石川県内 半数余が「自主避難所」中長期的な医療支援など課題

能登半島地震の発生から3週間余りがたつ中、石川県内では、いまも1万人余りが避難所で生活を続けていますが、被災した13の市と町にある300か所余りの避難所のうち、自治体ではなく、地域の人たちがみずから運営する「自主避難所」が、半数余りにのぼることが、県への取材で分かりました。「自主避難所」は、公的な支援などが行き届きにくく、中長期的な医療支援の態勢に懸念があり、どのように支えていくのかも課題となっています。

災害時に、各自治体は災害対策基本法に基づいて、建物の耐久性や立地条件などをもとに、学校などの公共施設を「指定避難所」として指定し、自治体の職員を派遣して運営にあたっています。

一方、山間地で避難が難しかったり、指定避難所に人が殺到して入れなかったりした場合などに、地域の人たちが「自主避難所」を設けて運営するケースもありますが、災害の発生直後、行政が場所を把握できないうえ、自治体の職員が派遣されないことが多く、公的な支援などが行き届かないことが問題となっています。

今回の地震では、1月21日の時点で、被災した13の市と町に合わせて327か所の避難所が開設されていましたが、このうち半数以上にあたる175か所が「自主避難所」だったことが県への取材で分かりました。

特に輪島市では、1月11日の時点で、167か所の避難所のうち8割を超える134か所が「自主避難所」で、中には山間地の電気が通じていない農業用ハウスなどが「自主避難所」になっているケースもありました。

NHKがこうした「自主避難所」に取材したところ、災害の発生後、しばらくの間は、
▽食料品や飲料水などの支援物資が全く届かなかったり
▽衛生状態が極端に悪化して、新型コロナなどの感染症がまん延したりしている事例が、複数確認されました。

現在は支援物資が届くようになってきているものの、一時、インフルエンザの感染者が10人以上出た場所があるなど、中長期的な医療支援の態勢に懸念もあり、こうした「自主避難所」をどのように支えていくのかも課題となっています。

「自主避難所」にも適切な支援を

内閣府によりますと「自主避難所」は、災害時に自治体が開設する「指定避難所」や支援が必要な人たちのための「福祉避難所」などと異なり、災害対策基本法などで位置づけられていません。

能登半島地震の被災地では避難者数が非常に多いことから、住民たちが自主的に集まって避難所として運営されるようになったとみられますが、「指定避難所」などと異なり食料や飲料水、毛布など避難生活に必要な物資の備蓄が十分でなく、自治体などからの支援が行き届かないおそれがあります。

内閣府では「自主避難所」も災害救助法で国が費用負担する避難所になるとして、県や自治体に対し適切な支援を行うよう呼びかけています。

専門家 “行政は自主避難者の状況や事情くみ取る努力必要”

防災心理学が専門で兵庫県立大学の木村玲欧教授は、自主避難所について、「今回の災害でも、山がちなところなど交通の便の悪さや、体調が悪いなどの理由で自主的に避難している人がたくさんいるが、さまざまな事情があるので、いたずらに集約ができるわけではない。自主避難している人たちの状況や、何を必要としているのかなどは行政からは見えにくいので、今後もローラー作戦などで、事情を細かくくみ取り続ける努力が必要になってくる」と指摘しています。

そのうえで、「健康への影響などを考えると、中長期的には自主避難所にとどまり続けることは難しいので、いずれは仮設住宅などに移動することが必要となってくる。行政には、被災者の方々と対話を続けながら今後の道筋を示していく必要が出てくる」と訴えています。