石川 被災したクリニック 医療用車両を臨時の「診察所」に

今回の地震で被災した石川県内の医療機関の多くは、発生から3週間余りがたった現在も診療や患者の受け入れが難しくなっています。建物が被害を受けた石川県輪島市のクリニックでは、借り受けた医療用の車両を活用して、臨時の「診療所」を開設し被災した人たちの診療に当たっています。

輪島市の医師、小浦友行さんは、市中心部の「朝市通り」の近くでクリニックを経営していますが、地震によって入り口の天井に穴が開くなどの被害があったため安全が確認されるまで、建物の中で診療することができずにいます。

小浦さんはかつて、石川県内の別の総合病院で勤務医として働いていましたが、生まれ育った輪島市で医療活動をしたいと、数年前に地元に戻り、1年ほど前にこのクリニックを開いたばかりでした。

小浦さんは「朝市通りで生まれ、いろいろな人たちに愛されて育ったので、お世話になった人たちにいつかきっと恩返しがしたいという思いでした。ようやくクリニックをスタートさせて、地域の人たちのために働くことに手応えを感じていたところだったので、どうしていけばいいのか、私自身も不安です」と話していました。

みずからも被災した一方、かかりつけの患者がいる小浦さんは、地域の人たちへの診療をできるだけ続けたいと考え、医療用の車両を借り受けて臨時の「診療所」として開設しました。

クリニックの駐車場に設置しているこの「診療所」では、体調を崩した人の診察を行うほか新型コロナウイルスなど感染症の検査もできるということで、23日は発熱の症状を訴える人や持病のある人などが訪れ診察を受けていました。

診療の受け付けは当面の間、午前10時から正午までと、午後2時から4時までということで、小浦さんは「被災地の医療を支えるには、まずは自分のような医師がかかりつけ医として、地域の患者やその家族にしっかりと対応することが最も重要だと思っています。長引く避難生活に疲れ果てた状態の人も多く、心のケアも大切にしながら診療を続けたい」と話していました。