【16日詳細】イスラエル国防相 早期の作戦縮小の考え示す

イスラエル軍は15日もガザ地区での軍事作戦を続けていて、現地の保健当局は、犠牲者の数は2万4285人に上ったと発表しました。

イスラエルのガラント国防相は、ガザ地区での軍事作戦について、集中的な作戦は「南部でもすぐに終わるだろう」と述べ、人質解放を優先すべきだという国内世論などを受けて、早期の作戦縮小と、次の段階への移行をはかる考えを示しました。

イスラエル国防相「軍事作戦 南部でもすぐに終わるだろう」

ガザ地区では16日もイスラエル軍による攻撃が続いていて、地元メディアは南部ハンユニスの住宅への攻撃で住民11人が死亡したと伝えています。ガザ地区の保健当局はこれまでに2万4285人が死亡したと発表していて、犠牲者の増加に歯止めがかからない状況が続いています。

こうしたなか、イスラエルのガラント国防相は15日の記者会見で、ガザ地区での集中的な軍事作戦について、「およそ3か月続くと明確にしてきた。北部ではこの段階は終わることになり、南部でも成果を出して、すぐに終わるだろう。次の段階に移行する時期が来るだろう」と述べて、早期の作戦縮小と、イスラム組織ハマスの幹部などに標的を絞った次の段階への移行をはかる考えを示しました。

イスラエル 国民や戦時内閣から “人質解放へ戦闘の一時停止を”

一方、イスラエル国内では一刻も早い人質解放を求める国民の声が高まっていて、複数の地元メディアによりますと、イスラエルの戦時内閣の中でも前の国防相だったガンツ氏などは戦闘を一時停止してでも人質の解放を優先すべきだと主張し、作戦の継続を求めるほかの閣僚との間で意見の違いが生じているということです。

ハマスの軍事部門カッサム旅団の報道官は14日声明を発表し、「イスラエルが侵略をやめなければ、いかなる話し合いも無意味だ」として、戦闘が続く間は人質の解放には一切応じないという姿勢を強調しています。

また、イスラエルはガザ地区への攻撃がパレスチナ人に対するジェノサイド、集団殺害にあたるとして国際司法裁判所に提訴されています。

ネタニヤフ首相は、ハマス壊滅などの目標を達成するまで戦闘を続ける姿勢を強調していますが、難しいかじ取りを迫られています。

国連事務総長 声明「前例のない大規模な破壊と民間人の殺害」

イスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘が始まってから14日で100日となったことを受け、国連のグテーレス事務総長が15日、ニューヨークの国連本部で声明を発表しました。

この中で、去年10月7日のハマスによる攻撃と人質の拘束を改めて非難し、人質の即時解放をハマスに求めました。その上で「100日におよぶイスラエル軍によるガザ地区への猛攻撃は、私が事務総長に就任して以来、前例のない大規模な破壊と民間人の殺害をもたらした。殺害されたのは大半が女性と子どもだ。パレスチナ人の集団的懲罰を正当化できるものは何もない」と述べ、ガザ地区で罪のない民間人の犠牲が増え続けていることも非難しました。

さらにグテーレス事務総長は「ガザ地区がこれほど激しく広範囲に容赦ない爆撃にさらされている間は、国連やNGOが人道支援を効果的に提供することはできない」と述べ、イスラエルを含むすべての当事者に対し、ガザ地区に人道物資を搬入するスタッフの安全を確保するよう求め、人道目的の即時停戦が必要だと改めて訴えました。

ハマスの軍事部門 “人質の映像”SNSで公開

ハマスの軍事部門カッサム旅団は15日、SNSで人質だとする3人の男女が写っているおよそ2分半の映像を公開しました。

公開された映像には、26歳の女性と、53歳と38歳の男性だとされるあわせて3人の姿が写っていますが、いつ撮影されたものなのかは明らかにされていません。

この中で女性は、ほかの2人の男性と同じ場所にいたがイスラエル軍による攻撃で2人はすでに死亡し、みずからもけがをしているとして「この狂気をとめて生きている間に家族のもとに帰してほしい」と訴えています。

ハマスとしては、イスラエル国内で人質解放を求める国民の声が高まる中、映像を公開することでガザ地区への攻撃を続けるネタニヤフ政権に揺さぶりをかけるねらいがあるものとみられます。

イスラエル軍「人質がいるとみられる場所を攻撃しない」

イスラエル軍は15日、ハマスが公開した動画で、人質だとする男性が軍による攻撃で死亡したと主張していることについて、関与を否定しました。

イスラエル軍のハガリ報道官は15日、ハマス側がイスラエル軍による攻撃で38歳の人質の男性が死亡したとしていることについて「われわれの部隊の攻撃によるものではない。これはハマスのうそだ。人質が拘束されれていた建物は標的ではなかった」と述べました。そのうえで「われわれは人質がいるとみられる場所を攻撃しない」として、人質の安全に配慮しながら作戦を続けていく姿勢を強調しました。

一方、人質が拘束されていたとみられる場所の近くを攻撃したことは認め、詳しい状況について調査を進めているとしています。

イラン“イラクにあるイスラエル情報機関を攻撃”国営メディア

イランの国営メディアは、軍事精鋭部隊が、隣国イラクにあるイスラエルの情報機関モサドの拠点を弾道ミサイルで攻撃したと伝えました。

イランの国営通信によりますと、イランの軍事精鋭部隊・革命防衛隊が16日、声明を出し、そのなかで「イラク北部のクルド人自治区にあるイスラエルの情報機関モサドの拠点を弾道ミサイルで攻撃した」と主張しました。今回の攻撃はイスラエルによって革命防衛隊の司令官らが殺害されたことへの報復だとしています。イランは12月、シリアに軍事顧問として派遣していた司令官ら3人が、イスラエルによるミサイル攻撃などで相次いで殺害されたとして、報復を行うと警告していました。

ガザ地区の情勢などをめぐり対立が深まっている両国の間で、報復の応酬がエスカレートすることが懸念されます。

テルアビブ近郊でテロか 1人死亡17人けが

イスラエルのテルアビブ近郊で15日、車が歩行者に突っ込むなどして1人が死亡、17人が重軽傷を負い、警察はその場でパレスチナ人の男2人を逮捕して治安機関などがテロ事件として捜査しています。

イスラエルの警察やメディアによりますと、テルアビブ北方のラーナナで15日、2人組の男が車に乗っていた人などを刃物で刺したあと、奪った車で歩行者を次々とはね、これまでに70代の女性が死亡し、17人がけがをして子どもを含む2人が重体となっています。

男たちはパレスチナのヨルダン川西岸の出身で、駆けつけた警察官にその場で逮捕され、イスラエルの治安機関がテロ事件として捜査しているということです。

一方、事件のあとイスラム組織ハマスは「イスラエル軍による虐殺と、パレスチナの人々への継続的な攻撃に対する当然の反応だ」とする声明を発表しました。

イスラエル軍によるガザ地区での軍事作戦が続く中、去年11月にもエルサレムでハマスとのつながりがあるとされる2人組が銃撃事件を起こし、3人が死亡していて、イスラエルでは警戒が続いています。

“フーシ派がアメリカ貨物船をミサイル攻撃”米軍発表

アメリカ中央軍の発表によりますと、現地時間の15日午後4時ごろ、イスラム組織ハマスとの連帯を掲げるイエメンの反政府勢力、フーシ派が紅海南部を航行していたアメリカ企業が所有・運航するコンテナ船を弾道ミサイルで攻撃したということです。乗組員にけがはないほか、船は深刻な被害を受けておらず航行を続けているということです。

アメリカ中央軍は、このおよそ2時間前にも周辺の海域にフーシ派が弾道ミサイル1発を発射したことを確認したということです。

イエメンの反政府組織フーシ派の報道官は15日、SNSに投稿したビデオ声明で、「ミサイルを使ってアデン湾でアメリカの船を標的に攻撃を行った」としてアメリカの船を攻撃したことを認めました。

そのうえで、「わが国への侵略に関与するアメリカとイギリスの船舶や軍艦は、すべてわれわれの標的とみなす。アメリカやイギリスの攻撃には反撃せざるをえない」としてさらなる攻撃も示唆しています。

アメリカ軍は、1月12日と13日の2日間連続でフーシ派が船舶への攻撃を繰り返していることへの直接の対応だとしてイエメンにあるレーダー施設などを攻撃していて、今回のフーシ派による攻撃は、その報復とみられます。今後、アメリカ軍とフーシ派の軍事的な応酬が激化すれば、地域の緊張が高まることが懸念されます。