「屋内退避」など 指針の見直し含めた検討を指示 原子力規制委

最大震度7を観測した能登半島地震で、北陸電力の志賀原子力発電所周辺を含む広い範囲で建物が倒壊する被害が相次いだことなどを受けて、原子力規制委員会は原発事故の際に周辺の住民は屋内にとどまり、被ばくを避けるなどとしている指針について、見直しを含め、検討するよう事務局に指示しました。

東京電力福島第一原発の事故のあとに原子力規制委員会が定めた「原子力災害対策指針」では、原発で重大な事故が起きた際、原則として、半径5キロ圏内の住民は即時に避難した上で、5キロから30キロ圏内の住民は自宅や避難所などにとどまる「屋内退避」を行い、放射線量が一定の値を超えた場合避難することとされています。

ただ、能登半島地震では、志賀原発が立地する能登半島の広い範囲で道路が塞がれ、多くの集落が孤立したほか、建物の倒壊が相次ぎ、原発を抱える自治体などからは、避難や屋内退避の考え方について改めて検討するよう求める声が上がっています。

これについて、原子力規制委員会の山中伸介委員長は17日に開かれた会合で、「屋内退避の考え方を大きく変える必要はないが、屋内退避をいつまで実施するか、タイミングや期間の考え方を再検討する必要がある」などと述べ、事務局の原子力規制庁に対して指針の見直しを含め検討するよう指示しました。

今後、指針の中で議論が必要な項目を整理し、改めて委員会で議論するとしています。

山中委員長「地震によって指針不備 明らかになったのではない」

原子力規制委員会の山中伸介委員長は会見で、「先日、土曜日の女川原発の地元自治体との意見交換の中で、特に屋内退避の考え方についての質問が非常に多く、私自身も以前から考えるところがあったので問題提起した。特に能登半島の状況から『原子力災害対策指針』の見直しに至った訳ではない。今回の地震の状況を踏まえると、現在の指針で対応が不十分だったかと言われると、そうではない」と述べ、地震によって指針の不備が明らかになったのではなく、今月13日に宮城県にある女川原発周辺の自治体関係者と行った意見交換の際に、屋内退避についての質問が多かったことが理由だと強調しました。

この意見交換では自治体関係者から、能登半島地震の影響で多くの住宅が倒壊したほか、道路の通行が困難になったことを受けて、避難や屋内待避を含め、原子力防災を強化するよう要望が出ていました。

また、会見では、記者から今回のような地震が起きると避難の手段や屋内待避する施設などを確保するのが困難になるのではないかという趣旨の質問が相次ぎました。

これに対し、山中委員長は「能登半島地震については家屋の倒壊が非常に多くあり、道も寸断されてしまったが、自然災害への対策が基本だということはすでに指針にも書かれている」とか、「すでに原発が稼働しているところでは地域防災計画がきちんと立てられていて、施設整備も進んでいる。半島のようなところもあるし、孤立化も考えて、船や航空機による避難も考えられている」などと述べ、避難の手段や屋内待避の施設は確保されているという認識を示しました。

そのうえで、議論の対象は自治体から質問があった屋内退避の開始のタイミングや期間について明示的に示すことだとして、取りまとめには数か月程度かかるという考えを示しました。