【詳細】イスラエル“完全勝利まで戦う” ガザは飢餓懸念

パレスチナのガザ地区への攻撃を続けるイスラエル軍のトップは、隣国レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラとの「戦争が起きる可能性が以前よりかなり高まっている」と述べました。

一方、紅海の周辺ではハマスに連帯を示すイエメンの反政府勢力フーシ派とアメリカ軍の間で攻撃の応酬が続いていて、中東の各地で紛争が拡大する懸念が強まっています。

イスラエル軍は18日にかけてもガザ地区の各地を攻撃していて、南部ハンユニスで過去1日にイスラム組織ハマスの戦闘員およそ40人を殺害したと発表しました。

パレスチナの地元メディアは南部ラファではイスラエル軍による住宅への空爆で、子どもなど少なくとも19人が死亡したと伝えています。

レバノン・イエメンなど各地で紛争拡大の懸念強まる

イスラエル軍は隣国レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラとの間でも戦闘を続けていて、17日にはヒズボラがイスラエルに向けてロケット弾を発射した拠点を空爆したとしています。

こうしたなか、イスラエル軍のハレビ参謀総長は17日、「数か月以内にヒズボラとの戦争が起きる可能性は以前よりもかなり高まっている」と述べ紛争の拡大に危機感を示しました。

一方、イエメン沖の紅海周辺ではハマスに連帯を示すイエメンの反政府勢力フーシ派による船舶などへの攻撃が続いています。

アメリカ中央軍は17日の現地時間午後8時半ごろ、紅海と海峡を通じてつながるアデン湾でアメリカの貨物船がフーシ派の支配地域から発射された無人機による攻撃を受けたと発表しました。

その後、現地時間の17日深夜、アメリカ軍はフーシ派の支配地域で、発射が準備されていたミサイルを攻撃したと発表しました。

14発のミサイルが発射台に装てんされ、いつでも発射される可能性があったとしていて、アメリカ軍は自衛の権利を行使したとしています。

アメリカメディアはフーシ派の拠点への攻撃はこれが4回目だと伝えていて、ガザ地区だけでなくレバノンやイエメンなど中東の各地で紛争が拡大する懸念が強まっています。

カタール政府 “医薬品や支援物資 ガザ地区に入った”

ガザ地区の保健当局の17日の発表によりますと、イスラエル軍の攻撃によって過去24時間で163人が亡くなり、これまでの死者は2万4448人になったとしています。

戦闘が長期化し、ガザ地区内では、飢餓や感染症への懸念が高まっています。

こうしたなか、カタール政府は、17日、医薬品や支援物資がガザ地区に入ったと明かしました。

カタール外務省によりますと、今回、輸送される支援物資は61トンに上るとしています。

カタール政府は16日、ガザ地区の民間人に支援物資を届けることと引き換えに、拘束されているイスラエルの人質に対し必要な医薬品を届けることでイスラエルとハマスが合意したと発表していました。

物資の搬入を受け、カタール外務省の報道官は、「カタールは地域、そして国際的なパートナーとともに、政治的に、また人道的なレベルでの仲介を続けている」と述べました。

ネタニヤフ首相 “完全勝利 収めるまで戦い続ける”

ネタニヤフ首相は17日、ガザ地区への空爆の拠点となっているイスラエル南部の空軍基地を視察し「われわれは、完全勝利を収めるまで、陸空海で戦い続ける」と演説しました。

また、一部の地元メディアは、ネタニヤフ首相が、戦闘は来年、2025年まで続く可能性があると発言したとも伝え、時間がかかってもハマスの壊滅を目指す姿勢を改めて強調したものと見られます。

一方、ガザ地区の保健当局は17日、イスラエル軍の攻撃によって過去24時間で163人が亡くなり、これまでの死者は2万4448人になったと発表しました。

さらに、人口の85%以上にあたる190万人が避難生活を余儀なくされている中、飢餓と衛生状態の悪化によるA型肝炎が広がっていると指摘しています。

ガザ地区への支援をめぐっては、拘束されているイスラエル側の人質に医薬品を提供する引き換えに、最も被害を受けた地域の住民に医薬品や食料、水など追加の支援物資を届ける合意が、イスラエルとハマスの間で成立したと16日に発表されました。

これらの物資は17日、エジプトに空輸されましたが、イスラエルが急きょ、武器が隠されていないか調べる検査を要求し、ガザ地区への搬入に時間がかかるなど、お互いへの不信感も妨げとなっていて、支援物資の搬入が急務となっています。

パレスチナ銀行会長“ガザ地区再建には少なくとも500億ドル”

パレスチナ銀行のハシム・シャワ会長が17日、スイスで開かれている世界経済フォーラムの年次総会、通称「ダボス会議」でNHKのインタビューに応じました。

パレスチナ銀行は1960年にパレスチナのガザ地区に設立され現在はヨルダン川西岸も含めて100の支店を持ち、世界各地の開発銀行などから融資などを得てパレスチナ域内の中小企業への貸し付けなどを行っています。

シャワ会長はガザ地区の出身で「私たちの銀行には3000人近い従業員がいて、このうち500人がガザ地区を拠点としている。しかし空爆で多くの従業員とその家族を失った。ガザ地区の破壊と死に胸が張り裂けそうだ」と述べ苦しい胸の内を語りました。

また、ガザ地区の被害は甚大で、破壊された住宅の再建に少なくとも150億ドル、日本円で2兆2000億円が必要で、水道や電気、道路などのインフラの再建も含めると、世界銀行などの初期の見積もりでは必要な費用は少なくとも500億ドル、日本円で7兆4000億円にのぼると明らかにしました。

ただ「戦争は残念ながらまだ続いていて、明確な被害評価は困難だ。まずは戦争を終わらせる必要がある」とした上で、「ことしのダボス会議のテーマは『信頼の再構築』だ。私たちは『2国家解決』への世界的な支持を得ることを強く願っている」と話しイスラエルとパレスチナの2つの国家の共存による和平への支持が広がることに期待を示しました。

アメリカ フーシ派をテロ組織に指定

イエメンの反政府勢力フーシ派はイスラム組織ハマスとの連帯を掲げて紅海を航行する船舶への攻撃を繰り返していて、アメリカ政府は17日、フーシ派をテロ組織に指定すると発表しました。

これによりアメリカ政府は、フーシ派のメンバーやその支援組織に対し、資産凍結などの制裁を科すことができるようになります。

ホワイトハウスのカービー戦略広報調整官は記者会見で「フーシ派による攻撃はテロの明確な例であり、国際法に違反し、罪のない人びとや国際的な商取引に対する脅威だ。攻撃をやめなければわれわれはさらなる行動をとることをためらわない」と強くけん制しました。

アメリカとフーシ派 攻撃の応酬

アメリカ中央軍は、紅海と海峡を通じてつながるイエメン沖のアデン湾で、アメリカの貨物船がフーシ派の支配地域から発射された無人機による攻撃を受けたと発表しました。

攻撃があったのは、アメリカ政府がフーシ派をテロ組織に指定すると発表したおよそ2時間後で、けが人はいなかったものの、船が損傷したということです。

一方、アメリカ中央軍の発表によりますと現地時間の17日、午後11時59分ごろ、アメリカ軍はイエメンのフーシ派の支配地域で発射準備されていたミサイルを攻撃したということです。

この施設ではミサイル14発が発射台に装てんされ、いつでも発射される可能性があったとしていて、アメリカ軍は自衛の権利を行使したとしています。

アメリカ中央軍は「商船などに対する無謀な攻撃を続けるフーシ派の能力を低下させるだろう」としています。

アメリカはフーシ派をテロ組織に指定すると発表する前にも、フーシ派の複数の拠点を空爆するなど、軍事的圧力を強めていますが、船舶への攻撃は続いており、地域の緊張が高まっています。