石川 珠洲 グループホーム職員の負担深刻 人数半分 コロナ感染

認知症の高齢者が入居する石川県珠洲市のグループホームでは、職員も被災したためふだんの半分ほどの人数で対応を続けています。施設内では新型コロナの感染も確認されるなど、現場の職員の負担が深刻となっています。

認知症の高齢者が入居する珠洲市宝立町の「グループホームとうほうの里」では、被災して出勤できなかったり、2次避難したりする職員が相次いでいて、地震前の半分ほどのおよそ10人で対応を続けています。

特に日中はこれまで6人の職員で対応していましたが、今は3人の職員で、定員を超える入居者16人の食事や排せつの介助にあたらざるをえない状況になっています。

施設によりますと、断水が続いているため、入居者の服やタオルなどは手洗いしていますが、服や下着の数が足りなくなり、衛生環境をどう確保するかが課題になっているということです。

さらに、数日前に職員1人が新型コロナに感染したほか、14日は通所で利用していた1人も感染していることが分かり、消毒や換気などの対応にも追われているということです。

「グループホームとうほうの里」の作田佳代ホーム長は、「職員自身も被災している中、最初の2日間は家に帰れずに対応にあたるなど、ゆっくり休めずにすごく疲れていると思う。今後いつまでもこの状態でいることはできないと思っていますし、利用者の生活も職員も守れるように、避難なども判断していきたい」と話していました。

この施設では、現場の負担軽減を図るため15日午後、入居者16人のうち7人を金沢市内の特別養護老人ホームに避難させるということです。

112の高齢者施設に被害 断水や停電続く施設も

石川県によりますと、県内の輪島市や珠洲市、能登町など15の市と町では、15日午後2時現在のまとめで112の高齢者施設に建物の一部損壊やインフラなどの被害が出ていて、今も断水や停電が続いている施設も多くあります。

風呂やトイレが利用できず衛生環境が悪化する中で、発熱など体調の急変で病院に搬送される人や新型コロナなどの感染症にかかる人、災害との関連は分からないものの、体調を悪化させて亡くなる人も出てきています。

一方、職員の中にはみずからも被災した人が多く、出勤できない人もいるため、限られた人員で入所者のケアにあたらざるをえない状況だということです。

このままでは、高齢者の命や健康を守れないとして、入所する高齢者を他の介護施設に移す動きが本格化しています。

ただ、受け入れ先が見つからず施設にとどまらざるをえない高齢者も多く厳しい状況が続いているほか、職員一人一人の負担や疲弊の度合いも日ごとに高まっているということです。

厚生労働省は、全国の福祉施設から応援の介護職員などを募り、15日から被災した施設や金沢市の「1.5次避難所」に派遣しますが、復旧までに時間がかかることが想定される中、施設や職員をいかに支えていくかが大きな課題になっています。

専門家「日本全体で支える体制作りを」

今回の地震で、避難所や福祉施設などで支援にあたる人たちが被災するケースが相次ぎ、過重な負担がかかっていることについて、災害精神医学の専門家は「長く支援活動ができるよう日本全体で支える体制作りがこれから求められる」と指摘しています。

災害精神医学が専門で、目白大学保健医療学部の重村淳教授は、みずからも被災しながら避難所や福祉施設などで支援にあたっている人たちについて、「支えてもらう立場でありながら人々のために尽くしてくれていますが、不眠不休ではいつまでも働けず、心身ともに影響が出てしまいます。発災直後には一時的にエネルギーが出て、自分自身でも気付かないうちに無理をしてしまいます。次第に感情的な高ぶりや、イライラが出てきて、神経が高ぶって不眠になるおそれもあります。このような状態が続くと、抑うつ状態になり、さらに長期化すると『燃え尽き症候群』といって本来やるべき任務に対して情熱を傾けられず、ミスが増えてしまうことがあります」などと指摘しました。

そのうえで、「可能なかぎり、本来取るべき休憩の時間を確保することが求められます。組織の上層部が呼びかけて、職員みんなの健康を守るためのリーダーシップを発揮することが重要です。支援にあたる側の人たちが長く支援活動ができるよう日本全体で支える体制作りがこれから求められる」と述べました。