新春恒例「歌会始」 ことしのお題は「和」

新春恒例の「歌会始」が19日、皇居で行われました。

ことしの「歌会始」のお題は「和」で、全国と海外から合わせて1万5000首余りの短歌が寄せられました。

皇居・宮殿では、はじめに、入選した10人の歌が、天皇皇后両陛下や皇族方の前で古式にのっとって披露されました。

このうち、石川県かほく市の市役所で働く宮村瑞穂さん(32)は、日本文学を専攻していた大学生のころに友人たちと交わした会話を思い出して「花散里(はなちるさと)が一番好きと 笑み(え)し友 和服の似合ふ(にあう) 母となりぬる」と詠みました。

宮村さんは、1月1日に発生した能登半島地震の対応に追われ、一時は歌会始への出席を辞退しようかと考えましたが、職場の上司が「少しでも明るい話題を石川県に提供してほしい」と言って温かく送り出してくれたということです。

今回、最年少の新潟市の高校2年生、神田日陽里さん(17)は、なんとなく友人の意見に同調してしまう自分への葛藤を「『それいいね』 付和雷同の私でも この恋だけは自己主張する」と詠みました。

続いて、皇族方の歌が披露され、高円宮家の長女の承子さまは、時折訪ねる神社の森にからすが戻ってくると15分程度で辺りが暗くなる様子が、正確な日暮れの時報のようだと感じて、「突然に和鳴(わめい)にぎやか秋空を 烏もどりて夕暮れを知る」と詠まれました。

秋篠宮妃の紀子さまは、去年10月、鹿児島県で開催された全国障害者スポーツ大会の開会式で、地元の子どもたちがスタジアムの席から前を通る選手団を応援する様子を「鹿児島に集ふ(つどう)選手へ 子らの送る熱きエールに場は和みたり」と詠まれました。

秋篠宮さまは、40数年前の秋に東北地方を訪ね早朝の十和田湖周辺を散策した際の光景を、「早朝の十和田の湖面に 映りゐし 色づき初めし樹々の紅葉」と詠まれました。

皇后さまは、長女の愛子さまが中学3年生の修学旅行で初めて広島を訪れ、原爆ドームなどを見た際に深めた平和への願いを卒業文集の作文に書かれたことを感慨深く思い、平和の大切さへの思いが次の世代にそして将来にわたって受け継がれていくことを願って「広島をはじめて訪(と)ひて 平和への深き念(おも)ひを 吾子(あこ)は綴れり」と詠まれました。

最後に、天皇陛下の「をちこちの 旅路に会へる(あえる)人びとの 笑顔を見れば心和みぬ(なごみぬ)」という歌が詠み上げられました。

天皇陛下は、皇后さまとともに各地を訪ねた際に、温かく迎えてくれた人たちの笑顔を見たときの気持ちを詠まれました。

来年の歌会始のお題は「夢」で、「夢中」や「夢路」のような熟語にしてもかまいません。

作品は、1月19日から9月30日まで受け付けられます。

「歌会始」のあとの記者会見では

能登半島地震で大きな被害が出ている石川県かほく市で、市役所職員として勤務している宮村瑞穂さん(32)は、歌会始のあとの記者会見で「地震が起きて、参加を自粛しようかと思い上司などにも相談をしましたが、『こういう時期だからこそ、石川の話をしてきてほしい』と背中を押され、今回参加をしました。両陛下は心から心配する表情で相づちを打ちながら、話を聞いてくださいました。天皇陛下は『大変でしたね』と言ってくださり、皇后さまも『1月1日というのがまた大変でしたね』とことばをかけてくださいました。お二人が心を寄せてくださっていることが伝わってきました」と話していました。

新潟市の高校2年生、神田日陽里さん(17)は、歌会始のあとの記者会見で「両陛下と短歌でつながり、気持ちがつながったように感じました。今月1日の地震で新潟市も震度5強の揺れがありましたが、私自身は被害があまりなく、友人も学校に来られているとお話しすると、両陛下から、『よかったですね』とことばをかけていただきました」と話していました。