「石川県旅行業協会」は能登半島地震のあと、加盟している県内の宿泊施設が受けた地震による影響を調査していて、これまでに23の施設から回答がありました。
それによりますと、1月10日の時点で宿泊のキャンセルは延べ2万6648人分、総額5億2900万円余りにのぼったということです。
ただ、これまでに回答があったのは金沢市や加賀市など、地震の被害が比較的小さかった地域が大半です。
震源地の能登地方にある輪島市や珠洲市などでは宿泊施設自体が大きな被害を受けたことなどもあり、ほとんど回答を得られていないということで、県旅行業協会は観光への打撃はさらに甚大だとみています。
被害の大きかった地域の宿泊施設からは「施設への影響は壊滅的で、当面、再開は見込めない」とか、「営業再開を諦め、落ち着いたら会社をたたむ手続きをする」といった声もあったということです。
温泉や海の幸などで知られる能登地方を襲った地震が石川県全体の観光にも影響を与えている実態が明らかとなり、被災地の復旧・復興とともに、客足の減少をどう食い止めるかが課題となっています。
石川県内の宿泊施設 約2万6000人分キャンセル“影響甚大”
能登半島地震の影響で石川県内の宿泊施設でおよそ2万6000人分のキャンセルが出ていることが県旅行業協会の調査で分かりました。調査への回答は地震の被害が比較的小さい県南部の加賀地方の施設が中心で、協会は観光や宿泊への影響はさらに甚大だとみています。
金沢市の湯涌温泉 通常通り営業もキャンセル相次ぐ
金沢市にある湯涌温泉の観光協会によりますと、9軒ある旅館では建物の被害はほとんどありませんでしたが、地震が発生してからキャンセルが相次ぎ、予約が半分ほどに減ったということです。
このうち、老舗旅館の「あたらしや」でも県外客を中心に、今月だけで180件ほどのキャンセルがあり、損失は800万円ほどに上るということです。
キャンセルした人からは、地震が相次いでいるため、石川県を訪れることに不安を感じるという声が多かったということです。
この時期の平日は例年なら5組ほどが泊まるということですが、19日は1組だけでした。
金沢市に住む息子夫婦らと宿泊した埼玉県の70代の男性は「息子から金沢市内の状況について電話で聞いていたので、心配はしていませんでした。また旅行に来るなどして石川県の人たちを支えていきたいです」と話していました。
旅館では通常通り営業していることをSNSで伝えているほか、地震の対応や復旧の支援に訪れる人の受け入れについてもほかの旅館などと話し合っています。
「あたらしや」の宇野太祐 代表は「このまま、風評被害が続くと宿の営業が難しくなってしまいます。金沢市は比較的、地震の影響が少ないので多くの人に来てほしいです」と話していました。
「近江町市場」も観光客が減少
金沢市で市民の台所として親しまれている「近江町市場」では地震の影響で観光客が激減し、加盟店の売り上げも大きく落ち込んでいます。
およそ170の店が軒を連ねる観光スポット「近江町市場」の振興組合によりますと、加盟店に地震の大きな被害はなく、通常どおり営業していますが、観光客が例年の2割から3割程度にまで減少しているということです。
岐阜県から夫婦で訪れた50代の女性は「少しでも被災地にお金を落として活気が戻ればと思って来ました。人が少ないのでさみしい感じがします」と話していました。
市場にある鮮魚店では、観光客の減少で今月の売り上げが去年の同じ時期と比べて1割程度にまで落ち込んでいるということです。
また、漁港が被害を受けたため、地元からのタラやカニなどの入荷が大幅に減少していて、運送費などで割高になる県外からの仕入れを増やして賄っているということです。
水産物の加工や販売などを行っている「大口水産」の荒木優 専務は「平気ではいられないほど客も売り上げも減っていて、今後どうなるか心配だ。少しでも被災地に心を寄せてもらい、機会があれば立ち寄ってもらいたい」と話していました。