【詳細】国連報告書「1時間に2人の母親が命落としている」

イスラム組織ハマスの壊滅を目指すイスラエル軍は20日も南部のハンユニスなどガザ地区の広い範囲で空爆と地上作戦を続けていて、ガザ地区の保健当局は、これまでの死者は2万4927人に上るとしています。

国連はイスラエルが軍事作戦を続けるパレスチナのガザ地区での死者のおよそ7割が女性や子どもで、「1時間に2人の母親が命を落としている」などとする報告書を発表し、早期の停戦の実現を訴えています。

国連女性機関“ガザ地区の死者の約7割 女性や子ども”

国連女性機関は19日にガザ地区の状況についての報告書を発表し、ガザ地区での死者のおよそ7割が女性や子どもだと指摘しました。さらに、「ガザ地区では1時間に2人の割合で母親が死亡している」として、早期の停戦の実現を訴えています。

“シリアで軍事顧問5人が殺害された” イラン国営通信

イランの軍事精鋭部隊はシリアに派遣していた軍事顧問5人がイスラエルの攻撃で殺害されたと発表しました。

イラン政府は報復の可能性を示唆し、攻撃の応酬がエスカレートすることが懸念されます。

イランの国営通信によりますと、軍事精鋭部隊の革命防衛隊が20日、声明を出し、同盟関係にあるシリアの首都ダマスカスで、派遣していた軍事顧問5人が殺害されたと発表しました。

声明ではイスラエル軍による戦闘機を使った攻撃が行われたとしています。

現場を撮影した映像には煙が高く立ち上り、人々が避難する様子や、建物が崩れ、がれきを重機で取り除く作業が行われている様子がうつっています。

今回の攻撃を受けてイラン外務省のキャンアニ報道官は声明を出し「地域を不安定化する自暴自棄な試みだ」と非難した上で、「イランには適切な時に適切な場所で対応する権利がある」として、報復の可能性を示唆しました。

シリアでは12月にもイランから派遣されていた革命防衛隊の司令官ら3人が相次いでイスラエルによるとみられる攻撃で殺害されています。

革命防衛隊はその報復として、1月16日に、隣国のイラク北部にあるイスラエルの情報機関の拠点をミサイルで攻撃したと発表しています。

ガザ地区の情勢をめぐり、イスラム組織ハマスを支援するイランは、軍事作戦を続けるイスラエルと対立を深めているだけに、攻撃の応酬がエスカレートすることが懸念されます。

米軍 フーシ派の対艦ミサイル3発を破壊

アメリカ中央軍はイエメンのフーシ派の支配地域で、現地時間19日の午後6時45分ごろ、対艦ミサイル3発に対して攻撃を行い、破壊したと発表しました。

これらのミサイルは紅海の南部に向けて発射する準備がされていて、航行する商船やアメリカ海軍の艦船への差し迫った脅威だと判断したということです。アメリカ中央軍は「海上が安全なものになる」と強調しました。

アメリカメディアは、アメリカ軍がフーシ派の拠点を攻撃するのはこれが6回目だと伝えています。

ただ、紅海の周辺ではフーシ派による航行中の船舶への攻撃が続いていて、前日の18日にもタンカー船の近くの水面に弾道ミサイルが着弾したということです。

アメリカ政府は17日にフーシ派をテロ組織に指定すると発表するなど圧力を強めていますが、これまでのところ、フーシ派の攻撃を止めることはできず、周辺地域で緊張した状況が続いています。

バイデン大統領「2国家共存」の考え改めて強調

アメリカ・ホワイトハウスによりますと、バイデン大統領は19日、イスラエルのネタニヤフ首相と先月23日以来、およそ1か月ぶりに電話で会談し、パレスチナのガザ地区の情勢をめぐって協議しました。

会談でバイデン大統領は、ガザ地区で犠牲者が増え続ける中、ハマスへの軍事的な圧力を維持しながら、民間人の被害を減らすためのイスラエル側の責任に言及したということです。

また、ハマスとの戦闘終結後について、イスラエルを含む地域の安全保障にとっての最善策だとして、イスラエルとパレスチナの「2国家共存」による和平を目指すべきだという考えを改めて強調しました。

アメリカのCNNテレビは、会談の中でネタニヤフ首相は「2国家共存の可能性を完全に排除している訳ではない」と述べたと伝えていますが、「2国家共存」をめぐってはネタニヤフ首相が前日の18日に開いた記者会見で否定的な考えを示し、バイデン政権との違いが浮き彫りとなっています。

バイデン大統領は電話会談後、記者団に対し、「『2国家共存』にはいくつかの種類がある。うまくいく方法はあると思う」と述べて、ネタニヤフ首相のもとでも実現は可能だという認識を示しました。

また、ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は記者会見で、「イスラエル国民の安全保障にとって長期的な最善の解決策は自由で独立したパレスチナ国家の樹立だというバイデン大統領の見解は変わらない」と強調しました。

軍事作戦を継続する構えを崩さないネタニヤフ政権に対し、イスラエル国内ではガザ地区に拘束されている人質の家族が19日も抗議活動をおこなったほか、戦時内閣のメンバーからも軍事作戦の効果を疑問視する声が上がっています。

ガザ地区 36ある病院のうち稼働は15にとどまる

イスラム組織ハマスの壊滅を目指すイスラエル軍はガザ地区の広い範囲で空爆と地上作戦を続けていて、北部のガザ市でハマスや、ハマスと連帯している武装組織「イスラム聖戦」の戦闘員を殺害したと19日、発表しました。

一方、中東の衛星テレビ局アルジャジーラは、ガザ市の住宅地への空爆で15人が亡くなったと伝え、ガザ地区の保健当局は19日までの死者は2万4762人に上るとしています。

ガザ地区では多くの医療機関が戦闘の被害を受けていて、パレスチナの保健当局によりますと、地区に36ある病院のうち部分的にでも稼働しているのは15にとどまっています。

このうち、南部ハンユニスのナセル病院では周辺で激しい戦闘が続いていて、国際NGO「国境なき医師団」は多くの市民が死傷し、治療が追いつかないとして、「悲劇的な状況だ」と訴えています。

さらに、地元メディアは、医薬品が足りないため、麻酔薬を使わずに手術をしたり、傷口には消毒液の代わりに塩を塗ったりしているという厳しい現状を伝えています。WHOは19日、ガザ地区では170万人以上が避難所に密集して生活していて、衛生状態の悪化が深刻だと警告しています。

去年10月半ば以降、5歳以下の子ども8万人余りを含む15万人以上が下痢になり、22万人以上が呼吸器疾患に苦しんでいる上、ウイルス性の肝炎などの感染症が広がっているということで、衛生環境の改善と医薬品などの支援を呼びかけています。