【解説動画】被災地「医療的ケア児」の現状と必要な支援とは

地震で大きな被害が出た石川県の能登地域では、たんの吸引や人工呼吸器が必要な「医療的ケア児」が23人いて、個々の状況に応じた支援が求められています。「いしかわ医療的ケア児支援センターこのこの」のセンター長で、ソーシャルワーカーの中本富美さんに被災の状況と必要な支援などを聞きました。

Q1.地震直後の「医療的ケア児」の状況は?
A1.石川県の能登地域で暮らす医療的ケア児23人については、県内の小児科の医師らと連携しながら、速やかに全員の無事を確認しました。

ただ、発災直後はインフラが途絶えたことで医療の継続が難しくなり、防災ヘリで病院に緊急搬送された人や別の自治体に避難した人もいました。

中には停電の影響で暖をとるのが難しい場所もあったため、支援団体に依頼して毛布やストーブを現地に届けてもらうなど、物資面からも支援を行ってきました。

発災後2週間以上がたつ中、医療的ケア児が置かれた状況はさまざまで、少なくとも医療的な機器は不足なく過ごせているものの、断水などで不自由な生活が続いている人もいると聞いています。

Q2.今後、どんな支援が求められるのか?
A2.大きくは2つあると考えています。
【1.「生活の再建」】
住宅が倒壊するなどして自宅に住み続けることが難しい場合は、仮設住宅やみなし仮設住宅など新しい住まいを探すことになります。

例えば、余震が起きたときに医療的な機器を持って避難しやすい1階に住めるかどうか、通える距離に学校や病院があるかなど、家族の希望も聞きながら条件に合う住まいを探さなくてはなりません。

ただ、医療的ケア児の優先枠が設けられているわけではないため、仮設住宅などは申し込みが早く埋まってしまうこともあり、条件に合う物件に移り住めるかが課題となります。

また、移住先の新しい病院が子どもの病状を、通っていた病院のように理解してくれるかどうか、転校先の学校とコミュニケーションを重ね、子どもがなじめる環境を整えられるかなど、個々に応じたサポートが長期的に必要となります。

さまざまな支援団体や家族会、地域の専門職などが一丸となって、新しい地域でも横断的な支援体制を構築できるかが重要になります。

【2.「心のケア」】
今回の地震による子どもたちの心への影響はかなり大きいと想定され、これから長い期間をかけて経過を見ていく必要があります。

医療的ケア児の中には自分が感じた不安をことばで表現できない子どもも多くいて、音に過敏になったり、独り言が増えたり、親とくっつくようになるほか、頭痛などの身体的症状を訴える子どもも確認されているため、注意深く見守る必要があります。

医療的ケアが必要な子どもたちは外出や移動も制限される中、周りとのつながりが希薄になりやすい傾向にあり、こうした非常時だからこそ、より一層、仲間や支援者とのつながりを感じてもらうことで安心を得られます。

Q3.支援にあたって大切な点は?
A3.被災した子どもには「大変だね」などと声をかけてしまいがちですが、置かれた状況もさまざま、求められる支援も多様化する中で、周りの大人にはその子の生きる力を信じて、「一緒に乗り越えよう」という姿勢で関わってもらうことが大切です。