政労使会議 岸田首相 去年上回る賃上げ実現に向け協力を要請

政府と経済界、労働界の3者による「政労使会議」が開かれ、岸田総理大臣は去年を上回る賃上げの実現に向けて協力を要請しました。また中小企業の賃上げも不可欠だとして、人件費の価格転嫁対策に全力で取り組む考えを強調しました。

「政労使会議」の開催は去年11月以来で、22日は、岸田総理大臣と関係閣僚のほか、経済界からは経団連の十倉会長らが、労働界からは連合の芳野会長らが出席しました。

この中で岸田総理大臣は「所得増と成長の好循環による『新たな経済』へ移行するチャンスをつかみ取るためには、物価上昇を上回る構造的な賃上げを実現しなければならない」と述べました。

そのうえで「経済界にはことしの春季労使交渉について、物価動向を重視し、去年を上回る水準の賃上げをお願いする。日本経済がデフレに後戻りするか、デフレ完全脱却の道に向かうかの正念場だ」と述べ、協力を要請しました。

また、中小・小規模企業の賃上げも不可欠だとして、人件費にあたる「労務費」の価格転嫁対策に全力で取り組む考えを強調するとともに、関係省庁による連絡会議を設置して、取り組みをフォローアップしていくと説明しました。

さらに、賃上げを地方にも波及させるため、「地方版政労使会議」の開催を積極的に進めるよう関係閣僚に指示しました。

連合 芳野会長「賃上げは去年よりもことしのほうが重要」

連合の芳野会長は記者団に対し「賃上げは去年よりもことしのほうが重要だという認識を政労使でより一層確認できた。労働組合のない企業が非常に多い中で、賃上げを実効あるものにしていくためには、政労使会議などで発信するのは非常に効果的だ」と述べました。

そのうえで「連合としても去年以上の成果を出していくために、取り組みを徹底していきたい。また、企業側の労務費も含めた価格転嫁は非常に重要だが、一方で『いいものはそれなりの値段がする』と消費者の立場としても認識していかなければならない」と述べました。

経団連 十倉会長「デフレ完全脱却の実現を」

政労使会議の後、経団連の十倉会長は記者団に対し「経団連の方針にある官民連携でのデフレからの完全脱却の実現をぜひやろうと言った。とくに今、インフレが注目されているので物価を最重視して、物価上昇はできるだけベースアップで対応しようと呼びかけていることも報告した」と述べました。

そのうえで「一番大事なのは従業員のおよそ7割を占める中小企業で、地方を含めて価格転嫁が進まないと社会全体の賃上げは起こらない。いいものにはしっかり値がつくという適切な価格付けをすることを社会的な規範まで高めないといけない」と述べ、人件費などを含めた増加分の価格転嫁を進めていくことが重要だという認識を改めて示しました。

日商 小林会頭「臆することなく価格交渉を」

政労使会議のあと、日本商工会議所の小林会頭は中小企業の賃上げには生産性の向上に加えて原資を生み出すための価格転嫁が必要だとしたうえで「大企業の経営トップは中小企業を向いて交渉し、中小企業は臆することなく交渉してもらいたい。消費者に直面している中小企業が値上げをする勇気を持てるよう、いい製品やサービスには値がつくというマインドを、ぜひ社会に拡大していきたい」と述べました。