「活断層」リスク評価 専門家 “調査手法など見直す必要ある”

阪神・淡路大震災が「活断層」の地震によって引き起こされた教訓から、国は毎年「活断層」のリスクを評価していて、切迫度が最も高い「Sランク」は全国で31にのぼります。この中に能登半島地震に関係があるとみられる活断層は含まれておらず、専門家は調査手法などを見直す必要があると指摘しています。

29年前の阪神・淡路大震災を受けて国は、長さがおおむね20キロを超え、地震が起きると社会的に大きな影響が出る活断層帯を重点的に調べ、今後30年以内に地震が発生する確率などリスクを評価し、公表しています。

それによりますと、全国の114の主要な活断層帯のうち、今月1日時点で地震発生の切迫度が最も高い「Sランク」と評価されたのは31にのぼります。

これは阪神・淡路大震災の直前と同じ程度か、それを上回る切迫度で、長野県から山梨県にかけての「糸魚川ー静岡構造線断層帯」や近畿から四国を横断し、九州にのびる「中央構造線断層帯」などが含まれている一方、能登半島地震に関係があるとみられる活断層は対象になっていません。

これについて日本活断層学会の会長で名古屋大学の鈴木康弘教授は、これまでの活断層の評価は主に陸域が対象で「海岸沿いの活断層は盲点になっている」と指摘しています。

その要因について、漁業への影響なども考慮する必要があり、陸域と比べて調査が非常に難しいためとしたうえで、今回の地震を教訓に海域の活断層の調査手法や評価されたリスクの周知方法などの見直しが必要だとしています。

鈴木教授は「活断層の地震は緊急地震速報も間に合わないため日頃の対策が命を守るすべてだと言っても過言ではない。地下深くの活断層はどんなに調査をしてもわからない部分が残ることから国や専門家は丁寧に説明するとともに、住民も建物の耐震化や家具の固定などを徹底する必要がある」と話しています。

調査委「海域の活断層 調査が非常に難しい」

政府の地震調査委員会は、これまで全国の陸域にある活断層を中心に地震の規模や発生確率の評価を行ってきました。

海域の評価結果の公表はおととしになってからで、対象も中国地方から九州北部にかけての日本海側にとどまり、能登半島付近の活断層についてはまだ評価が行われていません。

これについて、地震調査委員会の委員長で東京大学の平田直名誉教授は、15日の会見で「海域の活断層は、音波などを使って地層の分布を調べ、何メートルずれているか推定するなど、調査が非常に難しい。また、沿岸の浅いところでは船の調査もさらに難しくなる」と説明しました。

そのうえで「日本海に面した沿岸部は津波が発生すると到達までの時間が非常に短く沿岸の活断層について調査研究を進めることは必要だと思っている。一方で、活断層があること自体が過去に大きな地震があったことを示すため、注意をしてほしい」と呼びかけています。