芥川賞 九段理江さん「家族や友人、読者に感謝を伝えたい」

第170回芥川賞と直木賞の選考会が17日、東京で開かれ、芥川賞に九段理江さんの「東京都同情塔」が選ばれました。

九段理江さんは記者会見で「とてもうれしく思っています。好きで書き始めた小説ですが、書き続ける力をくれる、出版社の方や家族や友人、楽しみに読んでくれる読者に感謝を伝えたいです」と受賞の喜びと感謝のことばを述べました。

そして、作品に込めた思いについて、「近年、ことばを無限に拡大したり、無限に解釈することが許されている、許容されているような状況がある。ことばというのは大切に使っていきたいと思うが、ことばのポジティブ、ネガティブどちらも考えていく必要がある」と話しました。

そのうえで、「この作品は、ことばで何かを解決しようとか、解決を諦めたくないと思っている人のために書いた。ことばで解決できないこと、というのは、何によっても絶対に解決できない。ことばによって考え続けることをやめたくない。そういった気持ちが、この小説を書かせてくれたし、そう感じている方にも届いたらいいと思っている」と話しました。

そして、AI時代の小説のあり方についての質問に対しては、今回の作品が生成AIを駆使して書いたものだということを明らかにしたうえで、「ふだんから、誰にも言えない悩みなどをAIに相談することがある。AIが期待したことを言ってくれなかったときに、自分が感じた思いを、主人公の建築家のセリフに反映することもあった。これからも生成AIをうまく利用しながらも、自分の創造性を発揮できるような小説を書いていきたい」と話しました。

また、自身も住んでいたり、作品の舞台にしたりしたこともある石川県で地震による大きな被害があったことについて、「一日も早く石川県の皆さんに穏やかな日常が戻るようにと毎日思っているので、今回の受賞でお世話になった人や、つらい状況にある人に明るい気持ちになっていただけたらうれしい」と話していました。

九段さんが働いていた古書店長「スター性のある人」

芥川賞の受賞が決まった九段理江さんは、2013年から1年ほど、金沢市の古書店でアルバイトとして働いていました。

店長の山崎有邦さんは、NHKの取材に対して「九段さんがふらっと店にやってきて、『働けますか』と聞かれ、アルバイトとして採用しました。店番などを任せましたが、すごくテキパキしていて、仕事もそつが無く、助かりました」と当時を振り返っていました。

そのうえで「芥川賞の受賞が決まり、うれしかったです。スター性のある人だと思っていますが、芥川賞はスーパースターになるきっかけだと思います。これからもマイペースにがんばって、落ち着いたら店に遊びに来てほしいです」と祝福していました。