【解説動画】避難生活の注意点 身体機能 どう維持

地震の発生から2週間以上たち、避難所での生活が長期化しています。震災によって突然生活習慣が変わり、本人も気づかないうちに身体機能の低下が起き始めるのが今の時期です。そこで、考えられる今の体の変化とできる対策について、リハビリテーション科の専門医で日本災害リハビリテーション支援協会=JRATの近藤国嗣 副代表に聞きました。

地震から2週間 サポート増え逆に「動かなくなる」ことも

近藤副代表によりますと、2週間が経つと徐々に道路事情が良くなり、支援が多く入るようになりますが、被災者へのサポートが増えることで、一人一人が受け身になり「動かなくなる」という問題が起きやすくなります。また広域避難をすると、プライバシーが保たれた部屋に入ることになり、その空間に引きこもって体を動かさなくなってしまうといった問題が生じる時期に入ったと指摘します。

動く機会減 どのようなリスクがあるのか

体を動かす機会が減ると心身の機能が低下する「生活不活発病」になり、筋力や体力が衰えます。それ以外にも、心臓の機能が低下したり、動かないと肺の一部に痰が溜まって「肺炎」になりやすくなったりします。さらに寝たきりになると、認知機能が低下するほか、同じ姿勢で椅子に座っていると血栓ができて肺に詰まる、いわゆるエコノミークラス症候群の可能性も出てきます。

ではどのようなことを心がければよい?

近藤副代表は、地震が起きる前はみんな家事をする、庭仕事や畑仕事をする、デイサービスに行くなど、どんな人にも日常生活で役割があったはずだと指摘します。その役割を担うことで、実はふだん一生懸命運動しようと思わなくても、無意識に体を動かしていて、私たちの身体機能は維持されていたというのです。しかし、避難所という特殊な環境で役割が無くなってしまうと、体を動かさなくなってしまうので避難所での生活は非常に苦しいものではありますが、そこで新しい役割を見つけてほしいと呼びかけています。

近藤副代表は、避難所での役割として、例えば避難所の掃除や衛生管理、足腰の弱い人に代わって物資を配ってあげるということが考えられるといいます。さらに、仲間を作って避難所の中でみんなで運動するなど、日中いかに起きて活動する場を作ることも大事です。何かしらの役割を新しく見つけることがいちばん体を動かすきっかけになると話しています。

避難所でできる運動は

一番簡単な運動は、日常生活と同じように、立ったり座ったりすることです。イギリスのデータでは、健康な高齢者は1日に70回ほど立ったり座ったりしているといいます。椅子があれば立ったり座ったりして、バランスに自信がなければ手すりにつかまってやってください。ほかにも足踏みをする、手すりにつかまって、足を横に広げる運動をするのも効果的です。

それぞれ毎食後など自分でタイミングを決めて習慣にし、少し息切れするぐらいまで続け、回数を次第に増やすことが理想だとしています。

近藤副代表は「災害によりつらい生活だと思いますが、無意識にも体の機能が低下すると日常生活に戻りにくくなってしまいます。いつか戻るためにも、避難所で自分なりの役割を見つけて意識的に動きましょう」と呼びかけていました。