ダボス会議が閉幕 世界経済の見通しや地政学的リスクなど議論

世界の政財界のリーダーが集まる通称「ダボス会議」は19日、中央銀行などのトップが参加して、地政学的なリスクが世界経済に与える影響などについて議論が行われ、閉幕しました。

世界経済フォーラムの年次総会、「ダボス会議」はスイスで15日から開かれ、世界の政財界のリーダーなどおよそ2800人が参加して、「信頼の再構築」をテーマに多くの議論が交わされました。

19日、中央銀行や国際機関のトップなどが参加し、最後のセッションとして世界経済の見通しが議論されました。

この中で、ヨーロッパ中央銀行のラガルド総裁は正常化と非正常化というキーワードをあげたうえで、正常化の例として世界的にインフレが低下していることをあげました。

一方で、非正常化の道として、ユーロ圏を含め、世界的に「消費が明らかに以前ほど力強くない」と指摘しました。

また、WTO=世界貿易機関のオコンジョイウェアラ事務局長は、ことしは去年と比べ貿易量の大幅な回復が見込まれるとしたものの、「紅海における地政学的な対立という問題を抱えている。また、世界各地で行われる選挙が何をもたらすかわからない」と述べ、不確実性がもたらす世界経済への影響に懸念を示しました。

ドイツのリントナー財務相は「アメリカのトランプ前大統領のことがかなり議題になった。2期目の可能性に備えて準備をする必要がある」としつつ、自国に魅力があればどの政権であろうと関係なく協力が可能だとも指摘しました。

テーマは「信頼の再構築」

ことしのダボス会議のテーマは「信頼の再構築」。ロシアによるウクライナ侵攻に加え、中東情勢という2つの「戦争」に世界が直面するなかで開かれました。

ウクライナ情勢をめぐっては、最大の支援国アメリカで軍事支援の継続に必要な緊急予算が議会で承認されず、欧米側に「支援疲れ」も指摘されています。ウクライナのゼレンスキー大統領は直接会場に乗り込み、支援継続を訴えました。

一方、中東情勢は混迷が一段と深まっています。ダボス会議の最中もイスラエル軍によるガザ地区での地上作戦は間断なく続けられていました。ダボス会議に参加したイスラエルのヘルツォグ大統領は「国際社会に対し、イスラエルを支持し、大量虐殺だという主張を拒否するよう呼びかける」と述べました。

一方、パレスチナ銀行の会長で、ガザ地区出身のシャワ氏は「イスラエルによる空爆で多くの従業員とその家族を失った。ガザ地区の破壊と死に胸が張り裂けそうだ」とNHKのインタビューで述べ、苦しい胸の内を語りました。

中東情勢をめぐっては、イランの支援を受けるイエメンの反政府勢力フーシ派が紅海を航行する船舶への攻撃を繰り返し、アメリカ軍との間で攻撃の応酬が続いています。

ジョンズ・ホプキンス大学のナスル教授は「今後、5年以内に、イスラエルとイランが直接対決する可能性が数段高まった」と述べ、今回のイスラエルとイスラム組織ハマスの衝突がアメリカやイランを巻き込んで、中東各地に紛争を拡大させる危機感を示しました。

途上国で開発支援にあたるUNDP=国連開発計画のトップ、シュタイナー総裁は「各国の財政緊縮策などによって、他人の世話をする前に自分の世話をする必要があるという意識が高まっている。私たちは国際関係が対立を引き起こす道具となってしまう時代に生きている」とNHKのインタビューで述べ、ことしは新たな危機に備える必要があると警戒感を示しました。