夜間の救急外来にやってきた小学6年生の男児。
「気持ち悪い」
医師にそう訴えました。
診断結果はカフェイン中毒。
エナジードリンクの飲み過ぎでした。
「あまり寝ないようにしようと思っていた」
中学受験に向けた勉強で、眠気覚ましにドリンクを飲んでいました。
東京で2020年にあったケースです。
受験期のカフェインとりすぎに注意!
まもなく受験シーズン。
「遅くまで勉強がんばろう」
眠気覚ましのつもりで、
子どもがカフェインをとりすぎてしまうケースも。
どのくらいなら飲んでいいの?
専門家に聞きました。
(大阪放送局 記者 中本史)
救急外来で何が?
対応にあたった岸部峻医師によると、エナジードリンクやコーヒーなどを飲み過ぎた子どもが、夜間救急でカフェイン中毒と診断されるケースが相次いでいるということです。
(東京都立小児総合医療センター 岸部峻医師)
「子どもの成長にとって睡眠は非常に大切です。本来、夜は寝たほうがいいです。そもそも子どもに眠気防止は必要ないんです」
多くの子どもが飲んでいる
カフェインを含む飲み物は、子どもと縁遠いイメージですが、実際には多くの子どもが飲んでいます。
日本体育大学が2020年に全国の10~18歳の約6000人を対象にしたエナジードリンクに関する調査結果を公表しました。
その結果、「飲んだことある」と答えた割合です。
●小学生 男児45% 女児27%
●中学生 男子58% 女子32%
●高校生 男子67% 女子45%
女子よりも男子のほうが、飲んでいる割合は多くなりました。
この調査では、エナジードリンクを週1本以上飲むと答えた子どもは、頭痛や胃痛、吐き気、疲労感が強くなる傾向にあることもわかりました。
調査を行った日本体育大学の野井真吾教授は、「スポーツの試合前に、コーチが子どもたちにエナジードリンクを差し入れして飲ませていたケースもありました。周囲の大人たちのカフェインに対する認識がまだまだ不十分だと言えます」と話していました。
子どもへの影響は?
カフェインは子どもにどんな影響があるのでしょうか。
日本小児科学会によると、カフェインは神経を興奮させる作用があり、過剰に摂取すると吐き気や強い鼓動、けいれんを引き起こすということです。
子どもは肝臓の代謝機能が大人に比べると劣るためで、症状が長引くというのです。
どのくらいなら飲んでいいの?
では、どのくらいの量なら飲んでも問題ないのでしょうか。
日本では、独自の基準はありません。
国の食品安全委員会では、参考として海外の情報を公表しています。
それによると、カナダ保健省は1日あたりの最大摂取量を次のようにしています。
●4~6歳 45mg
●7~9歳 62.5mg
●10~12歳 85mg
農林水産省によると、ほうじ茶・せん茶は100mlあたりのカフェイン量は20mg。
コーヒー1杯(150ml)は90mgです。
エナジードリンクは、商品によってカフェイン量は異なりますが、売れ筋のものは1本あたり150mgです。
数値だけではわかりにくいので、エナジードリンクに換算してみると、次の通り。
(1本150mgとして換算)
●4~6歳 3割ほど
●7~9歳 半分より少なめ(4割ほど)
●10~12歳 半分ほど
1本を飲み干すと、最大摂取量を超えてしまいます。
近年は、増量された商品も発売され、1本500mlのエナジードリンクもあります。
長期的なカフェインの影響は未解明
子どもたちが、これほどカフェインを摂取するようになったのは、最近のこと。
子どもの頃からカフェインを飲み続ける長期的な影響については、まだわかっていないことが多いとして、専門家は警鐘を鳴らしています。
(東京都立小児総合医療センター 岸部峻医師)
「今の大人たちも、現在のようなカフェイン量が入っている飲料を子どものころから飲み続けてきたわけではありません。子ども時代から日常的にカフェインを摂取し続けることによって、どのような影響が出るのかはわかっていない怖さがあります。カフェインのリスクを親たちが知ることが大事だと思います」
メーカーも“子どもは飲むのを控えて”
メーカー側も注意喚起を行っています。
実は、エナジードリンクの缶の裏側には注意書きがあります。
代表的な商品にも「お子様は飲むのをお控え下さい」「お子様にはお勧めしません」などと書かれています。
海外の一部の国では子どもの購入をめぐって規制の動きがありますが、日本では、コンビニエンスストアや自動販売機で子どもでも簡単に購入できます。
カフェインは、お茶やチョコレート、風邪薬にも含まれています。
気づかないうちに取り過ぎてしまうおそれがあります。
カフェインの影響で、夜寝るのが遅くなり、朝が起きられなくなる。
日中は眠たい状態で、学校生活に支障が出てくる。
そうやって生活リズムが崩れて悪循環に陥ります。
子どもたちがカフェインを過剰摂取しないよう、ぜひ周囲の大人が子どもに教えてあげてほしいと思います。