企業100社を対象にアンケート調査を行い、すべての企業から回答を得ました。

この中で日本経済の現状について「デフレを脱却した」とみているかたずねたところ、
▽「脱却した」が21社、
▽「脱却していない」が36社と判断が分かれました。

このほか
▽「わからない」が26社、
▽「無回答」が17社でした。

「脱却した」と答えた企業に理由を複数回答でたずねたところ、
▼「日銀の目標としている2%を超える物価の上昇が続いている」が13社、
▼「デフレに逆戻りする可能性が低い」が6社、
▼「物価上昇にあわせて賃金が十分に上昇している」が3社でした。

一方「デフレを脱却していない」と答えた企業にその理由を複数回答で聞いたところ、
▼「物価の上昇に賃上げが追いついていない」が28社、
▼「コスト高による悪いインフレだから」が11社、
▼「物価が上昇しているが景気が良くない」が7社、
▼「デフレに逆戻りする可能性がある」が4社でした。

政府は、「デフレ」=「物価が持続的に下落する状況」から完全脱却することを目指しています。

実施賃金のマイナスが続く中、消費の節約志向が強まって再びデフレに陥りかねないとも指摘されていて、ことしの春闘ではデフレからの完全脱却につなげられるかが焦点となります。

「デフレを脱却した」と回答した大手企業は

「デフレを脱却した」と回答した大手企業からは、物価の上昇や人手不足、それに価格転嫁に対する意識の変化などを理由にあげる声が聞かれます。

このうち、仙台市に本社を置く生活用品メーカーの「アイリスオーヤマ」はことし4月に定期昇給分とベースアップ分をあわせておよそ5%の賃上げを実施する方針です。

会社によりますとベースアップは5年連続です。

会社では、デフレを脱却したとみる理由の1つに深刻な人手不足を背景にした賃金の上昇などがあるとしています。

大山健太郎会長は「大企業だけでなく中小企業も人手不足という環境要因で賃金を上げざるを得ない。収益力がなくても賃金を上げない限り、人を雇用できない状況だ。自社でも人口構造が変化する中で若い社員をより多く採用したい。人的投資を積極的にすることで競争力のある商品やサービスを提供したい」と話しています。

さらに、円安などを要因として海外から輸入する資源や食料の価格が上がったことや、価格転嫁に対する企業や消費者の意識の変化も、「デフレを脱却した」と回答した理由だといいます。

大山会長は「『値上げをするとシェアがとられるのではないか』という恐怖感があったが、賃上げが業種全体に広がったことでシェアが落ちる不安感が比較的少なくなって、値上げをしやすい環境になっている」と話しています。

また、「国内で生産するよりも中国からの輸入の方がコストが安い状況が続いた。中国からの調達品が低コストで入ってくることが、『失われた30年』のデフレ要因の一番大きな構造だった」と指摘します。

一方で自社やグループのビジネスでは、主力の家電事業で売り上げが減少しているといいます。

このため、輸出が増加している電子レンジで温める「パックごはん」の製造・販売や、人手不足で法人用の需要拡大が見込まれるロボット掃除機などの成長分野の事業を強化していくとしています。

大山会長は賃上げの動きが非正規雇用で働く人など幅広い層に広がることが今後の課題だとしたうえで「本来、消費をしたい層に賃金が回るということは、その分だけ消費が増える。ものづくりメーカーとしても将来的に明るい側面だろうと考える。適正な賃金のなかで適正な消費をするそういうムードが少しずつ広がってきた」と話しています。