被災地の2次避難や集団避難 分かれる判断 離ればなれの家族も

石川県では、能登半島地震の被災者により安全な場所に移ってもらう「2次避難」や子どもたちの「集団避難」が進められています。

一方、地区や家族の間でも、避難するか、地元にとどまるか判断が分かれるケースもみられます。

輪島市の中学生260人が集団避難

石川県輪島市で集団での避難を希望する中学生およそ260人が17日、県南部の白山市の施設に向けて避難しました。

輪島市は、市内3つの中学校について、今回の地震で避難所として使用され、授業再開のめどが立たないことから、全生徒401人のうち希望したおよそ260人は、17日から白山市にある県の施設に集団で避難してもらうことにしました。

このうち集合場所のひとつになった市内の道の駅には、けさ学習道具や生活用品が入ったバッグを持った生徒たちが保護者らと一緒に集まりました。

高校受験のため避難

高校受験の勉強に取り組むため集団避難を決めたという3年生の宮脇瑞月さんは「不安はありますが避難先の施設は設備も整っているらしいので大丈夫だと思います。勉強を頑張ります」と話していました。

見送った父親の学さんは「頑張ってこいとしか言えないです。成長して帰ってきてくれたらいいと思います」と話していました。

そして、生徒たちを乗せたバスは17日午後、白山市に到着し、生徒たちは生活の拠点となる施設に入りました。

県教育委員会学校指導課の東原修身さんは「大変な思いをした子どもたちの生活を整えてあげられるよう支えていきたい」と話していました。

輪島市は集団避難の期間について現時点では2か月程度としていて避難先に輪島市の中学校の教職員を交代で派遣するなどして生徒の対応にあたることにしています。

“家族と離れて知らない土地は不安” 今回は参加せず

市内に残った中学生からは授業が再開されるめどが立たないなか避難所での学習環境に不安の声も聞かれました。

中学3年生の小林愛心さんは、集団避難についての事前の情報が少なく、1人で家族のもとを離れて知らない土地で暮らすことへの不安から、今回は参加しないことを決めました。

ただ、受験を直前に控え避難所での勉強は簡単ではないといいます。

わからない点を教えてくれる人はおらず面談の練習もできていないほか、手元にある文房具も十分でないといいます。

さらにほかの避難者がいる中で集中して勉強できず、受験に不安を感じているということです。

小林さんは「集団避難は限られた情報のなかで短い時間で判断しましたが、この状況だと受験を考えれば避難したほうがよかったかもしれないと後悔もしています。今後、勉強のサポートをしてほしいです」と話していました。

次に集団避難できる機会があれば参加する意向で、先生にも相談しているということです。

輪島市は集団避難せずに市内に残る生徒の学習についても個々の事情に合わせて対応したいとしていますが、具体的な対応は決まっていないということです。

21日からは中学生140人 金沢市内に集団避難へ

石川県の馳知事は能登半島地震で被害を受けた珠洲市と能登町に住む中学生およそ140人に金沢市内へ集団避難してもらうことを明らかにしました。

17日に開かれた石川県の災害対策本部会議で馳知事は、「珠洲市と能登町の中学生の集団避難が決定した。受け入れ先の施設では被災者の支援や学習の支援をきめ細かくおこなってほしい」と述べ、2つの市と町の中学生に集団避難してもらうことを明らかにしました。

避難するのは希望する珠洲市の102人と能登町の42人の中学生144人で、今月21日から2か月程度、金沢市の医王山スポーツセンターで受け入れるということです。

「2次避難」地区や家族の間で判断分かれるケースも

石川県は、災害関連死を防ぐとともに当面の落ち着いた生活環境を確保するため、県内外のホテルや旅館に移ってもらう「2次避難」を進めています。

こうしたなか被災地では、地区や家族の間でも避難するか、地元にとどまるか判断が分かれるケースがあります。

9世帯20人が暮らしていた珠洲市若山町北山の住民たちは、地震の発生以降、廃校になった小学校に身を寄せていましたが、15日までに6世帯・15人が市外に移ることを決め、すでに移った人もいます。

“仕事なく生活できない” 家族で2次避難へ

このうち小家伸吾さん(44)は、父親の精一さん(75)とともに珠洲市を離れることになりました。

妻と子どもは先に金沢市に向かい、妻の実家で過ごしているということです。

小家さんは「ここにいても仕事はなく生活できないので2次避難を決めました。戻ってきたい気持ちはありますが子どものこともあるので今後のことはわかりません」と話していました。

家族離ればなれに…高齢の母親だけ2次避難

一方、蔵宗茂夫さん(60)は、自身は仕事のため珠洲市に残りますが、同居していた母親のフミ子さん(86)には2次避難してもらうことを決めました。

停電や断水が続くいまの場所よりも、暖かく安全なところに身を置いてほしいと、判断したということです。

茂夫さんは「母は1人でさみしがると思いますが、いまはこれがベストな判断だと思っています」と話していました。

フミ子さんは「別れたくありませんでしたが、仕方がありません」と涙を流しながら話していました。

2次避難所の旅館に臨時救護所

2次避難所となっている石川県加賀市の温泉旅館に17日、避難している人たちからの健康相談などを受ける臨時の救護所が設けられました。

山代温泉にある旅館内に設けられた臨時の救護所では、秋田県と愛媛県から派遣された医師や看護師らが、避難している人たちからの相談を受け付け、症状によっては、病院で受診できるよう調整します。

開設されるとさっそく石川県輪島市から避難している田中輝夫さん(83)が訪れ、ふだん服用している薬がなくなりそうなので新たに処方してほしいと相談していました。

対応にあたった医師は、田中さんを診察し服用している薬について詳しく聞き取ったあと、同じ薬を処方するための処方箋を作っていました。

田中さんは「血圧が高いので、薬がなくなるとどうなるかと思っていましたが、医師に診てもらって安心できました。感謝しています」と話していました。

救護所で対応にあたる医師で秋田県医師会の小野崎圭助理事は「災害関連死を防ぐために取り組んでいます。心配事やちょっとした体調の変化のほか、インフルエンザなどについても不安があれば相談してほしい」と話していました。

加賀市では、16日までに市内10か所の2次避難所であわせて900人ほどを受け入れていて、今月27日まではこの臨時救護所で相談を受け付けることにしています。

馳知事 改めて2次避難を呼びかけ

石川県の馳知事は記者会見で、「命を守るために、2次避難所に身を置いてください。ふるさとに仮設住宅などを作るので、戻ってもらい、できれば今年の夏にでも、来年でもまた祭りができるようにしますから、2次避難をお願いします」と述べ、改めて2次避難を呼びかけました。

また、馳知事は被災した高齢者などの一時的な受け入れ先となる「1.5次避難所」を、18日に新たに小松市の小松総合体育館に開設すると明らかにしました。

県はこれまで、いしかわ総合スポーツセンターと産業展示館2号館に1.5次避難所を開設していて、18日、3か所目を開設することで、合わせて910人を受け入れることができるということです。

金沢市 村山市長“市内に仮設住宅の建設検討”

金沢市の村山卓市長は17日、記者会見を行い、能登半島地震でいまも多くの人が避難を余儀なくされていることに触れ「被災した自治体と綿密に連絡を取りながら能登地方の被災者の受け入れに尽力したい」と述べました。

その上で「金沢市はすべての地域で断水も解消し、インフラが整っているため仮設住宅を建てるのに適している」と述べ、市内に能登地方で被災した人たちが暮らせる仮設住宅の建設を検討していることを明らかにしました。

具体的な場所や条件は決まっておらず、今後、候補地などについて県と協議を進めていくとしています。

また金沢市は、今月10日以降、これまでに市内の6か所の施設で輪島市の300人余りの避難者を受け入れたと発表しました。

さらに来週以降の入居をめどに、被災した人を対象に市内の公営住宅のうちおよそ50世帯分を1年間、無償で提供するということです。

金沢市は、被災者への支援や市内の道路や河川の復旧にかかる費用など一般会計およそ26億円を地震に関連した補正予算案として今月の議会に提出するとしています。