“被災した子どもの心のケアを” 遊び場を提供する催し 石川

能登半島地震で被災した子どもたちに遊びの場を提供し、心のケアにつなげようという催しが石川県七尾市で開かれました。

この催しは、地震の被害に遭い、避難所や自宅で不自由な生活を続けている子どもたちに思い切り体を動かして遊ぶ機会をつくり、ストレスを解消してもらおうと、七尾市がボランティア団体と協力して実施しました。

会場の田鶴浜武道館では、隣接する避難所や近くに住む16人の子どもたちが参加しました。

最初に、子どもたちは講師の「かなずちトントン」という掛け声に合わせ、床を打つようにリズミカルに手や足を動かしました。

また、透明の傘袋で作ったロケットを手で打ち上げて飛ばす遊びでは、子どもたちは袋に息を吹き込んでできたロケットを会場中で飛ばしてまわったり、誰が一番遠くまで飛ばせるか競争したりしていました。

参加した富山湊太くん(5)は「鬼ごっこが楽しかった。おもしろかった」と話していました。

母親の富山美郷さんは「地震のあと体を動かす機会が減っていたので参加できてよかったです。思い切り笑っていて、同じくらいの年齢の子どもたちがいると表情も違うなと思いました」と話していました。

七尾市子育て支援課の原田樹課長は「遊ぶことで子どもたちのストレスが少しでも軽減できるよう開催した。日常が取り戻せるまで継続して支援していきたい」と話していました。

専門家 “いつもどおり遊べる時間と場所の確保が一番有効”

災害時の子どものメンタルヘルスに詳しく、東日本大震災でも支援活動にあたった臨床心理士の高橋紀子さんは、この時期の子どもたちの心理的なストレスについて、「子どもたちは体力がある分、ストレスを自覚しにくいところがある。ストレスを解消するには、子どもたちがいつもどおり遊べる時間と場所を確保することが一番有効だ」と指摘しています。

高橋さんによりますと、東日本大震災で被災した子どもたちは周囲の大人に遠慮をしたり、小さい子どもに気を遣って自分が遊ぶのを我慢したりすることもあったということです。

一方で、イライラして怒りっぽくなるケースや、朝起きたときに腹痛や頭痛、吐き気などを訴えるケースも多かったということです。

こうした点を踏まえて高橋さんは、子どもたちのストレス軽減の方法について、「一番有効なのは子どもたちがいつもどおり遊べる時間と場所を確保することだ。例えば、体育館にビニールテープで『ここは君たちが遊んでいい場所だよ』ということで、線を引いてあげるだけでも十分に安心して遊ぶことができる」と述べ、子どもの遊び場をどう確保するかに配慮すべきだと指摘しました。

そのうえで、周囲の大人による対応について、「あなたたちを気に掛けている大人がいるということが子どもたちに伝わることがとても有効だ。自分から悩み事を話せる子どもはほとんどいない。雑談の中で本音や気になっていることを話したりもするので、子どもと雑談したり、何気なく一緒に過ごしたりする時間がとても大事だ」と話していました。