米大統領選 共和党 ニューハンプシャー州の予備選投票始まる

秋のアメリカ大統領選挙に向けた野党・共和党の候補者選びの第2戦、東部ニューハンプシャー州の予備選挙の投票が日本時間の23日夜8時から始まりました。トランプ前大統領とヘイリー元国連大使の2人の争いで、トランプ氏が全米の支持率で大きくリードするなか、ヘイリー氏が勢いを示し、選挙戦に踏みとどまれるのかが焦点です。

共和党の大統領候補者選びの第2戦、ニューハンプシャー州の予備選挙は、一部を除いて、23日朝6時、日本時間の23日夜8時に投票が始まりました。

最大都市、マンチェスターの投票所では責任者の男性が「投票開始」と告げると、列を作って待っていた有権者たちが会場に入り、1票を投じていました。

共和党の大統領候補者選びはほとんどの候補が撤退し、トランプ前大統領とヘイリー元国連大使の2人の争いとなっています。

政治情報サイト「リアル・クリア・ポリティクス」によりますと、ニューハンプシャー州での世論調査の平均は、22日時点で
▽トランプ氏の支持率が54.9%
▽これをヘイリー氏が36.7%で追う展開となっています。

全米の支持率で大きくリードするトランプ氏は、初戦のアイオワ州でほかの候補に大差で勝利しました。

ヘイリー氏がここで勝利するか、トランプ氏に迫る結果を出せなければ選挙戦を続けることが難しくなり、トランプ氏が事実上、共和党の大統領候補者の指名を確実にするとの見方も出ています。

ヘイリー氏がここで勢いを示し、選挙戦に踏みとどまれるかが焦点です。

ニューハンプシャー州の予備選挙は、多くの地域で日本時間の24日午前、投票が締め切られ、開票が始まる予定です。

ヘイリー氏 急速に支持広げる

ニューハンプシャー州の共和党の予備選挙で急速に支持を広げているのが、ニッキー・ヘイリー元国連大使です。

2か月前の去年11月23日時点の支持率は
▽トランプ氏が45.7%
▽ヘイリー氏が18.7%で
その差は27ポイントでした。

しかし、1月22日時点で
▽トランプ氏の支持率が54.9%
▽これをヘイリー氏が36.7%で
その差は18.2ポイントとなっています。

ヘイリー氏 ニューハンプシャー州にヒトと資金を大量投入

ヘイリー氏が支持を広げる背景にあるのが、共和党穏健派が多いと言われるニューハンプシャー州にヒトと資金を大量に投入する選挙戦略です。

アメリカの広告調査会社「アドインパクト」によりますと、ニューハンプシャー州でヘイリー陣営や支援者が費やしたテレビ広告費は2640万ドルで、2位のトランプ氏の1270万ドルの2倍以上です。

共和党穏健派の有力政治家として知られる地元、スヌヌ知事の支持を獲得し、知事と二人三脚で州内各地を回り、支持を訴えてきました。

1月19日、最大都市マンチェスターで行われた集会では、自身が共和党の大統領候補に指名され、バイデン大統領と大統領選挙を戦った場合の世論調査に言及し「私はバイデン氏に17ポイントの差をつけて勝利できる」と述べ、「勝てる候補だ」と強調。

さらに、国連大使を務め、外交経験も豊富だとしたうえで「ウクライナが勝利するために必要な武器を供与すべきだ」と述べ、トランプ氏が掲げる「アメリカ第一主義」とは一線を画す「国際協調」を打ち出しました。

また、世論調査の支持率で首位を走るトランプ氏に対しては「混乱がついて回る。あと4年も混乱が続けば、われわれは生き残れない」と述べるなど、このところ、批判を強めています。

そして、トランプ支持者の切り崩しも図っています。

その切り札として期待しているのが、2年前の中間選挙でトランプ氏の支持を得て上院議員選挙の共和党候補にもなった退役軍人のボルドゥク氏です。

ボルドゥク氏は選挙広告の中で「私は常にアメリカ第一主義だが、ヘイリー氏を支持する。ヘイリー氏は国境管理にも中国にも厳しい姿勢で臨み、現実的な政策もある」と述べ、ヘイリー氏への支持を訴えています。

無党派・民主党支持者に投票呼びかけも

ヘイリー氏を支援する政治団体には、無党派や民主党支持者に対し、有権者登録の登録先を変更したうえで、ヘイリー氏への投票を呼びかける団体もあります。

ニューハンプシャー州の制度では民主党や共和党に登録している人はそれぞれの政党の予備選挙でしか投票できません。

ただ、事前に「申告しない」、いわゆる無党派として登録した人はどちらの政党で投票するかを選挙の当日に決めることができます。

去年7月に設立された団体「プライマリー・ピボット」は、トランプ氏に勝たせてはならないとして、ネット上などで、無党派や民主党支持者に対し、この制度を活用し、登録先を変更するよう呼びかけてきました。

ニューハンプシャー州の州務長官によりますと、去年12月28日の時点で有権者登録をした人のうち
▽民主党で登録した人はおよそ30%
▽共和党がおよそ30%で、きっ抗しています。

一方、
▽「申告しない」は最も多い、およそ39%となっています。

「プライマリー・ピボット」のメンバーは、予備選挙前の最後の日曜日の21日、ニューハンプシャー州の最大都市マンチェスターの中心部で有権者に対し、「トランプ氏に勝利し、民主主義を守るためだ」としてヘイリー氏への投票を呼びかけていました。

団体のケネス・シェフラー事務局長は「われわれはトランプ氏がアメリカに突きつけている脅威に深刻な懸念を抱いている。現時点では、ヘイリー氏が唯一、トランプ氏の大統領候補の指名獲得を阻止できる候補だと考えている」と話していました。

そのうえで「われわれは、ここニューハンプシャー州で“申告しない”とした有権者が広く投票に参加することでヘイリー氏に勝機があるとみている。ヘイリー氏がトランプ氏を打ち負かすことができるよう可能な手を尽くしたい」と話していました。

さらに「もし、ヘイリー氏が火曜日(23日)によい結果を示すことができれば、トランプ氏の圧勝という“物語”は変化し、人々はヘイリー氏に注目し始めるだろう」と述べ、重要な局面になると強調しました。

登録先を変更した民主党支持者も

こうした呼びかけが行われる中、1月19日、マンチェスターで行われたヘイリー氏の集会に参加したヘラ・ロスさん(69)も民主党支持者でありながら、登録先を変更し、共和党の予備選挙に参加してヘイリー氏に投票することを決めた1人です。

ロスさんは「所属政党」の欄に「申告しない」と記入した有権者登録の用紙のコピーを示しながら「私は根っからの民主党員だ。“申告しない”に変えようと考えたのは、この50年で初めてだ」と話していました。

そして「目的はトランプ氏の大統領候補の指名獲得を阻止することだ。トランプ氏は2021年1月6日に反乱を扇動した。私たちはもっと真剣に考える必要があり、民主主義のために闘わなくてはならない。これが私が自分の1票でやろうとしていることだ」と話していました。

そのうえで「ヘイリー氏はとても強い候補者だ。国を一つにまとめ上げることを望み、分裂を望んでいない。ヘイリー氏とその政策に魅力を感じ、トランプ氏を打ち負かすためヘイリー氏に投票する支持者が大勢いることを望んでいる」と話していました。

ニューハンプシャー州 民主党予備選は異例の事態に

今回、ニューハンプシャー州では与党・民主党の予備選挙も同時に行われますが
▽最有力候補であるバイデン大統領が参加を見送ったうえ
▽本来選挙の結果に応じて候補者が獲得するはずの「代議員」は配分されないという異例の事態になっています。

これは民主党全国委員会が南部サウスカロライナ州で2月3日に行われる予備選挙を党の候補者選びの初戦とすると決定したことによるものです。

ニューハンプシャー州の予備選挙は、前回までは民主党でもアイオワ州の党員集会に続く第2戦となっていましたが、党の全国委員会はバイデン氏の意向も受け、「多様性を重視すべき」として州の人口のおよそ9割が白人のニューハンプシャー州ではなく黒人の人口が多いサウスカロライナ州を初戦とすることを決めました。

バイデン氏は前回2020年の候補者選びで、初戦のアイオワ州では4位、第2戦のニューハンプシャー州では5位と出遅れた後、サウスカロライナ州で勝利したのをきっかけに勢いに乗り、党の指名を獲得した経緯があります。

党の全国委員会の決定に反発したニューハンプシャー州の民主党は従来どおり、ほかの州に先駆けて予備選挙を行うと決めましたが、全国委員会は決定に違反したことを理由にニューハンプシャー州の結果を受けた代議員の配分は行わないとし、今回の予備選挙を「無意味だ」としています。

また、バイデン氏は「全国委員会の決定を尊重する」としてニューハンプシャー州の予備選挙への届け出を見送りました。

AP通信など複数のメディアによりますと、投票用紙に記載された候補者の一覧にバイデン氏の名前はないものの、有権者が自分でバイデン氏の名前を書いて投票することは可能だということです。