【解説動画】長引く避難生活 “栄養”に注意して食事を

物資が徐々に行き渡りつつある中で鍵を握るのが「食」です。バランスの良い食事が難しく栄養が足りなかったり、逆に取り過ぎてしまったりすることで体調悪化につながることもあります。災害関連死を防ぐために何が大切なのか、日本栄養士会の専務理事・下浦佳之さんに聞きました。

栄養士の災害支援チーム 現地での活動は

下浦さんは能登半島地震直後の今月2日以降たびたび現地に入り、支援物資が集まる金沢市や石川県七尾市の拠点で避難所などへ送る食料の仕分けなどに携わりました。

避難生活の食事 栄養の偏りに注意

下浦さんは、避難生活が続く中で懸念されるのは栄養の偏りだといいます。

避難所などでは、手に入る食料が限られ、肉や魚、野菜や果物などをとる機会が減ることで、たんぱく質やビタミン、食物繊維などの栄養を摂取する機会も減少します。それによって免疫が下がるため、かぜを引きやすくなったり感染症にかかりやすくなったりする可能性が高くなると指摘します。

逆に、栄養を取り過ぎてしまうことにも注意が必要です。たとえば高血圧の人がカップラーメンなどで塩分を取り過ぎることで、持病を悪化させるリスクがあるといいます。

「低栄養」と「過栄養」に注意 避難生活でできる工夫

限られた食料の中で出来る工夫として下浦さんが挙げるのが「組み合わせ」です。

たとえばレトルト食品のカレーにサバのみそ煮缶を加える、カップラーメンにわかめを入れたり水煮のコーン缶を加えたりするなど、できるだけいろんな種類を組み合わせることで栄養のバランスをとることにつながると話します。

バランスのよい食事がどんなものか想像しづらい場合は信号機を意識するのがよいと教えてくれました。『赤、黄、緑』の色を意識して、食事の中にさまざまな色を取り入れていくことが大切としています。

ストレスで食事進まない どうすれば?

慣れない環境によってストレスを感じることで食が進まない場合にも、工夫する余地があるといいます。特に小さい子どもやお年寄りは、避難所などにふだん食べているような食品が届けられていれば、慣れたものを口にすることが安心感につながるということです。

長期化する避難生活 健康を保つには

下浦さんによると、能登半島北部の輪島市や珠洲市を中心に依然として避難所などの巡回が十分にできず、栄養のある食料が行き届いていない現状があるといいます。

食料が限られる中でもまずは水分をしっかりとること、また、困ったときは声を上げることや、手を挙げて周囲に伝えることも必要だといいます。

下浦さんは「特にお年寄りは我慢する人が多いため、重篤になる前に周囲の支援者やボランティアなどに自分が困っているとしっかりと声を上げることが重要だ」と話していました。