石川 珠洲 100隻以上の漁船が沈没や転覆 漁協関係者が協議

今回の地震や津波で能登地方の漁業は大きな被害を受けました。多くの漁船が沈没したり転覆したりした石川県珠洲市では15日、地元の漁協の関係者が集まり、漁の再開に向けて協議しました。

珠洲市蛸島町にある「蛸島漁港」の施設には15日、石川県漁協すず支所の関係者、およそ20人が集まりました。

支所によりますと、珠洲市では、およそ1000人が漁師をしていて、この時期はズワイガニ漁やタラ漁のシーズンですが、今回の地震や津波で岸壁が損傷し、100隻以上の漁船が沈没したり転覆したりしたということです。

漁師の多くが避難生活を送っているほか、製氷の設備や漁船の給油施設も被害を受けて使用できない状態だということです。

こうした中、15日の話し合いでは、「早く漁ができる状態にしなければ、漁師が離れてしまう」という意見が出され、すみやかに支所の業務を再開させるとともに、氷や燃料を被害の少ない地域から調達できないか検討することを申し合わせました。

石川県漁協すず支所の運営委員長の上野和春さんは「船を流されて廃業を考えている漁師もいる。これまでにない被害で先は真っ暗だが、一歩ずつ復旧を進め、漁業の再建を後押ししたい」と話していました。

石川県内 58漁港で被害確認

石川県によりますと、県内の69の漁港のうちこれまでに58の漁港で被害が確認されたということです。

輪島市から珠洲市にかけての漁港では、地盤の隆起によって海底が露出し、係留していた漁船が出港できなくなっているところもあります。

このうち輪島港は、ズワイガニやブリなど、県内でも有数の水揚げ量を誇っていますが、石川県漁業協同組合によりますと、地盤の隆起によって今後、数年にわたって港として使用できないおそれもあるということです。

また、漁船に被害が出た港も少なくありません。

県によりますと、珠洲市や志賀町などで、少なくとも172隻の漁船が沈没や転覆、座礁するなどしたほか、新潟県内に流れ着いた漁船も17隻にのぼっているということです。

このほか、26の漁港などでは、漁船の給油用の設備や、魚の鮮度を保つための氷を作る設備が破損するといった被害が確認されました。

石川県水産課は「被害の全容はいまだに把握できておらず、今後も増える可能性がある」としていて、被害額についても、今の段階では算定できないとしています。

珠洲の漁師 自宅が津波被害 船も流される

石川県珠洲市の漁師、蟹谷博樹さん(60)は、1月1日に発生した地震による津波で自宅が被害を受け、船も流されました。

津波が沿岸部に押し寄せた時、蟹谷さんは隣町に外出していましたが、海のすぐ近くにある自宅は、1階の天井近くまで波が押し寄せ、すべての家財道具が2台の車とともに流されたということです。

また、蟹谷さんの小型船「吉祥丸」は、自宅近くの港から流されて、新潟県上越市で漂着しているのが見つかり、乗組員として働いていた底引き網の船も、漁に出られる状況ではないということです。

現在、市内の避難所にいる蟹谷さんは「私1人だけなら、新潟に船の様子を見にいこうかと思うけれど、避難所の高齢者などの世話もしないといけない。置いてはいけない」と語りました。

そのうえで、蟹谷さんは今後の漁について、「船を買えれば漁をやりたいが、買えないのであれば、別の何かを考えないと生活ができない」と話していました。