被災地のニーズの変化は?3週間の検索ワード分析で見えたもの

NHKとLINEヤフー研究所が能登半島地震の被災地でより多く検索されている特徴的なことばを分析したところ、「断水」をはじめとした避難生活に密接に関連することばの検索頻度が時間の経過と共に変化していることがわかりました。

検索ワードの変化は被災地のニーズを反映しているものとみられ、引き続きニーズに応じた支援が必要な状況が続いています。

検索ワードをビッグデータで分析

この分析は、LINEヤフーが個人が識別できない形で集計した検索ワードのビッグデータを使って行ったもので、対象としたのは石川県の▽輪島市、▽珠洲市、▽能登町、▽穴水町で、1月1日から20日までに検索されたことばです。

分析の結果は

表では、検索頻度が高かった上位15番目までのことばを表示していて、
▽青色が「断水」、
▽紫色が「生活再建や2次避難」、
▽緑色が「道路」、
▽黄色が「電気・エネルギー」と、
4つの分類に関連するワードに色づけをしています。

(※「地震」や「地名」など検索頻度が恒常的に高いものや「個人の氏名」といったワードは除外しています)

ここからは4つの分類ごとに詳しく見ていきます。

「断水」ワードに変化

対象地域のほぼ全域で続いているのが「断水」です。

地震の翌日から検索が続いていますが、6日以降になると「トイレ」の検索が見られました。

環境省によりますと、18日には石川県内の避難所などではおおむね1日1回以上、し尿を回収できる体制が整えられたとしていて環境の改善が進められています。

1週間からは「風呂」「入浴支援」

さらに、地震から1週間となる8日からは「風呂」「入浴支援」といったことばが上がりました。

断水が続く中、各地で自衛隊の入浴支援が行われているほか、地域によっては地元の銭湯が井戸水や地下水を使って再開するなど、現在も入浴支援のニーズが高い状況が続いています。

2週間後は「コインランドリー」

2週間が過ぎると「コインランドリー」が上がりました。

SNSなどでは、「水道が復旧している遠方の地域まで往復、数時間をかけて洗濯に出かけている」とか、「移動手段のない高齢者は十分に洗濯ができていない」、といった投稿もみられます。

一部の地域では避難所に洗濯機が設置されるなど支援も始まっていますが、ニーズが高くなっています。

こうした状況を受けて、避難所の洗濯物を引き受ける民間の支援も始まっています。

民間の「洗濯支援」も

長野県と東京都、神奈川県でクリーニング店を営む人たちが有志でつくる災害洗濯支援チーム「DSAT」は今月20日から断水が続く石川県七尾市の避難所となっている小学校で活動を始めました。

避難所では希望者の洗濯物を引き受けると協力先の白山市のクリーニング工場で洗濯をしたあと、再び避難所まで運び返却しています。

被災地では水道が復旧した地域に車で移動して洗濯をしている被災者もいるということですが、特に高齢者や小さな子どもがいるひとり親家庭などでは移動自体が難しく、ニーズが高いということです。

チームは「クリーニング師」の資格を持つメンバーからなるということです。

左 が「DSAT」代表 中村祐一さん

「クリーニング師は公衆衛生の向上を担う国家資格ですので、被災者に少しでも日常の生活を取り戻して欲しいと支援を決めました。今後は支援先を増やすとともに協力者や洗濯物の受け入れ先を増やすなど持続可能な活動としていきたい」
(DSAT代表 中村祐一さん)

「生活再建や2次避難」検索に動き

生活再建に関することばは発災から1週間となる8日目以降になると「罹災証明」や「仮設住宅」が見られました。

また、14日以降は「2次避難所」が上がっています。

当面の落ち着いた生活環境を確保するためホテルや旅館などに移る「2次避難」が始まる中で、今後の避難生活を見据えた検索の動きとみられます。

常に検索頻度が高いのは

このほか、発災直後から続くのが、「通行止め」や「のと里山海道」などの「道路」関連のワードです。

今も能登半島北側の国道など被害の大きい道路では復旧作業が進められていますが、復旧した道路が再び通行できなくなるなど各地で不安定な状態が続いていて最新の道路情報を求める動きと見られます。

ガソリン」「停電」などの「電気・エネルギー」関連も検索が続いています。

停電は21日の時点で分析の対象とした自治体であわせて6000戸あまりとピーク時よりも解消が進んだものの多くの被災者が電力が不安定ななかで生活を続けています。

発災後には暖房や充電の必要などから「ガソリン」の検索頻度が多くなっていましたが、ここ数日も再び上がり、道路の復旧が進んだことで移動が可能になったことも背景のひとつと見られます。

分析について

LINEヤフーが個人を識別できない形で集計した検索ワードのビッグデータをもとに機械学習し対象地域での検索ワードと、全国で検索されたワードの差を数値化。

対象地域で全国と比べてより多く検索されたワードを1日ごとに抽出・分析した。