気象・災害

能登半島地震3週間 健康保つ支援が課題 住宅再建に心配の声も

元日に起きた能登半島地震から22日で3週間です。

震度7の揺れを観測した石川県では、今も1万5000人以上が避難所に身を寄せているほか、断水も4万9000戸余りで続いていて、冷え込みが厳しさを増す中、健康状態を保つための支援が課題となっています。

一方、住宅の再建に向けて耐震化を検討する人たちの間では、費用をどう工面するか心配する声があがっています。

目次

《石川県》1万5000人以上が今も避難所に

震度7の揺れを観測した石川県では、能登地方を中心に大きな被害が出ています。

石川県内では、これまでに232人の死亡が確認され、22人の安否がわからないままです。

住宅の被害も次第に明らかになっていて、21日午後2時の時点で3万4000棟余りで被害が確認されています。

インフラにも大きな被害が出て、今も4万9000戸余りが断水していて、ほぼ全域で断水が続いている6つの市と町では、早いところでも仮復旧が2月末になる見込みです。

集落の孤立状態は実質的に解消しているとみられますが、道路の状況が悪く、引き続き支援が必要な集落もあります。

住民の避難生活は長期化する見通しで、21日午後2時の時点で1万5656人が避難所に身を寄せています。

こうした中、石川県では23日から24日にかけて大雪になるところがあり、冷え込みが厳しさを増す見込みです。

一部の避難所では感染症が広がっていて、避難生活を続ける人たちの健康状態を保つための支援が課題となっています。

避難長期化 きめ細かな支援が課題

石川県では、能登半島地震から3日後の今月4日には3万4000人を超える人が避難所に避難しました。

22日午後2時時点で避難している人は1万5378人となっています。

県は、より安全な地域にある旅館やホテルなどへの避難を進めるとしていますが、こうした2次避難をしている人は2850人と、全体の18%にとどまっています。

住み慣れた場所を離れることに不安を抱く人がいることに加え、2次避難所の中には家族が一緒に入れないところや、食事が提供されないところがあることなどが要因になっているとみられます。

輪島市によりますと、これまでに2568人が2次避難を希望していますが、半数以上の1395人は行き先が決まらないままで、壊れた自宅や車での生活を余儀なくされる人も多くいます。

また、介護が必要な高齢者や重度の障害者の中には、生活環境が変化すると体や心に大きな負担がかかり、2次避難が難しい人もいます。

さまざまな理由で被災地での生活が長期化するなか、体調を崩す人も出ていて、被災した人たちの状況に応じたきめ細かな支援が課題となっています。

断水続く 復旧は4月以降の地域も

石川県によりますと、21日午後2時現在、8つの市と町のあわせて4万9000戸余りで断水が続いていて、このうち輪島市、珠洲市、穴水町、能登町、七尾市、志賀町は、ほぼ全域で断水しています。

また、羽咋市、内灘町は、一部の地域で断水となっています。

断水が続いていることについて県などでは、▽財源が限られる中、老朽化が進む水道管の耐震対策が進んでいなかったことに加え、▽それぞれの自治体には、全国から応援の職員などが派遣されているものの、水道管だけでなく、浄水場や配水池の被害も広範囲にわたり、調査や復旧の作業に時間がかかっていることが主な要因だとしています。

ほぼ全域が断水している自治体については、七尾市は、全世帯の7割に対して県が水道水を供給し、ほかの市と町は、それぞれが独自に水道網を整備しています。

県では、送水を停止している七尾市への復旧作業を進めていますが、復旧の見通しは、
▽県が供給している七尾市街、和倉地区、能登島地区を中心にことし4月以降、
▽それ以外の地区は、3月末までかかるとしています。

一方、ほかの市と町の復旧の見通しは、
▽輪島市、穴水町、能登町では、いずれも来月末から3月末にかけて、
▽珠洲市については、来月末から順次復旧させるものの、一部の地域は4月以降になるとしています。
▽また志賀町は、おおむね来月末までに復旧させるとしていますが、一部は3月末になる見込みです。

小中学校や高校で休校 集団避難も

石川県によりますと、県内に281ある公立の小中学校や義務教育学校のうち、地震の影響で、21日現在、44の学校で休校が続いています。

このうち七尾市と内灘町、志賀町のあわせて5校は、22日に学校を再開し、新学期を始めます。

このほか七尾市の2校は今月24日、志賀町の1校は25日にそれぞれ再開する予定です。

一方、被害の大きかった七尾市、珠洲市、輪島市、志賀町、穴水町、能登町にあるあわせて36校では、学校再開の見通しが立っていません。

公立の高校については、県内47校のうち9つの学校が休校していて、22日に1つの高校が再開し、残る8校は開始の見通しが立っていないということです。

再開していない小中学校や高校では、校舎を自習スペースとして開放したり、オンラインで課題を出したりして、学習の支援をしているところも多いということです。

こうした中、中学生による集団避難も行われました。

これまで、輪島市に住む中学生258人が白山市の施設に移ったほか、珠洲市に住む102人と、能登町に住む42人の中学生が金沢市の施設にそれぞれ移りました。

石川県では、児童・生徒とその保護者を対象に、進路や転入学それに学習面の悩みの相談に応じる電話相談窓口を設けています。

番号は0120-873-783で、平日の午前9時から午後5時45分まで受け付けています。

地震で精神的なショックを受けた子どもの心のケアを目的に、臨床心理士などが相談に応じる窓口も設けられています。
番号は0120-48-0874で、平日の午後1時から午後6時半まで受け付けています。

《新潟県》住宅被害6700棟余 住環境の再建が急務

新潟県では、長岡市で震度6弱の揺れを観測し、上越市などでは津波の浸水被害も出て49人がけがをしたのに加え、小学生1人が帰省先の石川県内で被災して亡くなりました。

県によりますと、21日までに確認された住宅被害は、▽全壊が51棟、▽半壊が1006棟、▽一部破損が5637棟、▽津波による床下浸水が14棟と、あわせて6708棟にのぼっています。

液状化で新潟市西区では大きな被害が出ていますが、専門家の調査で液状化はさらに広範囲に及ぶ可能性が明らかになり、住宅被害の全容はいまだわかっていません。

新潟市は、家が全壊や半壊するなどした市民を対象に市が借り上げる民間の賃貸住宅、いわゆる「みなし仮設」への入居希望の受け付けを始めるとともに、24日からは支援制度の相談窓口も設けることにしています。

窓口では公的な支援を受けるのに必要な「り災証明書」も交付しますが、住宅の被害程度を調べてほしいという申請は21日までに9553件出ているのに対し、調査を終えたのは半分以下にとどまっています。

市は調査を今月中に終えたいとしていますが、住まいなどに関する不安の声は多く、被災者が安心して生活を立て直せる住環境の再建が急がれます。

《富山県》被災者の住まいやなりわいの再建が課題

富山県では、観測史上初めて震度5強を観測し、県によりますと、県内のけが人は21日時点であわせて47人で、このうち3人が重傷です。

揺れや液状化の影響で、氷見市で38棟が全半壊するなどあわせて4239棟の住宅で被害が確認されていて、民間の賃貸住宅を活用した「みなし仮設」や、公営住宅への入居手続きが進められています。

また、▽氷見市で23人、▽高岡市で14人のあわせて37人が避難生活を余儀なくされていますが、氷見市では住まいの見通しが立ったことなどから、23日に避難所が閉所する予定です。

県内では当初、あわせて1万9000戸近くが断水しましたが、21日に氷見市で水道が復旧し、20日ぶりに県全域で復旧しました。

一方、経済活動には打撃が広がっていて、宿泊施設ではキャンセルが相次ぎ、県によりますと損失額は今月10日時点で2億9600万円余りに上るほか、県漁連によりますと、漁業では沖合の定置網や漁港などの施設に被害が出て、被害額は今月17日時点で2億6500万円に上るということです。

今後は被災した人たちの住まいや、なりわいの再建が課題です。

住宅再建へ 耐震化費用の工面に心配の声

能登半島地震の被災地では、住宅の再建に向けて耐震化を検討する人たちの間で費用をどう工面するか心配する声があがっています。

石川県輪島市では、被災した人が公的な支援を受けるために必要な「り災証明書」の受け付けが今月19日から始まり、住宅の再建に向けた動きも出ています。

東孝明さんは、輪島市の中心部にある実家が大きな被害を受け、1階の壁がはがれ落ちるなどしたため、再建には多額の費用がかかるとみられるということです。

実家はこれまでに何度も地震の被害を受けていて、そのたびに修繕を繰り返してきたということで、東さんは今回の地震で耐震化の必要性を改めて実感したものの、費用がかさむこともあり、行政の支援などがなければ難しいと感じています。

東さんは「今後も同じような規模の地震が続くかもしれないので耐震化を考えるべきですが、行政の支援が限られる中で自分たちの資金だけでそこまでできるのかという葛藤があり、悩ましいです」と話していました。

また、輪島市の漆塗り職人の赤木明登さんは、工房の耐震化を済ませていたため今回の地震で建物に大きな損害はありませんでした。

一方、赤木さんの弟子や輪島塗の制作に携わる職人たちの工房を兼ねた自宅は大きな被害を受けました。

このうち、江戸時代からおわんなどの木地を生産し続けてきた職人は、工房などが倒壊したため、再建には長い時間がかかるとみられ、廃業の可能性もあるということです。

被災した職人たちからは、できれば同じ場所で再建したいという声が多く聞かれるものの、建物の耐震化は不可欠で、費用を工面できなければ仲間が輪島を離れてしまうのではないかと、赤木さんは危機感を募らせています。

赤木さんは「さまざまな職人が集まっているからこそ輪島塗の産地として成り立っているので、ぜひ輪島にとどまってほしいですし、そのために必要な耐震化には公的な支援があればいいなと思っています」と話していました

建築士団体 “支援不十分 応急修理制度見直しを”

能登半島地震の被災地では、住宅の修理費用の一部を行政が負担する制度が適用されていますが、建築士のボランティア団体は、修理だけでなく耐震補強も含めた支援の拡充が必要だと指摘しています。

新潟市を拠点に活動している建築士のボランティア団体「建物修復支援ネットワーク」は、2007年の能登半島地震以降、石川県内に足を運び地震で壊れた建物の修復の相談に応じるなど支援を続けています。

この団体の代表で建築士の長谷川順一さんによりますと、能登地方では繰り返し起きた地震で建物が弱っていて、修復する箇所が多いうえ、新たに壁や柱を設けるなど耐震補強が欠かせないということです。

一方、被災地では半壊するなどした住宅の修理費用の一部を行政が負担する「応急修理制度」が適用されていますが、原則、母屋の屋根や壁などを元の状態に戻すことしか認められず、費用もおよそ70万円までとなっています。

このため長谷川さんは、支援の費用を引き上げたり、耐震補強を目的とした工事を含めたりするなど制度の見直しが必要だと訴えています。

また、過去の災害では、母屋を修理している間に納屋などを一時的に改築して住居として活用するニーズもあったとして、柔軟な支援を求めています。

長谷川さんは「相次ぐ地震で目に見えないところが傷んでいる可能性があり、現在の支援では不十分だ。安心して自宅に戻れるよう既存の枠組みにとらわれない特別な支援策が必要だ」と話しています。

「応急修理制度」とは

「応急修理制度」は、災害救助法に基づき、地震で被害を受けた住宅の修理にかかる費用の一部を行政が負担する国の支援策です。

石川県のホームページによりますと、今回の地震で県内で対象となるのは、金沢市や輪島市、珠洲市など17の市と町で、半壊などの被害を受けた世帯です。

申請には、▽応急修理の申込書に加え、▽り災証明書や、▽被害の状況がわかる写真、▽修理の見積書などが必要となります。

1世帯あたりの費用の限度額は、▽「半壊」以上が70万6000円、▽「準半壊」は34万3000円で、限度額を超える分は自己負担になります。

行政が費用を負担するのは、屋根や壁、窓、台所、トイレなど「日常生活に必要不可欠な部分」で、原則、耐震補強は認められていません。

また、納屋や車庫も支援の対象外で自己負担となります。

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