【17日詳細】イスラエル防衛費2兆円増額 「戦争予算だ」

ガザ地区の保健当局は16日、イスラエル軍の攻撃によって過去24時間で158人が死亡し、これまでの死者は2万4285人に上ると発表し、市民の被害は増え続けています。

一方、イスラエルは2024年分の予算の修正を行うことになり、防衛費だけでおよそ2兆円が増額され、ネタニヤフ首相は「戦争予算だ」として、軍事作戦の更なる長期化も辞さない姿勢を改めて強調しています。

イスラエル 防衛費2兆円増額 ネタニヤフ首相「戦争予算だ」

イスラエル政府は15日、2024年の予算の修正案を閣議で承認しました。

イスラエルでは去年、2023年と2024年の2年分の予算が議会で承認されましたが、軍事作戦を行う中、2024年分の予算の修正を行うことになりました。

予算の修正案の総額は5820億シェケル、日本円で22兆円余りで、修正前の予算と比べると歳出は2兆6000億円余りの増額となっています。

このうち、防衛費だけでおよそ2兆円が増額され、予備役の兵士の人件費や家族への補償なども増え、地元メディアはイスラム組織ハマスとの戦闘の長期化を見据えた予算案だと伝えています。

ネタニヤフ首相は「これは予備役やその家族にも配慮した戦争予算だ。何よりもわれわれの勝利と未来のために必要な国防費の増加を重視した。戦いに勝利するまで手を緩めることはない」とする声明を出して、軍事作戦のさらなる長期化も辞さない姿勢を改めて強調しました。

南部ハンユニス 7歳の息子亡くし泣き崩れる男性

ガザ地区の保健当局は16日、イスラエル軍の攻撃によって過去24時間で158人が死亡し、これまでの死者は2万4285人に上ると発表し、市民の被害は増え続けています。

南部ハンユニスでは市民が集まって、犠牲になった人たちに祈りをささげたり、埋葬するための墓を掘ったりしていました。

このうち、7歳の息子が亡くなったという男性は「息子はいつものように学校の外で自転車に乗って遊んでいたところ、近くにミサイルが落ちた。地面に倒れていた息子の名前を呼んだが、小さな破片が胸を貫通していた」と話し、なきがらのそばで、「息子よ、許してくれ。守ってあげられなかった。神に復しゅうしてほしい」と泣き崩れていました。

米軍 フーシ派を攻撃 弾道ミサイル破壊と発表

アメリカ中央軍は16日声明を発表し、現地時間の午前4時過ぎ、イエメンの反政府勢力フーシ派を攻撃し、フーシ派が発射準備を進めていた弾道ミサイル4発を破壊したと明らかにしました。

アメリカメディアは、アメリカ軍が去年11月以降、紅海を航行する船舶への攻撃を繰り返すフーシ派を攻撃するのは、今月12日と13日に続いて3回目だと伝えています。

さらに、中央軍は今月11日にソマリア沖のアラビア海で、イランからフーシ派に向けて武器を輸送していた船を拿捕(だほ)し、イラン製のミサイルの部品を押収したと発表しました。

また、中央軍は現地時間16日午後1時半過ぎ、フーシ派が弾道ミサイルを発射し、紅海を航行中のマルタ船籍の貨物船を攻撃したとしたうえで、けが人はいなかったと明らかにしました。

これについて、フーシ派の報道官は16日、SNSに投稿したビデオ声明で、「イスラエルへ向かっていた船舶を複数のミサイルで攻撃した」と述べ、攻撃を認めた上で、ガザ地区への攻撃が行われるかぎり、今後も同様の攻撃を続けると主張し、さらなる緊張の高まりが懸念されています。

“イスラエルとハマス 医薬品提供などで合意” カタール政府

イスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘によってパレスチナのガザ地区の人道状況が悪化する中、仲介するカタール政府は、ハマス側に拘束されている人質に医薬品を提供するのと引き換えに、ガザ地区の住民にさらなる支援物資を届けることで合意が成立したと発表しました。

双方が何らかの合意に達するのは先月、戦闘が再開して以来初めてです。

カタール政府は16日、フランス政府の協力も得て仲介にあたった結果、イスラエルとハマスが、ガザ地区で拘束されている人質に必要な医薬品を提供するのと引き換えに、ガザ地区の最も被害を受けた地域の住民に医薬品などさらなる支援物資を届けることで合意したと発表しました。

医薬品は17日にエジプトに到着したあと、ガザ地区に運び込まれる予定で、フランス政府によると、ガザ地区で拘束されているとみられる130人以上の人質のうち、持病などのある45人に提供されるということです。

医薬品の提供をめぐっては、人質の居場所の特定につながるとして、ハマス側が難色を示していると報じられていましたが、国連がガザ地区での飢餓や感染症のまん延など人道状況の悪化に警鐘を鳴らす中、先月1日の戦闘再開以来、初めて双方が合意に達しました。

一方、ガザ地区での戦闘は続いていて、イスラエル軍は17日、南部ハンユニスで、ハマスの戦闘員3人をヘリコプターによる攻撃で殺害したと発表しました。

ただ、中東の衛星テレビ局アルジャジーラは、そのハンユニスでイスラエル軍の砲撃によって13人が亡くなり、その多くが子どもだと伝えています。

ガザ地区の保健当局によりますと、これまでの死者は2万5000人に迫っていますが、戦闘停止をめぐる交渉については、仲介にあたるカタール政府も「多くの困難に直面している」と述べるなど、進展が見通せない状況です。

仲介のカタール首相 “停戦と人質解放が唯一の解決策”

ガザ地区での戦闘について、カタールのムハンマド首相兼外相は16日、スイスで開かれている世界経済フォーラムの年次総会、通称「ダボス会議」で、「現在ある有効な道筋は停戦と人質の交換に関するものだけだが、多くの困難に直面している」と述べ、イスラエルが軍事作戦を停止する引き換えに、ハマス側が拘束している人質を解放することが唯一の解決策だという見方を示しました。

また、レバノンのヒズボラのイスラエルへの攻撃や、イエメンのフーシ派が紅海で船舶への攻撃を強めていることで、地域全体で緊張感が高まっていると懸念を示した上で、「私たちはガザで起きている紛争に集中すべきだ。この紛争が収まれば、おのずとほかの紛争も収まる」と述べ、事態を収束させるためにも、ガザ地区での停戦の必要性を訴えました。

一方で、「『2国家解決』にも向き合わなくてはならないが、平和的な共存を信じるイスラエル政府や政治家がいなければそれも実現しない」として、イスラエル政府に対し、パレスチナとの2つの国家の共存による和平に真剣に取り組むよう求めました。