能登半島地震 避難生活の中で体調が悪化し亡くなった人も

「地震がなかったら こんな形で亡くなることはなかっただろう」

地震で避難所や長女の家を転々としたあと体調を崩し、地震から4日後、100歳で亡くなった女性の遺族のことばです。

能登半島地震では家屋の倒壊だけでなく、避難生活を送る中で体調が悪化して亡くなった人も相次いで報告されています。地震のあと輪島市と能登町で亡くなった人の遺族を取材しました。

地震の4日後に亡くなった100歳の女性の遺族は

能登町宇出津に住んでいた高橋千代子さん(100)は今月1日の地震のあと、一緒に暮らしていた長男の秀彰さん夫婦と金沢市から帰省していた孫夫婦のあわせて5人で高台にある避難所に避難しました。

長男の秀彰さんによりますと、千代子さんは避難所で一晩を明かしたあと、近くに住んでいて比較的被害が少なかった長女の家に移って生活していましたが、その後、体調が悪化し、地震の4日後の今月5日に亡くなったということです。

能登町は千代子さんについて、地震の揺れや津波などによる直接的な被害で亡くなるのではなく、その後の避難生活などで病気などが悪化したり、体調を崩したりして命が失われる「災害関連死」の疑いがあるとして県に報告しています。

避難所からさらに移動 その後“次第に衰弱”

100歳のお祝いの写真(遺族提供)

秀彰さんによりますと、千代子さんは足腰が弱く、車椅子で生活していましたが、持病はなく食欲も旺盛で、去年4月に家族で行った100歳の誕生日祝いでもごちそうをほとんど完食するほどだったということです。

今回の地震で一晩を明かすことになった避難所では敷布団を用意してもらったものの雑魚寝状態で、周囲の人の話し声もあってほとんど眠ることができなかったということです。

その後、長女の家に移ったあとも食事を取ることができなくなって次第に衰弱し、今月5日の昼ごろ、長女が食事の呼びかけにいったところ、布団の中で亡くなっていたということです。

「こんなに急に衰弱して亡くなってしまうとは」

高橋秀彰さん
「母は地震が起こる前の1日の朝には正月のお祝いとして餅を2個も食べていました。101歳か102歳くらいまでは生きるだろうと思っていたので、まさかこんなに急に衰弱して亡くなってしまうとは思ってもみませんでした。できることなら家族みんなでみとってあげたかったです。もし地震がなかったら、こんな形で亡くなることはなかっただろうし、気づいたら冷たくなっていたので残念です」

71歳の女性 孤立状態の地区で体調急変し亡くなる

孤立状態の地区で避難生活を送る中、これまで問題はないように見えた体調が急変し、亡くなった人もいます。

亡くなったのは輪島市滝又町の中紀子さん(71)で、遺族は今週、金沢市内で中さんを見送りました。

遺族によりますと、中さんは地震のあと、被災した自宅を離れ、同居する夫や長男、それに10人余りの近所の住民と農業用の倉庫に身を寄せていました。

断水や停電が続く中、地区が孤立状態となっていたため、物資も届かなかったということで、住民たちが食料を持ち寄るなどして生活していたということです。

中さんは体調に問題はないように見えたといいますが、今月10日、昼食をとったあとに急変したということで、要請したヘリコプターは来ず、搬送はできなかったということです。

後日、医師からは、死因は「虚血性心不全」の疑いと伝えられたということです。

「母は戻ってこない どうにもならない」

中 一也さん
「急な出来事でした。衛星電話も使って連絡を取りましたが間に合いませんでした。いまは母は戻ってこない、どうにもならないという気持ちしかありません」

輪島市「今は判断ができる状況でない」

内閣府によると、地震の揺れや津波などによる直接的な被害で亡くなるのではなく、その後の避難生活などで病気などが悪化したり体調を崩したりして命が失われるケースを「災害関連死」としています。

中さんが自治体や県が発表している災害関連死の疑いがあるケースに該当するかについて輪島市は「個別の事案について回答することはできない」としたうえで、「一般的には避難生活中に亡くなった人は災害関連死の可能性があると認識している。ただ、今はその判断ができる状況になく、態勢が整い次第、対応したい」としています。

「災害関連死」東日本大震災では3794人

2011年の東日本大震災では、復興庁のまとめで去年3月の時点で、「災害関連死」は3794人にのぼっています。

また、各自治体への取材や総務省消防庁の資料から、2016年の熊本地震では221人、2018年の西日本豪雨で82人などとなっています。

「災害関連死」は70歳以上の占める割合が高く、東日本大震災ではおよそ87%、熊本地震ではおよそ78%となっています。

広域で甚大な被害が出ることで、被災者が求めていることと支援が食い違うと「災害関連死」が増えるとされていて、避難所だけでなく、自家用車や自宅で避難する人など被災者の事情に応じたきめ細かな支援が必要となっています。