【解説動画】避難生活での“誤えん” 少しの工夫で防ぐ方法は

避難所生活が長期化する中、食事や飲み物をのどに詰まらせる「誤えん」への対策が課題となります。

輪島市の福祉避難所などで、口の中の健康状態を保つ「口腔ケア」や食事の姿勢についての指導にあたっている訪問歯科医の一瀬浩隆 歯科医に対策のポイントを聞きました。

避難者の現状は

一瀬歯科医によりますと、発災から3週間たち、現地では停電が解消されて店舗などが再開しているところもある一方で、断水が続いていることで歯磨きなどの「口腔ケア」や入浴で体をきれいにすることが十分に出来ない環境だといいます。

さらに、避難生活が続き高齢者が体を動かさなくなると、体の機能や体力が落ち「誤えん」や窒息を起こしやすい状況になる懸念があるとしています。

【誤えんを防ぐために1】食事をとる時の姿勢

一瀬歯科医は、「誤えん」を防ぐためのポイントとして、安定した姿勢で食事をすることが重要だとしています。

避難所では床や段ボールベッドの上などで、足を伸ばす「長座」という体勢でご飯を食べることもありますが、「長座」の姿勢は体が不安定になり、上半身が後ろに倒れやすくなるため、首と頭が不安定になってあごが上がってしまい、飲み込みを悪くする1つの原因になってしまうといいます。

このためできれば椅子に座って安定した姿勢で食事をすることが大事だといいます。

具体的には
▽あごはなるべく少し引いて、
▽ひざは足が安定するようにできるだけ90度にして、
▽足の裏がしっかり地面につくことで、
舌の力が上がり、口の機能を上げることができるということです。

椅子がなく段ボールベッドなどに腰掛ける場合、足の裏をつけられるよう足置きを作るのも効果的だとしています。

【誤えんを防ぐために2】 飲む時のひと工夫

「誤えん」を防ぐためには、飲み物を飲む容器も重要だといいます。

ペットボトルなど深さがある容器だと最後まで飲みきるためには頭を傾けてあごを上げる必要がありますが、一瀬歯科医によると、あごが上がってしまうと喉の筋肉が張ってしまい「誤えん」を引き起こしやすくなってしまうとしています。

このためペットボトルや細くて長いコップよりも、湯呑みのような比較的浅いコップやお椀などを使ってほしいとしています。

また、避難所でも実践できる方法として一瀬歯科医が紹介してくれたのは紙コップの飲み口の一部を半円状にカットする方法です。

カットした方を上 (鼻側)にして使うと、鼻に縁があたらないので、上を向かずまっすぐ前を向いた姿勢で飲むことができます。

「誤えん」を防ぐためにみんなで心がけを

能登半島地震では、避難所で支給された食事をのどに詰まらせて亡くなった高齢の女性について災害関連死の疑いが出てきています。

一瀬浩隆 歯科医
「食事の前には顔の筋肉や口を動かす体操をすることや、会話をすることも口の筋肉をほぐすことにつながります。避難者が孤立しないようにみんなで声を掛け合って心掛けて欲しい」