ガザ地区 多くの医療機関が被害 市民の治療などに影響

イスラエルが軍事作戦を続けるパレスチナのガザ地区では多くの医療機関が被害を受け、けがをした市民の治療などに影響が出ています。WHO=世界保健機関は感染症が広がっているとして、医薬品の支援を呼びかけています。

イスラム組織ハマスの壊滅を目指すイスラエル軍はガザ地区の広い範囲で空爆と地上作戦を続けていて、北部のガザ市でハマスや、ハマスと連帯している武装組織「イスラム聖戦」の戦闘員を殺害したと19日、発表しました。

一方、中東の衛星テレビ局アルジャジーラは、ガザ市の住宅地への空爆で15人が亡くなったと伝え、ガザ地区の保健当局は19日までの死者は2万4762人に上るとしています。

ガザ地区では多くの医療機関が戦闘の被害を受けていて、パレスチナの保健当局によりますと、地区に36ある病院のうち部分的にでも稼働しているのは15にとどまっています。

このうち、南部ハンユニスのナセル病院では周辺で激しい戦闘が続いていて、国際NGO「国境なき医師団」は多くの市民が死傷し治療が追いつかないとして、「悲劇的な状況だ」と訴えています。

医薬品足りず “麻酔薬を使わずに手術も”

さらに、地元メディアは、医薬品が足りないため麻酔薬を使わずに手術をしたり、傷口には消毒液の代わりに塩を塗ったりしているという厳しい現状を伝えています。

WHOは19日、ガザ地区では170万人以上が避難所に密集して生活していて、衛生状態の悪化が深刻だと警告しています。

去年10月半ば以降、5歳以下の子ども8万人あまりを含む15万人以上が下痢になり、22万人以上が呼吸器疾患に苦しんでいる上、ウイルス性の肝炎などの感染症が広がっているということで、衛生環境の改善と医薬品などの支援を呼びかけています。

「国境なき医師団」“安全な場所などどこにもない”

ガザ地区で医療活動を続ける国際NGO「国境なき医師団」が19日、エジプトの首都カイロで会見しました。

この中で、ガザ地区内の病院で活動を続けてきたバッラペルタ医療チームリーダーは、中部の病院で活動していた今月上旬、安全が確保できないとして、700人以上の患者を残したまま退避を余儀なくされたとしたうえで、「安全な場所などガザ地区のどこにもない。状況は日に日に悪化している」などと述べ、窮状を改めて訴えました。

また、イスラエル軍がガザ地区内の病院をハマスが拠点としていると主張するなどして病院周辺などへの攻撃を続けていることについて、「私が目にしたのは病院には数多くの患者がいて、何千人もの避難者がいるということだ。彼らの立場が何であれ、わたしにとっては彼らは患者や避難者にほかならない」と述べ、病院や周辺への攻撃をやめ、直ちに停戦するよう、改めて強く訴えました。