【解説動画】被災した方にどう接すれば 心のケア専門家に聞く

被災した地域では厳しい状況が続いていますが、大切なことの1つに、被災した方々の「こころのケア」があります。

身近な人が被災したときどう寄り添ったらいいのか。

今回の地震でも現地でケアにあたった日本赤十字社医療センターの大野芳江さんに話を伺いました。

※1月23日正午のニュースで放送した内容です。
※動画は7分8秒。データ放送ではご覧になれません。

Q1 現地の様子は どんな声が聞かれたか

大野さんは日本赤十字社の救護班の一員として、今月5日から7日に、珠洲市内の避難所の支援にあたったと言います。

避難所の診療所には手の爪に泥が詰まったままの人や家から着のみ着のままで避難してきた人もいたということです。

Q2 現地で考えたこと

大野さんはこうした厳しい状況を目の当たりにして、被災した人は自分の気持ちを言葉にすることがいまはできていないかもしれないと感じたといいます。

Q3 被災した方の心の変化 どう接すれば

大野さんによりますと、災害による被災者のストレス反応は時間の経過と共に変化をしていくといいます。

最初は「急性期」
発災直後から数日の時期です。

被災者は不安や恐怖感が強く、怒りや悲しみでいっぱいになることもあるといいます。合理的に考えることができず、判断能力も低下します。イライラする、落ち着きがなくなる、コミュニケーション能力が低下するという特徴もあります。

次が「反応期」
発災後1週間から6週間で、抑えていた感情が湧き出す時期です。

生き残ったことを実感し、救われたと思うと同時に罪悪感が襲ってくることもあるといいます。自分が置かれたつらい状況がわかってきますが、被災現場に戻ることを恐れ、アルコールの摂取量が増えることもあります。

最後が「修復期」
発災後1か月から半年の時期です。

悲しみや寂しさが募り、不安を感じることもありますが、混乱した感情が修復され始め、将来の見通しに目を向けられるようになる時期だといいます。この「修復期」のあと、発災から半年以降は「復興期」へ移行していきます。

大野さんはいまは「反応期」にあたり、抑えていた怒りの感情が出てくるころだとしていますが、その怒りの裏にはつらさなどさまざまな感情もあるとしたうえで、被災者や自分の友だちなどが反応期のような状態であればまずは話を聞くことが大切になるとしています。

Q4 ケアに関わっても大丈夫か

大野さんは被災者に話を聞くときに、発せられた言葉に対し『評価』で返すのではなく、「そうなんだね」と『共感』して耳を傾けることが大切だとしています。

そのうえで、一人ひとり環境も状況も違うので、どんなことが相手が求めているのか見極めて、1つの手段にこだわらずに専門家につなぐことも意識しながら、支援をしてほしいとしています。

Q5 被災した方に接するポイント

日本赤十字社では被災者に接するポイントとして、以下の7つをあげています。

▽自己紹介をする
▽こころのケアを前面に出さない
▽共感的に傾聴する
▽相手の困りごとに合わせた実際に役立つ支援を心がける
▽相手の主体性を損なわない活動を心がける
▽専門家などへの紹介が必要かを見極める
▽倫理的配慮、守秘義務に留意する

大野さんは「ケアをしに来ましたという態度では無く、まずは話を聞かせてほしいと思うことが重要です。そのためには、目線の高さを同じ目線か被災者の目線よりも下からお話しすることも大切です。今後、避難生活が長期化する中で自ら被災しながらも避難所の運営をするなど被災者を支援する人たちのこころのケアもより一層必要になってくる」と話していました。