英郵便局システム欠陥「えん罪に関わったこと謝罪」富士通幹部

イギリスの郵便局で利用されていた会計システムの欠陥によって、郵便局長らが横領などの罪で不当に訴追された事件で、システムを納入した富士通の幹部がイギリス議会で証言し、謝罪しました。

イギリスでは1999年から2015年までの間に、郵便局の窓口の現金と富士通が納入した会計システム上の残高が合わなかったなどとして、郵便局長ら700人余りが横領などの罪で訴追されました。

2019年、イギリスの裁判所は郵便局長らが起こした集団訴訟のなかで、富士通のシステムに欠陥があったと認定し、ことしに入ってこの事件を扱ったドラマが放送されたことから、富士通への批判も再燃しています。

この事件について16日、富士通の執行役員で、ヨーロッパ地域の責任者を務めるポール・パターソン氏がイギリス議会で証言しました。

このなかで、パターソン氏は会計システムに欠陥があったとした上で、「えん罪に関わったことを謝罪する」と述べました。

そして、被害者の賠償に応じる意向について問われ、「道義的な責任がある」と述べ、賠償金の一部を負担する意向を示しました。

この事件をめぐっては、スナク首相が「イギリスの歴史の中で、最大のえん罪の1つ」とも指摘し、イギリス政府は公的な調査で責任が認められた場合、富士通側に賠償金の一部負担を求める方針を示しています。

富士通と英政府機関の取り引き

富士通はイギリスの政府機関から、さまざまなシステムやサービスを受注しています。

会社の当時の発表によりますと、2003年には国税庁からIT関連の業務運営の委託を受けたほか、2010年に労働年金省から14万台の端末を対象に、保守や運用などを行うサービスを受注しました。

さらに、2015年には国防省から通信システムを5億5000万ポンド、当時の日本円にしておよそ1000億円で受注しました。

ただ、富士通はイギリスの政府機関との取引額の合計については、「公表していない」としています。

会計システム「Horizon」とは

イギリスの裁判所が欠陥があったと認定していた会計システムは「Horizon」という名称で、富士通のイギリスの子会社「FujitsuServices」が開発し、1999年にイギリス国内の郵便局に導入されました。

利用者はこのシステムを通して、郵便局の窓口で政府などからの給付金の受け取りができるほか、提携する銀行の口座からの預金の預け入れや引き出しができるということです。

イギリスの裁判所は郵便局長らが起こした集団訴訟のなかで、2019年、富士通のシステムに欠陥があったと認定していました。

ただ、この集団訴訟の対象が郵便局だったことから、富士通は会社として当事者への補償は行っていません。

富士通「調査には全面的に協力」

富士通はイギリスの子会社が法定調査に協力しているとしたうえで、「法定調査は誰が何をいつ知っていたか、そして何をしたかを把握するために、20年以上前の複雑な出来事を調べている。調査によって、郵便局長や家族の生活にはかりしれない影響があったことが明らかになり、富士通はその人たちの苦しみの一因となったことに謝罪した」とコメントしています。

そのうえで、「何が起きたのかなどを把握するために調査には全面的に協力しているが、調査の手続きを考慮し、今の時点ではこれ以上のコメントは適切ではない」としています。